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だから僕は音楽をやめた

___考えたってわからない。
いつだったかはもう思い出せない。
だけどもうずっと長い間、苦しめられてきた気がする。

君のせいで大好きだった音楽が聞けなくなった。
好きだったラブソングも、流行りの曲も、音が頭に響く度に苦痛を感じるようになった。
大好きだったピアノも、ギターも、弾く度に調律が狂っているように聞こえて触れなくなった。
密かに自慢だった絶対音感も、気づかないうちにどこか遠くに置いてきてしまった。
ただ、机をピアノに見立てて敲く癖だけが未だに抜けない。

街中の人の声、スクリーンの広告、ラジオの音声、何気ない生活音……耳に入る全ての音がノイズに変換されていく。そして頭の中に不協和音が鳴り響き、僕の心に不快感をもたらす。
音楽だけが心の拠り所だったのに、君のせいでその唯一さえも奪われてしまった。
そんな僕に一体何が残るというのだろう。
___幸せな顔をしてる人が憎い。

なりたくて病気になったわけじゃない。
僕の身体は僕のものだ。
だけど君が僕の中に棲みついたせいで、僕は僕でなくなってしまった。
それまで当たり前にできていたことも、好きだったことも、力を入れてきたことも、今はもうできなくなった。
こんな屍のようになった僕は、果たして生きていると言えるだろうか。
___考えたんだ。アンタのせいだ。

不安、恐怖、孤独、絶望……そんな苦しみが僕を襲う。お気に入りだったヘッドホンも、今は情緒不安定を加速させる要素でしかなくなった。
だから僕は、全ての雑音から自分自身を遠ざけることにした。今はもう音楽を聞くことも、楽器に触れることもできない。
もう何もかもどうでもいいや……全部アンタのせいだ。
___だから僕は音楽をやめた。

ヨルシカさんの「だから僕は音楽を辞めた」の歌詞になぞらえた物語を作ってみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。




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