解くべき問題を再定義するためのひとつの方法
前回のnoteの中で、問題定義の重要性そ問題再提議の具体例をいくつか紹介しました。なるほど、問題を定義し直す事(リフレーミング)でその解決方法の幅が拡がって面白いアイディアが出てくる可能性があると言うことろまではわかったけれど、具体的にはどうすればよいのでしょうか?
問題を大きくすれば良いと言われたって大きくさせかたには様々な方法があるし、どの程度の大きさにすれば良いんでしょうか。そもそも大抵のアイディアは社会を良くするとか、人々を幸せにするとか、そういったゴールに繋がって居るわけですが、どうすれば「社会を良くすることが出来るか?」なんて問題に正面から取り組んでも正直どこから手を付けて良いのかわかりません。問題が大きすぎるので、もう少し分解してやる必要がありそうです。
問題を再定義するための方法は多くあるので、あくまでもひとつの方法としての紹介ですが、Richard Buchanan氏の論文で定義されたOrders of Designに従って考えることは有用なのではないかと思います。。氏の論文については下記のブログ記事でも少し紹介しますので興味がある方は読んで頂ければと思いますが、ここで改めて要約します。
デザインには4つの階層があるとBuchanan氏は主張しています。
1. グラフィックデザイン
2. インダストリアルデザイン
3. インタラクションデザイン
4. 環境デザイン
グラフィックデザインの領域では色やシンボル、タイポグラフィなどで、どうすれば適切に情報が人々に伝わるかを考えます。インダストリアルデザインは物理的なモノのデザインです。インタラクションデザインは製品を通して人々の行動や経験をデザインします。最後の環境デザインは組織のデザインやビジネスのデザインが当てはまるかと思います。
さて、この分類に従って解くべき問題を考えてみると、どうでしょうか。
新しい階段をデザインしなさい、より良い花瓶をデザインしなさい、未来の水筒をデザインしなさいと言われた時に我々が思いつくのは、グラフィックデザインやインダストリアルデザインの階層でのアイディアであることが多いはずです。つまり、これまでにない素敵な見た目の階段や花瓶や水筒を作ってみようと言うのは問題をグラフィックデザインの問題として解釈していると言うことです。そして新しい形の階段や花瓶や水筒、または新しい機能を持った階段や花瓶や水筒を考えようとした場合、我々は問題をインダストリアルデザインの問題であると捉えていると考えることができます。
ではインタラクションデザイン領域における問題定義とは、どのようなものがあるのでしょうか。これこそが「人々が他の階に行くもっと良い方法」や「花を使って生活に彩りを与える方法」や「水の無い場所で長時間に渡って活動する方法」になるわけです。インタラクションデザインは製品を通して人々の行動や経験をデザインするわけですから、デザインしようとしている対象が人々の行動にどう影響を与えるか、どのような経験を実現させたいのかと考えることが、問題を再定義する際のひとつの取っ掛かりになるのではと思います。
実際のプロジェクトでは複数の領域を行ったり来たりしながらプロダクトとしてのクオリティを向上させていく事になります。例えば「人々が他の階に行くもっと良い方法」としてエレベーターのような装置を思いついたとして、それを形にして世の中に出して行くためには、インダストリアルデザイン領域の問題としてエレベーターをデザインした上で、グラフィックデザイン領域の問題として使いやすい操作パネル等を作り込んでいくなど。
もしあなたが何らかの問題を解こうとしているなら、自分が今考えているのはどの領域の問題なのだろうか?他の領域の問題として解くことは出来ないだろうか?などをたまには意識してみるのも良いかも知れません。