見出し画像

私の好きな伊坂幸太郎作品をご紹介②

先日、私の好きな伊坂幸太郎さん作品の第一弾をご紹介しました。
そこで今回は、第二弾として『殺し屋シリーズ』についてご紹介します。

私は基本的に、物騒な話より穏やかな話が好きなのですが、この「殺し屋シリーズ」は何度も読み返すほど好きなシリーズです。
物騒なシーンもたくさんあるのですが、登場する殺し屋たちが個性的で、どの殺し屋もなぜか憎めません。

各作品は独立しているので、気になる作品から読んでも十分楽しめます。

ただ、各作品の登場人物が他の作品にも出てくるので、出版順に読むと「あのときの人だ!」といった見つける楽しみが増えます。
※ 本記事は出版順にご紹介します。


1. グラスホッパー

妻を殺された元教師の主人公・鈴木が、妻の復讐のために人殺し業界に潜入し、気が付くと色々なことに巻き込まれていく錯綜劇です。

鈴木の妻のエピソードや、押し屋である『槿(あさがお)』一家とのやり取りが、ほのぼのしていて好きです。
普通は物騒な出来事が非日常のはずなのですが、本作は全体的に物騒なので、ほのぼのした日常が非日常のように感じます。

伊坂作品の特徴である、会話の面白さと伏線回収は本作でも楽しめます。

本作に出てくる殺し屋は、鯨、槿、蝉、劇団、スズメバチです。
殺し屋たちの名前が特徴を捉えていて、すごくイメージしやすいです。

また『オーデュボンの祈り』の登場人物もちょっと出てくるので、読んだことのある方は、きっと「おお!」と楽しめると思います。

2. マリアビートル

本作は「ブレット・トレイン」(主演:ブラッド・ピット)というタイトルでハリウッド映画化されています。

あらゆるところに伏線が張り巡らされており、殺し屋シリーズの中で一番好きな作品です。2回、3回と読むたびに「ここも伏線だったのか!」と新たな発見があります。

一番好きな登場人物は、殺し屋っぽくないけれど実は有能という殺し屋の『七尾(天道虫)』です。
有能さを打ち消すほどのツキのなさに笑ってしまいます。

他にも、アル中の元殺し屋『木村』や、腕利きの殺し屋『蜜柑』『檸檬』、『伝説の殺し屋』などたくさんの殺し屋が出てきて、新幹線内は大変なことになっていきます。
ちなみに、グラスホッパーに出てきた『鈴木』『槿』も出てきます。

なお、本作に出てくる優等生然とした中学生『王子』は、信じられないくらいの悪意の塊で、読むのが辛くなるシーンもちらほら。
しかし、終盤になるにつれて物語がどんどん加速し、最後は予想外の展開になるので、是非最後まで読んで欲しいです。

3. AX(アックス)

主人公『兜』の日常(?)がメインの連作短編集で、これまでとは少し違い、殺し屋の素の部分が垣間見える作品です。

物騒な話がメインというよりも、家族の知らない一面を持つ『兜』の日常と、家族への愛情が詰まった作品です。

周りから一目置かれるほどの殺し屋『兜』は、すさまじい恐妻家で、特に魚肉ソーセージのエピソードには笑ってしまいます。
ただ妻を恐れながらも、そこには愛情が感じられ、最後の「FINE」の章では、家族を守り抜く父親『兜』のカッコよさがあります。

伊坂さんの作品は視点が切り替わる際に印鑑が使われることが多いですが、「FINE」の章の中にある「克己」と掠れた「兜」の印鑑が並ぶ様子は、父と息子が力を合わせて立ち向かう感じで、何だか泣けてきます。

これまでのシリーズに出てきた殺し屋達もちょっと登場しますが、内容に影響はないので、本作から読んでも問題ありません。

物騒な話が苦手だからと敬遠している方も、本作は心温まる作品なので、是非読んでみてください。

4. 777(トリプルセブン)

本作は「マリアビートル」から数年後の物語で、不運な殺し屋・七尾さんの第二弾です。

今回は新幹線ではなく、ホテルからなかなか出られません。
マリアビートルもそうでしたが、限られた空間での逃走劇はハラハラドキドキします。

相変わらずトラブルに巻き込まれる七尾さんですが、やはり有能。
自らの不幸を逃れようのない運命だと達観し、最善を尽くすために周到に準備するその姿勢は「見習わなくては」と思わせてくれます。

本作では、「不幸とは他人と比べるから起きるもの」といった旨の言葉が、度々出てきます。
心に残った文章がこちら ↓

「梅は梅になればいい。リンゴはリンゴになればいい。バラの花と比べてどうする」

伊坂幸太郎. 777(トリプルセブン) 

私は時々、「何で自分ばっかり」という考えに囚われてしまうことがあります。
そんな時は「他人と比べているせいかも」と一拍置いて考えてみようかなと思います。

ちなみに、本作には「AX」の『兜』もちょっと出てきますので、前作を読んだ方は是非探してみてください。


というわけで、殺し屋シリーズ全4作についてご紹介しました。
どの作品も面白く、エンターテインメントとして楽しく読めますので、伏線回収を楽しみながら読んでみてもらえたらと思います。

第三弾の記事も予定していますので、少しお待ちいただけると嬉しいです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?