個のサービスか、組織のサービスか
ホテルや旅館で働く皆さん、こんにちは。いつも勝手に親近感を持っています、田中です。
先日、TOUCAの打ち合わせに参加していた時に印象的だったことを記事にします。
この記事のテーマは「個のサービスか、組織のサービスか」。スタッフ個人が前に出てサービスを提供するのが良いのか、個人というよりは組織・チーム全体で同様のクオリティでサービスを提供できた方が良いのか。
宿泊業界で、特にゲストと接する人は1度は考えたり、話す内容ではないでしょうか?
組織のサービスは物足りない?
TOUCAでは1年間で3つの宿泊施設を回るので各施設の特徴や違いを感じることができます。ですので打ち合わせの時もこのような感想のシェアがありました。
「A施設では個を全面に出したサービスだけど、B施設ではそうでなかった。黒子役というか、特徴的なスタッフがいない感じ…」ご本人はそのような意図はなかったかもしれませんが少し物足りないような雰囲気にも感じ取れました。
この話を聞いた時に思ったことは”私もその経験がある!”です。そして私はその経験をしたときに物足りなさを感じていました。
京都のホテルで働いていた時は個人を前に出すスタイルの接客やサービスだったように思います。人それぞれ特徴があるわけですし、違いがあるから唯一無二なサービスを提供できる。大袈裟かもしれませんが、そのように感じていました。
そこから長崎の老舗旅館に働く場を移すと接客のスタイルが正反対になります。個性を出すというより、スタッフ誰でも同じようにお客様に喜んでいただく。点ではなく面でサービスするといったイメージでしょうか。
その違いに最初は違和感を覚え、前述した通り、物足りなさのようなものを感じていました。ですが、その中でずっと働いていると見えてくるものがありました。
「あれ?個を出さないサービスって”基準”を作ってるんじゃないの?これってすごいクリエイティブなことじゃないの?」というものでした。
基準を作る
個のサービスはある意味わかりやすいです。自分の好きなスタイルでお客様に喜んでいただく方法を考えるのでシンプル。ですが組織のサービスはそうはいきません。全員ができることという制約があるので、好き勝手はできません。
”私たちのサービスはここまでの基準がありますよ”というものが明文化されているかに関わらず、基準は存在します。言葉遣い、所作から料理、客室のベッドメイクの仕上がりまで全てにあります。組織のサービスを提供している施設はこの基準が厳格です。(個のサービスを提供する施設に基準が無いという話では無いですよ)
そして組織のサービスを改善するということは基準そのものをより良くしていくことでもあります。一度基準ができると、いきなりサービスの品質が悪くなるということはありませんし、例えスタッフが抜けた場合もそこに基準は残ります。
このことに気づいてからは「なんだよ、組織のサービスもめっちゃ面白いやん」と感じ方がガラッと変わりました。
・ベッドメイクの仕方を変える
・館内案内をちゃんとデザイナーの方に制作していただく
・レストランのドリンクメニューを新しくする
・マニュアルを作成する
など、細かいことでも自分が働く施設の基準と関係している。その意識になってから以前よりもアンケート結果のお褒めの言葉が嬉しくなりました。
「あぁ、あれをしたからこのお客様は喜んでくださったんだな」と具体的に理由をイメージできるようになりました。
スーパースターを集めない意味
東京ステーションホテルの藤崎総支配人が「東京ステーションホテルを開業した時にあえてスーパースターを集めなかった」ということを仰っていました。
以前の私だったらその言葉の真意が掴めなかったと思いますが、今では少し分かる気がします。個に頼ったスーパースター軍団でなくとも、基準を作り、基準を守り、基準を少しずつ上げていける組織であれば、どのような事態でも対応できる強いチームになると。
そういった経緯からTOUCAの打ち合わせでは組織サービスの面白味について少し話をいたしました。「個のサービスも、組織のサービスも両方面白いじゃん!」と思ってもらえたら嬉しいな。
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