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花町横丁

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「いーち、にーぃ、さーん!」

サキちゃんがバタッと床に倒れた。
早すぎるよぉと思ったけど、黙った。

「ねえ、キオ。もうやめない?痩せっこないって。こんなことしても」

サキちゃんが、呆れ顔で床に寝転んだままどやっている。
いつもこうだ。
自分からテレビ番組でやってたこれだけでクビれる体操っていうのを一緒にやってくれって言ったのに。

「ねえ、ところでキオ、来週からお寺だっけ」

「うん」

「今回はどのくらい行くの?」

「1ヶ月」

「1ヶ月!!」

サキちゃんが驚いた反動で起き上がった顔が朝日で黄金色になった。

「うん。ママが珍しく、好きなことしなって言ってくれてね。行けることになった」

夜は居酒屋になる喫茶店「ファミ」の座敷で、今度はサキちゃんが仰向けになった。

「キオはもう覚悟してるんだね」

さっきまでふざけてた顔の動きが止まった。

「うん。私もだけども、ママの方がもっとしてるかも」

「キオにはそのママのために行かないっていう選択はないの?」

サキちゃんが心配で怒り始めた。

「ママに親らしいことしたいって言われたんだよ。これまではさ、小さい商店街の喫茶店の娘なのに、普通の人生を送って欲しくて、いろいろ反対したけど、私の娘なんだから、そうなるわけないのにって」

「キオはそれでいいの?」

「ママの懺悔だって。それに付き合うよ。でも、病院から電話が来たりしたらすぐに山を降れることにはなってるから」

私はエプロンをして、モーニングに付け合わせる千切りのキャベツを作り始めた。

 続く

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