見出し画像

バイリンガルへの道4

8月になると、Marie & Duane夫妻が唐突に「インディアン・マーケットに行こう」と言い出しました。これはニューメキシコ州サンタ・フェで毎年開催されるネイティヴ・アメリカンのアートフェスティバル。

M&D夫妻はネイティブ・アメリカン・アートが大好きで、自宅にたくさんのインディアン・ジュエリーやアート作品を飾ってあり、毎年このマーケットに行っていました。

コロラド南部からサンタ・フェまでは車で6〜7時間かかるので、午前中に自宅を出て、途中で休憩を挟み、夕方にサンタ・フェ到着。

夕飯を食べるためにホテルを出て歩いていると、通りの向こうに日本人の学生っぽい団体がいました。Marieが「声をかければ?」と言ったのですが、その団体はフランス系とドイツ系の白人夫婦と一緒の私を日本人とは思わなかったらしく、声をかける前にそそくさと逃げられました(笑)。

夕飯の話題はその団体。Duaneが「あの日本人たちはうちの娘のどこが気に入らなかったんだ?」と若干ご立腹で、Marieと私は苦笑い。冗談で「きっと私が日本人に見えなかったんだよ」と言うと、「うちの娘はもうアメリカ人だからな」とご満悦。無口なのに愛情深くオモロイ父ちゃんです。

ところが翌日、本当に私が日本人に見えないと証明されたのです。少し歩き回ったあとで木陰の芝生に座ってペプシを飲んでいたら、横に座っていたネイティブ・アメリカンの若者グループに声をかけられました、「君はどのプエブロから来たの?」と。

Marieに頼まれてインディアン・ジュエリーを付けていたせいもあって、完全にネイティブ・アメリカンと思われたのです。「日本という村」と返したら、「えー、マジ? 日本人なの?」と彼らが驚き、Marieが「そうなの、うちに住んでるの」と。

しかし、世の中には日本人を見分けるネイティブ・アメリカンもいました。あるアーティストがいきなり大声で「お前、日本人だろ?」と日本語で声をかけてきてびっくり。彼はなかなか日本語が出てこない私にびっくり(笑)。この彼、東京の大学に4年間留学して経済の勉強をしていたらしく、日本語が上手なのも納得。

そんなこんなで、このマーケットは仲良くなったネイティブ・アメリカンたちと非常に楽しい時間を過ごし、M&D夫妻も「私たちだけでは経験できないことが多かった」と大喜びでした。

コロラドへ帰る途中、ネイティブ・アメリカンの集落 Taos Puebloに寄ったのですが、この頃は見学ツアーなどはなく、村に来た人に見学を許している形でした。着いた早々、村のおばさんになぜか私だけ彼らの教会に入るように促されました。顔つきが似ているからでしょうね、きっと。

ここでも不思議な体験をしたのですが、あまりにもスピリチュアルなので割愛します。ただ、この村を出てすぐに、村に帰る車とすれ違ったのですが、そのドライバーがロン毛の美男子な上に、すれ違う間中じっと私を見つめていました。

Marieはノリノリで「引き返しましょ。デートしましょ」と。でもDuaneが「ダメだ」とそのまま直進。その後Marieはずっと「あんな美しい子、二度と会えないわよ」と文句たらたらでしたね。とにかく、Marieは私を日本に返したくなくて仕方なかったようです。

その彼の顔は今でも覚えていて、ネットで検索したら、このサイトの写真が一番近いものでした(この記事も面白いですよ)。

この旅以来ずっとネイティブ・アメリカンが自分の一部みたいな感覚です。コロラドのファミリーの中には彼らの血が入っている人も数人いたので、サンタ・フェに行く前から目に見えない絆が繋がっていたのでしょうね。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?