小姫の故郷を訪ねて②~人民解放軍てなんだ
本日は、軍隊に関する雑学です(^o^)。
人民解放軍は中華人民共和国の国軍などではない
『Alone Again』では蛇頭の私兵として、元人民解放軍の兵士たちを登場させました。
設定としては、天安門事件でデモ隊制圧を命令されたが、同じ中国人に銃を向けることを拒み、命令に反旗を翻して逃亡した元軍人としてあります。 逃亡したあとに日本に流れ着き、蛇頭の私兵として囲われたというわけです。
誇り高き国家の軍人が、一大勢力とは言え非合法組織の私兵になるだろうか…というところなのですが、私はあり得ると思っています。
というのも、もともと人民解放軍は中華人民共和国の国軍などではないからです。人民解放軍は、あくまでも中国共産党の私兵です。
人民解放軍はナチス第三帝国の私兵と同じ位置づけ
人民解放軍は米軍や自衛隊とは根本的に異なっています。米軍は、陸海空軍・宇宙軍及びアメリカ海兵隊の常備軍、アメリカ沿岸警備隊を含めた6軍のすべてがアメリカ合衆国の軍隊です。
同じように日本の自衛隊も、軍隊かどうかの定義をめぐる憲法解釈はあるにせよ、内閣総理大臣が自衛隊の最高指揮監督権を持つとされています(こちらは異論なく自衛隊法第七条で明記)。
中国の人民解放軍を理解するには、戦前のヒトラー支配下の第三帝国を思い出してもらうとイメージしやすいと思います。第三帝国にも国軍がありましたが、ヒトラーは国軍の指揮命令系統とは別に、ヒトラー直属の「親衛隊」(SS)と、「突撃隊」(SA)を持っていました。
人民解放軍は、ナチスの親衛隊や突撃隊と位置づけは同じです。
SSとSAがヒトラーを守り、ヒトラーの戦略の実行部隊であったのと同様に、人民解放軍は中国共産党の私兵なので、中国共産党の利権を守り、中国共産党の戦略を実行する部隊なのです。
人民解放軍の使用法
こうした特異な位置づけの人民解放軍について明快に解説してくれいているのがこの本でした。
中国の軍事的脅威を誇張する文脈で、まことしやかに語られる「侵略国家」などの烙印も、本書で見てきたとおり、歴史的事実に基づく表現とは言えない。無人島やそれに近い島を別にすれば、中華人民共和国は建国以来一度も、領土拡張目的の侵略を、一定の住民が住む外国(国連で独立国と認められている国)の領土に対して行っていない。
その一方で、経済政策の失敗などの内政問題から国民の目をそらすために、中国共産党政府が特定の地域を選んで、限定的な戦争を引き起こす事例はいくつも存在した。(中略)
このような軍事力の使われ方は、本質的に国軍ではなくて「党軍」だという、人民解放軍の組織が持つ性格とも密接に関係している。その時点における中国共産党指導部にとっての「党益」が、中国という国から見た「国益」よりも上位に位置するのである。 上掲書 P258 強調はみこちゃん
とても明快に、人民解放軍および中国という国の国家戦略(のなさ)を指摘していると思います。
中国人が戦略的思考に長けているというのは思い込み
中国というと、『孫氏の兵法』の存在などのように、戦略的な思考に長けているという見方がありますが、それは誤解でしょう。
あの本は、戦略といっても中国人同士の戦いをいかに有利にすすめるかといった、きわめて内輪で通用する戦略書であって、どっちかというと戦術書です。少なくとも国際政治をいかに冷徹なシナリオのもとに手中に収めるかという本ではありません。
ビル・ゲイツが『孫氏の兵法』の愛読者だというのも象徴的です。マイクロソフトは昔から、明確なビジョンを持たない会社でした。これはアップル社と比べるとその特徴が顕著でしょう。
中国のやり方とマイクロソフトのやり方はそっくり
アップルが切り開いたGUIの分かりやすいインターフェースをWindow95として大衆化し、一山当てたのがマイクロソフトです。その版図の広げ方は、孫氏の兵法のある意味せこいやり方ととても良く似ています。
下手にビジョンを打ち出すと、マイクロソフトはことごとく失敗する妙な会社です。中国もまたこれに似ています。国際的な舞台で失笑を買うような行動が多いのはそのせいでしょう。
中国のドメスティックな権力闘争と内政の論理を国際社会に持ち出してくるので、大概の国は「なんですかそれ?」状態になります。
これは、マイクロソフトがその図体を膨張化させる時に、「なんですかそれ?」と業界から鼻つまみ者状態だったのと極めてよく似ています。
しかし、やがてマイクロソフトには誰も逆らえなくなりました。同じく中国にも誰も逆らえなくなるのでしょうか。
IT業界では、マイクロソフトの基盤は盤石だと思われましたが、Googleに盟主の座を引き渡し、今ではグーグル(Google)、アップル(Apple)、フェースブック(Facebook)、アマゾン(Amazon)を総称するIT四天王「GAFA」の一員ですらありません。
個人的には、中華人民共和国は30年以内に再びGDP世界第三位に転落し、日本が再び第二位に返り咲くと考えていますが、それはまた別の記事でいつか書きたいと思います。
まとめ
蛇足ではありますが、マイクロソフトの人民解放軍とは、オペレーティングシステムでした。
マイクロソフト幹部にとっての「社益」が、ソフトウェアビジネスの発展というIT業界全体から見た「公益」よりも、露骨にまで上位に位置する会社。それがマイクロソフトにほかなりません。
GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazon)もそうですが、米国IT企業は常にアメリカ議会と国益と社益で鋭く対立しているのは周知の通りです。
中国からも、マイクロソフトからも、依然として目が離せませんね(^o^)/。
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