ちょっといい暮らし ちょうどいい暮らし Simple Life in Italia 2024
はじめに
生き方が変わると必要なものごとも変わります。他の人からみたらガラクタのようなものが人生の支えになったり、自分自身や家族の成長に伴ってやるべきことややらなくてもいいことが移り変ったり。豊かな暮らしのものさしは人それぞれ。誰かに強いられることではなく、ひとりひとりが選んで決めることです。
イタリアでも日本でもできること。ほんのちょっとだけ工夫したり、なにかを変えてみるだけで、暮らしも食生活も人生もより快適で楽しくなる。そんなきっかけになるかもしれないあれこれをイラストとエッセイでお届けします。
住処と装い
ときどきキャンドルナイト
思い出パーツの活用方法
マグカップとガラスのコップ
生活用品のストック
「ただいま」と家に戻って来た瞬間にほっとする。くつろぎと静かな喜びの場が整っていることは人生の基盤。特別に高価な物や他人尺度の便利グッズは必要なくて、そこで暮らす人間にとって必要なものと大切なものがあればいい。必要最低限の物だけで暮らすミニマリストの生活は潔さがあって素敵ですが、遊び心あふれるものが愛おしくてたまらない私にとっては少し味気なく感じられてしまう。だから「80%ミニマリスト」を名乗ってます。
ひとり暮らしをしている現在の家には、息子達が幼い頃に作った作品と彼らの写真が数点飾ってあります。思い出の品々をどのように保存・保管するかは多くの人にとって少しハードルの高い課題になりがち。私が採用している基準は「日々の暮らしを圧迫しない」というもの。普段使いの生活空間に飾れない物は思い出ボックスとファイルに入れてます。ときどき眺めるだけで笑顔の素になってくれる宝物。市場価値では測れないプライベートジュエリーのコレクションです。
収納スペースや家の壁の様相によって、どれくらい保管できるのか、飾ることができるのかは千差万別。賑やかに棚や壁を飾ることが好きならば、それはそれで思い出の品をしまい込まない良い方法です。個人的にはごちゃごちゃと色味が重なっている人工空間に長居すると、色の情報に酔ってしまうくらい色彩感度が鋭いので、自宅の内装・家具・小物の色味は落ち着くものだけに限定しています。
生活用品のストックに関しては、家の清掃アルバイトをしたときにたくさんのことを学びました。リビングやキッチンをぱっと見きれいにしている人でも、物置には開かずの箱が転がっていたり、何年そこに放置されているかわからない謎の物体が動線を塞いでいたり、食料保存場所には溢れんばかりのパスタの山があったり。そういう場所をいったん片付けても、考え方や暮らし方が変わらない限りまた住人達が、もとのごちゃごちゃ時空間を作り上げてしまうのです。
だから日用品の買い物に関しては原則を決めています。自宅の生活備品は基本的に使い切り。トイレットペーパー・キッチンペーパーは最後のロールがなくなる前にストック場所に収まる2〜4個パックを買います。石けん・化粧品も同様。なくなる直前に同じものをひとつ購入。まとめ買いはしません。安いからと使わない物を山のように買って、それがどこにあるかわからなくなって結局また似たような物を買う。その悪循環から抜け出すと家もスッキリするしムダ遣いもしなくなります。
暮らしのリズムや家族構成によって、生活用品のストック量や種類はそれぞれ。思い出の品々と同様に「日々の暮らしを圧迫しない」という基準にすれば、快適な生活空間での颯爽とした生き方を築くことができます。いきなりすべてを変えようとせずにできることからすぐに実践する。これがポイント。
家族と一緒に暮らしている人はまず自分の私物から見直しと取捨選択することをおすすめします。
サマードレスとショートジャケット
夏の麻ワンピース花アップリケ
簡単に作りやすい夏物の服はちょくちょく自作します。でも型紙からきっちり作ることが苦手。購入したものをアレンジしたり、型紙なしでなんとなくこうかな?というイメージをそのまま形にしてしまいます。自分で使うものだから、細かいことを気にし過ぎないでザクザクと作る過程も楽しい。針仕事をライスワークにしているおかげで裁縫の腕が格段にあがりました。
