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「育休中リスキリング」やってる人に聞いて見えてきた、日本企業の根深〜い問題

みなさんのご記憶にも新しいかと思いますが、岸田首相が1月の国会で「育休中の方のリスキリングを支援する」主旨の発言をして「育休は休みじゃねー」「どんだけ育児が大変だと思っているんだ!」と大炎上をしました。

中には「私も育休中に学んだけどよかったよ」「選択肢があることが大切」などの意見もあり、また、そもそも、岸田首相の発言は育休中の方を対象にしたのではなく「どんな人であれ、学びたいと思う人を支援する」という主旨だったようにも思うので、この首相の発言そのものについて私がどーのこーの言いたいわけではありません。

育休中に学ぶ人、結構いるよ?!

私が一番この炎上事件を見てまず違和感を感じたのは、

あれ?育休中に学んでる人(主に女性)、私の周りには結構いるよ!みんなすっごくがんばって学んでいるよ!

ということでした。だから、そこまで炎上する?と一瞬思いました。

が、すぐにそうか!私は仕事柄、いわゆる「ダイバーシティ先進企業」と言われる大企業勤務の女性との接点が多いから、経済的にも、会社の制度的にも、恵まれた方々なんだな、学ぶ余裕と学べば活躍できる環境があるから学ぶんだな!と気づいたのですが・・・

でも、待てよ、と。彼女たちは、とても恵まれた、幸せいっぱい夢いっぱいの気持ちで学んでいたっけ・・・?

彼女たちの発言や行動を思い出しているうち、彼女たちが必要としているのは学びへの支援なのか?もっと別のことではないのか?と思うようになりました。なぜなら彼女たちが「何かに迫られて」学んでいるように思えたからです。学ぶ、という行動のその裏側に、何か強い「感情」が見え隠れしているような。

そこでさっそく、いわゆる「ダイバーシティ先進企業」といわれる大企業*に勤務されている女性で、育休中に何かしらリスキリングした人へのインタビュー調査を始めました!(*ここでは従業員数300名以上、プラチナくるみん・えるぼしともに認定企業、とします。)

彼女たちの入社してから今までのキャリアを聴きながら、誰の、どんな行動に影響を受け、どんな感情になって、育休中に学ぶに至るのか、という点について聞き取りました。

一人目のインタビュー調査をやってみて「やはり!」と思いました。彼女が学ぶその裏に「今の日本の社会のあり方」とそのために起こる「キャリアへの焦りや葛藤」が見えたからです。

調査はまだN=1なのでなんとも言えないのですが、この話を周りの女性にすると、「わかる!」と共感の嵐。今後さらにインタビューを進めていきますが、まずは最初のインタビュー対象者のゆうこさん(仮名)のキャリアと育休中に学ぶ理由をお伝えしたいと思います。

ちなみに、30-35歳で育休中に自己啓発等を行う女性の割合は2015年現在で11.5%というリクルートの調査があります。ChatGPTちゃんに聞くと、その割合は2021年まで年々増えていると回答するのですが、指定されたサイトが存在しませんので今のところ不明です。

大企業勤務ゆうこさんの苦悩と「育休中に学ぶ理由」

ここでは、ゆうこさん(30代前半の女性)のキャリアストーリーを要点のみお伝えします。(詳しくはこちらで語っておりますので、よかったらお聞きください。初のyoutube配信のため、緊張しております笑。)

営業の仕事がやりたくて、営業職として超有名企業に入社したゆうこさん。ある地方都市での営業人生が始まりました。入社当初は男女の違いなど感じることもなく、得意先からの信頼を得るために毎日駆け回り、楽しく仕事をしていました。

ゆうこさんが東京在住の男性と結婚をすると、周りの男性からはこんな声が聞こえてきました。

「どうせ子供ができたら辞めるんだろ?邪魔なんだよ。」
「いいな、女は。結婚したら東京の本社に戻してもらえるもんな。」

悔しさのあまり、ゆうこさんは夫との別居を決意し、この地で営業としての成果を上げることに集中します。

数年後に周囲も納得の結果を出して東京へ転勤となります。ゆうこさんはそこでも大活躍!しかし妊娠すると、これまでのように全力で仕事ができない状況に戸惑うようになります。

