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通訳の種類

今日、偶然YouTubeで観た動画で衝撃を受けました。

米国在住と思しき日本人母娘3人のチャンネルで、小学生くらいのバイリンガルの娘2人が同時通訳にトライするというもの。「ほほ〜、どうやってやるんだろ?」と興味津々で観たら……

母親が日本語版『白雪姫』を一行ずつ読み上げ、娘2人がそれを英語にしていました😰

いやー、それ、同時通訳じゃなくて逐次通訳です。私が普段の通訳仕事でやっているやり方です。同通と呼ばないでぇぇぇ😭😭😭

確認するために通訳の種類を調べてみたら……

1)同時通訳:発話者とほぼ同時に発言内容を多言語に変換して話す。ヘッドセットなどの器具を使用することがほとんど。

2)逐次通訳:発話者の発言内容を、複数のセンテンスにまとめて、他言語に変換して話す。

3)ウィスパリング:聞き手の横にいる通訳者が、発話者の発言内容を少し遅れて他言語に変換して、聞き手の耳元でささやくように話す。

概ね上の3つですが、世間では逐次通訳を同時通訳と勘違している人が相変わらず多いようです。

実際3〜4年前に、米国の提携会社の役員が来るのでビジネスミーティングで同時通訳をしてくれと知り合いに頼まれて「絶対に無理!」と断ったことがあります。相手が「そんなぁ、いつもやっているじゃないですか!」と言ったので、「えっ、話者→通訳→話者ってやり方のこと?」と確認したら、そうだ、と。「それ、同通じゃなくて逐次だよ」と教えておきました。

同時通訳というのは特別な訓練が必要な通訳技術で、非常に高等な技です。例えば英語→日本語での通訳の場合、“耳で聞いた英語を口から日本語で出す”作業を、“耳で英語を聞き続け”ながら“口から日本語を出し続け”なくてはいけません。この仕事に必要な集中力は相当なものです。

それが証拠に、テレビニュースのライブ中継では同時通訳者が5〜10分間隔で交代します。政治関連のニュースなどは特に正確な通訳が必要なので、集中力を途切れさせないように短時間で交代するわけです。

一方、逐次通訳は話者の呼吸に合わせて言葉を遮って通訳を挟む方法です。これは比較的簡単にできる通訳方法で、事前に通訳ポイントを話者と決めておくと便利です。それが不可能な場合は、通訳者の力技でぶった切るしかないです(笑)。

そして、ウィスパリング。これは聞き手一人のための個人的な通訳とも言えます。前出のビジネスミーティング通訳では、私のアイコンタクトに気づかない件の米国人役員が切れ間なく話すので、多少英語を理解する日本側のスタッフは放っておいて、彼らの上司の耳元でウィスパリングもどきをする羽目になりました。10分くらいでその役員が気付いてくれて逐次に変更できたのですが、1時間半のミーティング終了後は完全に抜け殻でしたね。。。

通訳を介する会話に慣れている人たちは、通訳が入るポイントを会話の中で自然に提示してくれます。かつて「この質問が来たら例のギャグを言うから間髪入れずにヨロシク😁」と、事前にネタ合わせしてくるアーティストもいました。

ただし、2つの言語を話せるからと言って、誰もが通訳できるわけではありません。話者の言葉を正確に理解し、それを瞬間的に異なる言語に変換する能力がなければ無理です。

これは蛇足ですが、まだ20代の頃、高校大学を米国で過ごした仲良し通訳さんと「求人広告にある“日常会話程度の英語力”って私たちには無理だよね」といつも言っていました。私たちは“日常会話”とはニュース番組で取りあげる日常生活にまつわるすべての話題を浅く広く話すことと思い込んでいたのです。数年後に日仏ハーフの友人に見当違いを指摘されて驚愕しました。日常会話=日常生活で交わされる会話じゃないなんて……。

とは言え、私と仲良し通訳さんが考える“日常会話”が両方の言語でOKなら、オールマイティな通訳者になれる可能性大です。私は無理だな〜、医療とか化学とか日本語だってままならないから。

※上の写真はあるテレビ番組にテリー・ボジオさんの通訳をしたときのもの。生放送だったので緊張しましたよ。

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