暮らしの変化に伴って衣服と小物の種類が少々変わっても、もともと持っている好みはあまり大きく変わりません。他人の判断基準に寄せて買った物は早々に手放すことになりがち。今手元にある衣類とコーディネート小物は好みのものだけです。職場へ着ていく服は普段着。仕事着と分ける必要がないのでとっても楽。装いの基本は色味と形状の統一感。柄・色・形がハッキリ主張するものを身につけるときは、他の物をシンプルなデザインにして全体のバランスを整えます。靴下や鞄・アクセサリーもコーディネートして身にまとうことが心地よいので、朝ぼんやりとイメージを描く時間が楽しみのひとつです。だいたいの組み合わせは決まっているのでさほど迷いません。たまには通常のパターンを崩して、持っているものを活かした新しいコーディネートも楽しんでいます。
持ち物が収納場所から溢れないように時々見直して、過剰なものはこまめに手放します。大掛かりな整理整頓は引っ越し以来やっていません。身にまとうものは、素材の痛み具合とコーディネート外になってしまった物が自ずと手放しの時期を語ってくれるので、選択の判断が楽な分野。例え単体で素敵なものでも、今の自分の暮らしで活躍しないものは購入しません。まずは不要なもの・活用しにくいものを家に持ち帰らないと決めることが肥溜めクローゼットを作らない第一歩です。
今年は夏休みに服を作ります。イメージがいくつか湧いているのでとても楽しみ。作りたいものを作りたいときに作りたいように作れる。これって最高の贅沢時間です。
ごはんとおやつ
玄米の炊き込みごはん
なんちゃってちらし寿司
さば缶の米粉シチュー
ひよこ豆と野菜たっぷりカレー
ズッキーニの花の天ぷら
アボカドのお刺身
そぼろ豆腐とルッコラのサラダ
キャベツの千切りサラダ
きゅうりの塩漬け
ひとり暮らしになってから一番楽になったのが食生活。生粋のイタリア人と暮らしているときはパスタやピザを食べる頻度が格段に高くて、自分用に和食や常備惣菜を作ることはあっても、なかなか100%自分好みの食事に振り切ることはできませんでした。気兼ねなく好きなものを好きなだけ食べたいタイミングで作って食べられる贅沢を存分に味わっている日々です。
数年前にふとアルコール&グルテンデトックスを約1ヶ月試してみたら、体質が変わった様子。あれほど大好きだった夏のビールも自分ひとりでは飲まなくなり、パスタを作って食べるのは数ヶ月に一回あるかないか。炭水化物は玄米・豆・じゃがいもなどがメインで野菜と果物たっぷりの食生活になりました。
せっかくイタリアから発信するなら大衆ウケする定番イタリアンメニューを紹介する方が王道なのでしょう。だけど自分が食べないものを嬉々としてイラストエッセイにするなんてできないんですよ。バカ正直すぎる性格に完全降伏してます(笑)。
ベジタリアンでもヴィーガンでもないので肉や魚も時々食べます。普段の食事やおやつによく登場するのは卵。平飼いたまごを同僚の家族から購入しています。畑の肉と呼ばれる大豆食品も手に入れば積極的にメニューに取り入れて、即席レシピをちょくちょく楽しんでいます。イタリアのぼそぼそした豆腐を使ったそぼろ状の味付け豆腐は最近のヒットメニュー。混ぜる具や味付けをちょっと変えるだけでバリエーションが簡単に増やせるので、そぼろ豆腐ブームはしばらく続きそうな予感。
なるべくオーガニック食材やつくり手の顔がわかるものを食べように心がけていますが、友達や家族と外食したり、旅先での食事の機会にはあまりごちゃごちゃと考えません。食べたくないものは注文しませんが、ストイックになりすぎると逆にストレス度合いがあがるので「ちょうどいいこだわり感」程度におさめています。
ローズマリー風味の白湯
ミルクコーヒーあれこれ
はちみつレモンとハイビスカス茶
朝の習慣の白湯。最近はローズマリー風味の白湯がお気に入り。タイム・オリガノ・セージ・ミントなど庭にあるハーブを摘んで白湯に香りをつけることにハマってます。様々な効能うんぬんの前に「あ!この香り好き!」という自分の身体アンテナを信頼できるようになると、自然と必要なものを摂取しているのだな、と体感できます。頭でっかちにならないで感覚を磨く。これは食事だけでなく人生の選択にも使える大事なアンテナです。
