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機械翻訳とかMTPEとか

最近、海外の翻訳会社では翻訳よりも、限りなくMTPEに近い翻訳作業が増えています。AI搭載の翻訳アプリで翻訳した文章が翻訳支援ツール上に表示されるので、一見ラクそうなのですが、これがけっこう大変。

最近の翻訳アプリは驚くほど性能が向上しているため、専門的な内容でもけっこう「ありだな」と思える翻訳文が出てきます。しかーし、これが仇になるというか……自分の“まともな日本語表現”感覚が、どんどん機械翻訳にひきずられていって、自分でも「むむむ……」と思うほどに怪しくなるのです!

もともと日本語表現が怪しいへっぽこ翻訳者ゆえ、機械が「これはこうなの!」的に出してきた翻訳文に感化されるのは致し方ないとして、惑わされたままではクオリティだだ下がり。そこで試行錯誤の末に解決策を見つけました。

それが、機械翻訳を残したまま自分の翻訳文を入力して、2つを比較すること。引きずられないように、この作業の前に読むのはソース言語の文章のみ。こうすることで自分の日本語作文のクセも見えてくるし、機械翻訳のオイシイ表現も拝借できるという一石二鳥な手法(なのか?)。

機械翻訳が主流になるのは仕方のないことなので、それを受け入れた上で、「翻訳者である自分になにができるのか」を考えるのが重要だと思います。

機械翻訳のせいで能力が下がると危惧する人もいるようですが、どんなにAIが進化して翻訳文がまともになってきても、現段階ではしょせん「まとも」レベルです。

一方、プロの翻訳者は普段から「ターゲット言語として優れた表現」の翻訳が商品ゆえ、この点に意識を向けると、機械翻訳に負けないヒントが見えてきます。

それに機械翻訳くん、けっこう面白いんですよ。真剣に仕事をしている最中に不意に笑かしてくれます! 「ずっとまともな翻訳文を出してきたのに、どうして、今ここで、その単語を訳せなくなるかな? 君、さっき訳してたでしょ?」と呆れるほど唐突に、摩訶不思議な訳文を突っ込んでくるのです。この面白さに気付くと機械翻訳が愛おしくなります。

実は、今月はアメリカ拠点の翻訳会社から、クライアントを獲得する際に提出するパイロット版のマンガ翻訳(日本語→英語)を打診され、喜んで引き受けました。ここnoteでも「やりたい」と公言していた分野なので、話がくれば当然食いつきますって。

会社にとってはクライアント獲得がかかっているパイロット版の翻訳者選びはかなり厳しいはず。それなのにマンガ翻訳経験のない私を選んだ背景には、今年のマンガ英語の校正トライアルで培った知識が功を奏したのでしょう。失敗が後に他の形で活きるの典型例ですね、これ。

多忙中に丸一日この仕事に割いて、4コマ漫画を30本ほど英訳して納品しました。これもMTPE的翻訳でしたが、この機械翻訳は端から使い物にならず、読みもせずにサクッと消しました。予想通り、英語の校正よりも英訳の方が何百倍もラクで楽しかったです!

この翻訳会社の担当者とやり取りしている最中に、ふと思い立ってマンガ専用の翻訳アプリを検索してみたら、なんと、ありました!!!

多言語マンガプラットフォーム マントラ Mantra

このアプリの画期的なところはマンガ翻訳の一連の作業に対応している点。こういう文芸翻訳モノはまだまだ人力が必要なので、その作業にも意識を向けた点が素晴らしい。件の翻訳会社の担当者にもマントラさんのことを教えたら、クライアントと情報共有すると言っていました。

最近は、昔ながらの手法の利点は維持しつつ、機械と共存しながら仕事をするのが楽しいと感じ始めています。こういう“いい加減さ”や“おおらかさ”がけっこう大事かもしれませんね。

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