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No.055 英語・挫折の歴史・その10・まるで分からなかった仮定法

No.055 英語・挫折の歴史・その10・まるで分からなかった仮定法

首をひねりっぱなしの僕に、ミスターマイルズが、英語で一生懸命説明してくれている。ついていけない。クラスのみんなに迷惑をかけているなあ。スタントンスクール英会話学校市谷校、ある日の授業の風景だ。この日の会話の中心は、いわゆる「仮定法」だった。Ifなんたら、と言うものだ。

墜落してしまう飛行機に、渋滞などの理由で乗り遅れた数人が、難を逃れたと言う状況での会話だ。「もし渋滞にあっていなかったならば、飛行機事故で死んだいただろう」文法用語で言えば、「仮定法過去完了」だ。中学レベルの文法も曖昧だったし、高校レベルの文法の知識はまるでなかった。仮定法も、使役動詞や知覚動詞の用法も、時制の一致も、この後に知ることとなる。

面接の時に英語でマジックを披露したりしたので、一番上のクラスに入れられた。僕を除くクラス全員、英語のみならず他の勉強もキチンと学び、大学卒業まで至った方達だった。僕は高校卒業後、二年間の浪人生活の後、大学進学を断念して、家業の酒屋商売を継いでいた。

中学校時代は英語が大嫌いだった。ただ、定期テストでは点数が取れていた。教科書に出てくる単語や文を覚えれば、何とかなった。学年上位の成績だったが、オレ英語わかっていないなとの自覚はあった。高校時代はドロップアウト、授業も聞いていなかったので、英語のテストは赤点続きだった。大学浪人時代は二年間で4日しか予備校に行かなかったのだ。

英語を聞き取れて話したい、その思いから、社会人になってからは会話の英語ばかり練習していた。今にして思うと、楽しくはあったが、うわべだけの薄っぺらい勉強だったのだ。「日本は初めてですか?どちらからいらしたのですか?」答えを聞いて、その後の会話になると、ガクッとレベルが落ちるのをどうにかしたかった。

ミスターマイルズに「オレを無視して、先に進んでくれ」と頼んだ。「いいや。 しんや、もう少しやってみよう」と言ってくれたのは嬉しかったが、日本語の助けが無ければ無理だと思ったことを告白しておく。

後日、分厚い英語の文法書を買ってきて、真っ先に「仮定法」の箇所を開いた。なるほど「仮定法過去完了」なるものがあるんだー。未知の世界の話だらけだった。この後、英語に関する本を読み漁ることとなる。いい本も、ピンとこない本もあった。すごく刺激になった本もあったし、途中で捨てたくなった本もあった。英語の学習を始めた頃は、いわゆるハウツー本が役に立ったが、英語の本質に迫る話が読める本が好きになっていった。

母語である日本語での自分の知識や語彙を超える英語も、母語である日本語での教養や表現を超える英語も身にはつかないであろう。当たり前の答えに至り、そして、クラスのみんなに、昌一郎さんに、俊史さんに、かな枝さんに、泉さんに、メイさんに、美紀さんに、靖子さんに、まゆみさんに、追いつきたかった。

・・・続く

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