カフェイン中毒になっていないか、時々試しています。1週間くらいコーヒーを飲まない暮らしをして、欠乏感や焦燥感を全く感じなければOK。あくまでも自己判断。数値的な根拠などは全く使いません。「〇〇がなかったら困る」という依存対象がないと暮らしのハードルが消えちゃう。これも生き方全般に活用できます。
「〇〇がなかったら困る」というフレーズにあてはまるものがあるかどうか考えてみて、なぜそれがなかったら困るのか深堀りしてみると、自分自身の根底に隠れている「恐いもの」の尻尾が見えてきます。どうしても暇つぶしをしなくちゃいけない時にでも考えてみてください。
職場での朝のおやつ
きな粉と米粉のクラッカー
塩味のパンケーキ
米粉のパンケーキ
ブラックチョコレートのブラウニー
マルメロのココナッツオイル焼き
リコッタ・ヨーグルト・バナナのジェラート
ライスミルクコーヒーのグラニータ
新鮮な生ピーマンをおやつに食べている女の子に出会いました。普段から両親が愛情たっぷりに育てた野菜をおやつとして常食している4歳の子の味覚はきっと磨かれているのでしょう。真似をしてカレーを作る前に生ピーマンを食べてみました。パプリカと呼ばれる赤と黄色のピーマンはサラダにして生食することに慣れていましたが、緑の苦味があるものを火を通さずに食べたことはありませんでした。噛んでびっくり。苦味がほとんどありません。世の中はまだまだ知らないことだらけです。
おやつの時間には甘いもの、という刷り込み洗脳から少しずつ抜け出して市販のお菓子類は全く食べなくなりました。果物や野菜などの甘さに敏感になるにつれて、砂糖を加えた甘さと食材のもつ旨味は別物だと身体が覚えて味覚センサーが細やかになります。ベタッとした甘味が苦手になり身体が欲しなくなります。
はちみつやアガベシロップ、黒糖を使うこともたまにありますが、おやつに塩味のものか素材の甘さを味わうものを選ぶようになってから、家で甘いお菓子を作ることもほぼなくなりました。チーズケーキかチョコレートケーキをほぼ毎週末に作っていた時期もありましたが、今では懐かしい思い出のひとつです。ちょうど息子達の生活基盤が外に広がる時期にお菓子作りから卒業するタイミングがやってきたのも自然な流れなのでしょう。
たまには甘いものでも作ろうかなという気分になったら、そのときは思いきり楽しみます。罪悪感のスパイスなんて必要ありません。
少しずつ変わっていく食生活やおやつのメニューの変化は人生と暮らしの変遷に寄り添っています。あの頃はあんなおやつや料理が好きだったなあ、と懐かしい気分になるのは昔のアルバムを眺めて楽しむ感覚と似ています。
おわりに
生まれつき生真面目でストイックなところがある私が自分ルールをガチガチに決めてしまうと、勝手にストレスを溜めてしまいます。だからほどほどに。ミニマリスト・オーガニック生活も80%くらいできたら上出来。ヒトは人生経験を味わって楽しむためにこの星にやってきました。だったら好きなこと、好きな味をとことん楽しもうよ!って本気で思ってます。
ちょっとルール違反をするのは楽しいし、ちょっと寄り道するのもおもしろい。超絶ストイックな暮らしが楽しいならそれもアリ。
イタリアでシンプルな暮らしを楽しみながら学んだことはたくさんあります。その中でいちばんありがたいレッスンはいい意味での「適当」さ加減。細やかな日本のサービスや技術の素晴らしさはかけがえのない財産ですが、それもこれも個々人の人生が豊かになるためのものであって、苦しみ喘ぐためではないはず。
すべての人がそれぞれの「ちょっといい暮らし ちょうどいい暮らし」を味わいつつ楽しい人生を送ることができますように。酷暑のイタリアの夏の午後に。静かな田舎街から愛を込めて。
2024年7月21日記
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