「風景から色のみを抜き出す」広い意味での風景画
風景画という絵画のいち形態
わたしは、子どもの頃から身の回りにある自然や植物、風景を描くことが好きでした。大学で油絵を専攻し、大学院で抽象画に転向してからも、風景を軸にした作品制作をつづけ、今日に至ります。
2014年頃からは、その“風景画”という絵画のいち形態を端緒として、風景のなかから色だけを抽出し「風景のなかにみた色を再現する」という風景画を描く際のひとつの行為を選択した作品制作をするようになりました。現代における風景画とは何なのかその意味について考える、広義の風景画と位置づけています。
“絵画”の分解
近年は、色を作る際のパレットすら作品となると考え制作しています。
2021年ごろの最新のシリーズからはさらに意識的に絵画の要素を分解し、「色をつくる(mix)」「塗る(paint)」「描写する(depict)」に解体したトリプティクシリーズ(三連作のシリーズ)をつづけています。
まず、風景の記録写真をいちどデジタルで自動的にモザイク化し、それをアナログで忠実に色を再現しようと試みる。そこで塗るための色は別のキャンバスをパレット代わりにして作成する。そうすることで、色を作るという無意識的で純粋なひとつの作品(mix)が生まれ、また、色を塗るという無心なもうひとつの作品(paint)が生まれると考えます。
では、「風景から色を抽出する」という一要素だけに焦点をあてながら風景画(≒絵画)の意味を探るなかで、depict(描く、描写する)をもう一度定義できるだろうか? ということを考えるシリーズです。
絵画の要素を分解し極限までシンプルにすることで、その良さや意義のようなもの、つくったわたし自身の身体性や存在が浮き彫りになると考えています。白い下地材を塗ることからも離れ、布と絵の具そのものの関わりとその面白さにも気づいてもらいたい。現象はとても些細なものですが、だからこそ、観賞者の感受性を引き出す時間と空間を創りだせるのではないかと思っています。
コンセプチュアルでアブストラクトなスタイル
一見して風景画とはわからない作品スタイルになったのには、理由があります。より具体的に(笑)抽象的な作品に変化したのは、英国の大学院に入学してすぐのことでした。
「Why do you paint (the landscapes) ?」
どうして(その風景画を)描くのか?
という衝撃的な質問を受けた瞬間の物語は、次の投稿で書いていこうと思います。お楽しみに!
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