見出し画像

金曜日の水筒事件

職場に水筒を持っていている。
500mlサイズのものだ。

今の仕事に就いて、はや半年以上は経った。

仕事中にあまり飲食はしないが、
不意に声をかけられて返事の声がうまく出なかったとき
電話をとって声が裏返ってしまったとき
ひとりごとをブツブツ言ってしまいそうなとき
とりあえず水筒があると助かる。

潤す、整う、飲み込む、3拍子風にいえばそうだ。

中身は「白湯」だ。
結局どんな時でも白湯がいちばん3拍子揃えてくれる。

そんなふうに職場で欠かせない存在『水筒』で、
今日は大惨事を起こしてしまった。

お察しのいい方はこうお思いだろう。
「ははぁん、パッキンをし忘れたのだな」と。
あるあるだ。
前日パッキンを外して洗って
翌日つけ忘れることは
水筒持ちなら一度はしたことがある失敗だ。
過去にこれでちょっと痛い目にあったことがあるので
そんな失敗はしない。

今朝だって、パッキンをしっかりした。

じゃあ、なんだ。

お察しのいい方はきっと経験者しかいないだろう。
そう、飲み口自体を忘れたのだ。
蓋に飲み口を装着することにより、
完成するその水筒のフタ。

、、、『蓋』と書いたが、
どうも頭蓋骨がよぎって違う話を書いてしまいそうなので
2度目は『フタ』と書き換えた。
以後、そう表記させていただくことを
おもっきし本文中で但し書きさせていただく。

飲み口を忘れてもフタをすることができるし
見た目にはしっかり水筒だ。
なんならお気に入りの水筒だ。

残念ながら、その見た目から
飲み口がその横に忘れ去られていることに気づけなかった。

キミヲキズツケタコトニキヅケナカッタ… 
みたいなことだ。

あとのまつりだ。

職場に着いて、
ロッカーでカバンの中から水筒を出そうとし
その軽さに『?』が浮かぶ。
デスクまで持っていくバックインしてるバックを
手探りで手にするといつもと違う重さに『?』が浮かぶ。
ずいぶんと湿っている、というか、ずぶ濡れだ。

肩から完全に降ろして中を見ると
カバンの中は海になっていた。

いや、海、はさすがに大げさだ。

おまつりの金魚すくいの金魚くらいなら
泳げそうだな程度に白湯が貯められていた

なんのまつりか。

居合わせた人に、ダイジョウブ?と言われ
とっさに出た言葉は
「不幸中の幸いだらけです!!」だった。

驚く。
自分でその前向きさに驚く。

中身が白湯だったこと
一番大事なものは一滴も濡れていなかったこと
スマホは外ポケットで全く被害がなかったこと
カバンの内布のがんばりで外側の革はほぼ無事だったこと
外側に染み出て服が濡れたりしなかったこと
手帳がやや水没したがシミが宝の地図風に見えてくること
読み込んでいく予定の格言集が
すでに読み込んだみたいになったこと

被害状況を確認しながら
そんな前向きポイントを
ブツブツ言っていたであろう姿を見た人に

マエムキスギ!言われた。

その表情は、
ダイジョウブ?と言ってくれた人と同じくらい
心配顔に見えた。

いけない、心配をかけてしまった。

過剰な前向きはひとを心配にするのだな、
とわかったので次回から気を付けようと思った。

社内の自販機に水分を買いに行ったが
たまたま小銭がなく買うことができなかった。
その話を後で聞いてくれた人が
これからは困ったときは遠慮なく言ってねと言ってくれた。

午前中の水分は
お昼用にタンブラーに入れてきたコーヒーを充ててみたが
コーヒーを飲みながらの午前中は意外にはかどった。

お昼にコンビニにお茶を買いに行き
やけにおいしそうに見えたペットボトルのお茶に即決したら
これがほんとうに、やけにおいしかった。

仕事中、デスク下に
カラにしたカバンとバックインバックとハンカチを置いたが
全て帰りには意外なほどに乾いており
デスク下ってこんなに乾燥していたのか、
という発見とともに
自分自身が今日は乾燥から守られたかもしれないと
ちょっと潤ったくらいの気持ちになりながら初めて
急に自分を抱きしめたくなった。

オツカレ、ジブン。
スイトウノフタニハ、ゴヨウジン。

そんな、金曜日。

みなさんの金曜日が
よい金曜日であったならいいな、と思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?