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No.175 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(11)ようやく会えたミッフィーちゃんと「旅への思い」

No.175 旅はトラブル / オランダ・アムステルダム&イングランド・コッツウォルズ訪問ひとり旅2012(11)ようやく会えたミッフィーちゃんと「旅への思い」

No.174 の続きです。最初の段落は再掲載です)

10分の長い微睡(まどろみ)と30分の短い暇つぶしのあと、ミュージアムの入り口に目を移すと、ドアを開けるスーツ姿の女性が見えた。開館時間のようだ。さあ、ミッフィーちゃんに会いに行こう。ドアの内側に消えていくスーツ姿の女性の背中に誘われるように、ミッフィーミュージアムの入り口へと足は動いていった。

前を歩く女性が、僕の足音に気づいたのか振り返った。僕が「Hello!」と声をかけると「May I help you?」との返事だった。この後の会話で、道路の向かいにある「ミッフィーちゃん」の作者ディック・ブルーナさんのミュージアムで入場チケットを購入するシステムを知る。こちらも同時に開館したので、僕がこの日の最初の訪問者だった。

特にミッフィーちゃんのファンと言うわけでもないが、世界中にファンを持つその愛くるしさには魅了される。絵葉書をはじめ、欲しくなるグッズだらけで困ってしまうほどだ。グッズを見ていると、四歳くらいの男の子と、手押し車に赤ちゃんを乗せた若い夫婦が入ってきた。男の子は元気にぴょんぴょんとスキップしている。お母さんが笑顔で男の子に声をかけている。優しく「静かにしなさい」とでも言っているのかな?

その後ろに、女の子と男の子を連れたご夫婦が、笑顔を浮かべながらチケットを買おうとしている。やはり子ども連れの家族には人気のスポットのようであり、僕のような男性ひとりでの訪問は珍しいかもしれない。二組の家族連れの次に「ミッフィーミュージアム」に入場することになった。

後で知ることになるのだが、ミッフィーミュージアムの入場料金は大人の方が子どもに比べずっと安いそうである。大人は「付き添い」と考えられているのだろうか?世界の何処かに、同じような料金体系の施設はあるのだろうか?

ミュージアムの中に入るとすぐの所に「白い台の上に立つ黄金のミッフィーちゃん」がいる。隣の部屋の壁は、葉書くらいの大きさのミッフィーちゃんで埋め尽くされている。一階と二階の部屋のあちこちに可愛らしいデザインの「ミッフィー家具」と「ミッフィー遊具」が置かれていて、僕の前に入った子どもたちは、その中に入ったり、触ったりして遊んでいる。それを見て微笑んでいる両親の姿は典型的な「幸せ」そのものだ。

帰りはショップに立ち寄り、ついつい沢山のミッフィーちゃんグッズ、絵葉書・本の栞・グラス・ボールなどを買ってしまった。そして、ミュージアム内は、色彩が美しく、子どもだけでなく大人も楽しめるミュージアムではあった。それでもなお、やはりここは、独りで訪れるより家族連れで来るのがいい場所なのは明白だった。

ミュージアムを出て20分は歩っただろうか、ショッピングセンターのそばの交差点にある世界でたった一つの「ミッフィーちゃん信号機」になんとか辿り着いた。意識しないと見逃してしまうくらいの小さなもので、上に赤色、下に緑色で一組の信号が横断歩道を挟んで二つある。信号なので、撮影ポジションの確保が中々に難しい。2回ほど横断歩道を往復してなんとか撮影でき、良きお土産話ができたし、宿題を終えた気分でもあった。

結構歩いたのでショッピングセンターの中の喫茶店でケーキと紅茶を頂いた。世界中の何処にでもあるような最大公約数的なお店で、東京にいる時でも、僕としてはまず選択肢に入らないものだったが、休憩を優先させた結論だった。

ユトレヒト駅からアムステルダムに向かう電車の中で思った。この日の過ごし方は、喫茶店の選択にしても、ある意味自分らしくなかったな。ミッフィーミュージアムの訪問にしても、ミッフィーちゃん大好き女子数人とでも訪れ、彼女たちの嬌声を聞いて喜ぶのは、まだ自分らしいような気がするし、楽しそうだ。

映画鑑賞においても「ほのぼの系」より「人の毒の本性」に迫るものが好みの人間の「ひとり旅」の訪問地としては優先順位の高くないスポットというのが偽らざる自己評価であった。アムステルダムに戻ったら「ゴッホ美術館」を訪れようと考えていたが、この日の「閉め」には相応しくないような気分だった。「ミッフィーちゃん」と「ゴッホ」との相性が合うとは思えなかったのだ。

心は次の訪問地、初めてのイギリス、コッツウォルズ地方に飛びつつあった。

「ゴッホ美術館」はアムステルダム滞在の最後の日、明日にとっておこうと決めた。朝のうちに訪ねようか、あるいは閉館時間を考慮して訪れようか、この程度の心の迷いは心地よい。他に訪れるところはあったかな?

そして、アムステルダム滞在の最終日、「人」ではないが、思いがけなく、僕に相応しい「出会い」が待っていた。

・・・続く

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