復帰後のキャリアアップのためになればと、一人目の産休・育休中に英語の勉強を開始。夫の帰宅は夜中。育児に対しても勉強に対しても一切の協力はなく、ゆうこさん本人は働いていないことに対する負い目から夫に協力をお願いすることもできず、赤ちゃんを抱っこしながら家庭教師をつけて学びました。

復帰はまたもや営業職。さらに大きな得意先を担当し、複数のメンバーとチーム営業を行うことになったゆうこさん。期待される喜びの一方で、全力で仕事をしたいのにできない日々に葛藤します。さらに「残業しないなんてずるい」という同僚男性の言葉が胸に突き刺さりました。

「お前は偉いな。うちの嫁なんか専業主婦なのに、お前は仕事も育児もやってるんだもんな。」

周りの男性が気を遣って言ってくれているということはわかっても、「専業主婦がどれだか大変かわかってる?なんで帰ってあげないの?」と怒りの気持ちでいっぱいになるのでした。

二度目の妊娠と流産。心も体もボロボロの中、流産翌日も当たり前のように出勤を求められ、ついに心が折れます。この頃から当然、退職・転職も視野に入ってきます。

その後、ゆうこさんは再度めでたく妊娠するのですが、もう絶対に営業には戻りたくない、という決意から、今の自分が本当にやりたいと思うことと向き合った結果、キャリア・コンサルタントの資格を取得します。

「自分はだめだ。何もできない。ポンコツだ!そのネガティブな気持ちで強烈にパワーが出て、必死で学んでいました。」

苦悩の背後に浮かび上がる今の社会と企業のあり方

聞いていて涙が出るような努力をされてきたゆうこさんですが、

マネジャーになるつもりなんて1ミクロンもありません!

と、言い切ります。
仕事で成果を上げ、これだけ頑張ってきた人が、マネジャーになるイメージも持てず、さらに育休中にリスキリングした結果、退職・転職してしまうとしたら、なんのために企業はさまざまな制度を整えてきたのでしょう。

どんなことであれ学ぶのは良いことだと私は思います。ゆうこさんの学びは決して無駄ではないし、彼女がどんな道をこれから選択しようと、この先の人生で必ず活きるでしょう。だから、リスキリングを止めるはありません。でも、もっと希望を持って学べたらいいなと思うのです。

私がここでフォーカスしたいのは、「育休中リスキリング」に至るゆうこさんの感情の動きの背後にある周囲の影響=社会のあり方、そしてゆうこさんと社会との関わりの方です。学びに至るプロセスの中での苦悩や葛藤。周囲の言葉に傷つき、ダメな自分を否定して、より強くなりたくて、一人で、必死に学んでいるのです。その裏には、男性中心社会の姿がくっきりと浮かび上がっています。

私が社会に出た30年前は、社会に出た時にすでに男女の扱いの差というものをまざまざと見せつけられたものですが、今は、社会に出た時には男女の差はあまり感じなくても、結婚、妊娠、出産、産休・育休、育休復帰、とライフイベントが重なるにつれ、この社会がいまだに「男性的な男性中心の考え方で回っている」ことを強く認識するようになってくるのではないでしょうか。

幻滅や葛藤、孤独、それを乗り越えようとして自分を否定し、見つめ直し、武器を身につけようと学ぶ。たった一人のインタビューではありますが、そんなことを感じました。

そして!私が一番言いたいのはこれ!!!一人の女性の物語ではありますが、

これは令和の時代の、ダイバーシティ&インクルージョンが進んでいる会社として高い評価を得ている東京の大企業の話ですよ!!!いやマジで!

ということは、日本全体ではどうなっちゃっているんだろうと思うわけです。今でもこんなことが起こっているなんて信じられないし、信じたくないのですが・・・。まだまだ私たちがやることは多いなと感じています。

最後にゆうこさんに「どんなサポートがあればよかったですか?」と質問したところ、

「ただ、わかってほしかったです。」

と、即答でした。

「育休中のリスキリングの支援」って一体、なに?

ゆうこさんのインタビュー以来、私の立場でできることってなんなんだろうとずっと考えています。

この話の続きは、インタビューを続けながらときどき書いていこうと思います!



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