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No.048 旅はトラブル / フィレンツェサボイホテルの怪

No.048 旅はトラブル / フィレンツェサボイホテルの怪


奇妙な出来事を、イタリア・フィレンツェのホテルサボイの部屋で経験しました。「No.044 家具を求めてイタリアに(2)旅はトラブル」で述べたように、ミラノのホテルはバスタブもなく満足しませんでした。連れ合いの由理くんと話し合い、フィレンツェではいいホテルに宿泊しようとなったのです。インターネットのない時代の話です。

ミラノのホテルから、フィレンツェのホテルサボイに電話を入れました。予約は簡単に取れました。しつこくバスタブはあるかと聞いたら、電話の向こうで笑いながら、ドントワリー心配するなとの返事です。

フィレンツェの駅から、タクシーでサボイホテルに向かいました。到着してなるほど、ドントワリーが理解できました。数人のドアマンが、宿泊客を迎えます。自分の服装を見てしまいました。ドレスコード、まずいんじゃないの?

初めてのイタリアへの旅にあたって、友人たちは「イタリアは泥棒が多いぞ。気をつけろ。いい格好をしていると危ないぞ」と口を揃えて言ったのです。由理くんはともかく、自分はくたびれた格好でした。恥ずかしさを押し殺して、ポーターに部屋へと導かれます。おお〜、ロココ調の家具と品のいい間接照明に彩られた空間が、眼前に広がっていました。

ミラノのホテルでブー垂れていた由理くん一言「こら、いい部屋やわ〜」もちろんバスタブもありました、ネコ脚付きの。深い紫色を基調にした幾何学模様のドレープカーテンを備えた窓側の向かいには、備え付けの大きなクローゼットの扉が4面、長期滞在のヨーロッパの貴族たちは、このクローゼットをシルクのドレスなどで一杯にするのであろうなと思いを馳せました。人も数人は入れるだろう大きさです。

ポーターも部屋を出て、ふ〜と一息。旅行カバンを開け、荷物を出し、着替えを始めました。すると、どこからか、カタカタとの音が聞こえます。うん、なんだろう。カタカタ・・・木か何かがあたっているような音が。どこから音が出ているのだ?

ガタガタ、えっ、音が大きくなってきたー!どこだー!
クローゼットの中からだー!
ガタゴトッ、ガタゴトッ

着替えを始めていた由理くんは、クローゼットから離れ始めました。
シャツ一枚にパンツ一丁のしんやは、クローゼットの扉を見入ります。

ゴトン!クローゼットの扉がこちら側に開いたー!
由理くん思わず、きゃっ!由理くんらしくない可愛い声が聞こえました。

年の頃30歳くらいの白人が、パンツ一丁にソックスを履いたアホ〜な格好で扉の外に、我々の目の前に、現れたのです!

しんやと目の合った男性は、オウ!と言って振り返り、お尻を見せて、クローゼットの中へと戻ったのです・・・。

驚くよりも、正に奇妙な感じで、はっ?今のはなんだったの?オトコだよね、今見たのは?オウって言ったよね、イタリア語?英語?

クローゼットから、もう音は聞こえてきません。
フロントに電話を入れます。
「プロント」”フ"ロントではありません。”プ”ロントです。イタリア語で「もしもし」に当たる言葉です。間抜けそうな声が、電話の向こうで答えます。「プロント」
「たった今、クローゼットからパンツ一丁にソックス姿の男が出てきたぞ!すぐに誰か見に来い!」

程なく、デカい黒人が鍵をジャラジャラと鳴らし、やってきました。真っ直ぐにクローゼットに向かい扉を開け、中に入りました。ガシャと音が聞こえました。デカい黒人、オッケーとだけ言って部屋を出ていきました。

な〜にが、オッケーなの。説明も何もなく、フロントに電話をして間抜けな声を聞く元気もありませんでした。

考えられることは、隣の部屋のバスルームあたりと、こちらのクローゼットが扉一枚で繋がっているのでしょうね。隣にいる男性が何かドアを間違って開けて、こちらのクローゼットに出てしまったと思われます。

イタリアフィレンツェの五つ星ホテル「サボイ」で経験した、笑える間抜けな奇妙な出来事でした。

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