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低炭水化物ダイエットの仕組みと、やっぱりオススメできない理由

世界でも最も人気のあるダイエット方法の1つである低炭水化物ダイエット。その人気とは裏腹に、仕組みにまで興味を持っている人は少ないように思います。

専門家たちの中でも賛否両論あり、異なる立場を取る人たち同士の議論が止むことのないトピックですが、この記事では私なりの結論・根拠最新科学の世界がまだ答えを教えてくれない疑問点についてお話しします。

低炭水化物ダイエットの仕組み

低炭水化物で生活すると、1週間で2kg体重が落ちるなんてことも平気であります。「ご飯の量減らしてから数ヶ月でで5kg痩せた」みたいな経験がある人も多いのではないでしょうか。この即効性が人気の理由です。

でも、実は私たちの身体は1週間で2kgの脂肪を燃やせるような仕組みになってないんです。

じゃあ何が2kgも減ってるのか?
水分です。

分子の構造を見てみると、体内で1gの糖質は3gの水とくっついています。つまり、糖質が1g減ることで合計4g減るということ(糖質1g+水分3g)。

私たち人間が水分を摂らずに生きていけるのは3日ほどと聞いたことがある人もいるかもしれませんが、身体から水分が抜けるというのはすごく大きなストレスなんです。

この脱水のストレスに加えて、低炭水化物ダイエットが長引くと、人の身体は糖質の供給がなくても生きていけるように、代謝のシステムを変えてサバイバルモードに切り替えなければならなくなります。

これが「脂質が使える身体になる(ケトーシス)」状態ではあるのですが、このシステムの問題点は、今度は身体が糖質を取り込むのが苦手になること。

再び炭水化物を摂った時には、身体の方は糖質を処理できない状態なので血糖値爆上がり(スパイク)を起こします。

この血糖値スパイクは2型糖尿病の原因の1つ。インスリンという血糖値をコントールするホルモンの働きに異常をきたし、身体がもっと脂肪を蓄えやすくなるなどの長期的な影響があります。

このように血糖値やインスリンのことを考慮しなければならないので、元の食事に戻していく過程は難しく、極端な食事に走れば走るほど細心の注意が必要になります。

ボディビルの選手だって、大会の後に戻し方を間違えて、身体が変化についていけず体調を崩し、病院にかかることになるような例もあるんです。

仕組みを理解して、元の食事にスムーズに戻る過程までプランにいれてからやりはじめることが本当に本当に大切。

理想と現実

ここまでは、身体のシステムの切り替えが予定通り行われた場合の話です。現実はもう少し厳しい。

「5日くらい炭水化物抜けば、身体の代謝システムが変わって脂肪を燃やしやすい身体になるんだよ」と簡単に言いますが、人間の体の仕組みを見てみると、そんなに思い通りにいくものではないことが分かります。

結論から言ってしまうと、脂肪をエネルギーとして使うのは効率が悪すぎるんです。身体にとっては最後の砦。身体の中で起こっている化学反応をみると、脂肪を使うには炭水化物の13倍もの酸素が必要になります。(厳密に言うと、この化学反応よりももう少し複雑なのですが)

13倍の酸素なんて、息を沢山すれば取り込める量じゃないですよね。

これを簡単に「できるっしょ!」って言うのは、現実的ではありません。マックでバイトしてる学生が、巨大なエンジンで燃費の悪いスポーツカー買ってきて「もっとシフト入れて稼げば払えるっしょ!」と言ってるのと同じくらい現実的じゃない。

実際は、炭水化物が摂れない時は脂肪よりももっと効率の良い方法を使うことになります。

それが、筋肉を削ること。

筋肉を削って他のところで使えるものにすることをカタボリズムと言います。必要な物が手に入らないので、あるものを使う。身体にとっては理にかなっている現象です。

筋肉を削れば、身体にとっては全体的な代謝も減るので好都合。エネルギーをやたら使う筋肉が減るので燃やさなくて済むんです。そして、代謝が減れば脂肪を蓄えやすい身体になっていきます。

この状態で低炭水化物を続けたまま運動をしても、カタボリズムは進む一方で、筋肉を削りながら筋肉をつけようとしている状態になります。これって1歩進んで1歩下がってますよね。効率的な方法とは言えません。

続かない

ここまでが、「炭水化物ダイエットの仕組みを見てみると、あまりオススメできないよねー」という話だったわけですが、そもそも今の食文化に合ってないという根本的な問題もあります。

炭水化物を省く生活を始めるのは多くの人がやりますね。でも、続かない。そこが問題。友人とご飯に行っては、ご飯も麺も食べられないから〜なんて言ってられないですし。

アレルギーやベジタリアンみたいに周囲の理解が浸透していればまた別の話ですが、現段階では低炭水化物ダイエットが同様に扱われている印象はありません。

私もやったことはありますが、しっかりできたのは2ヶ月くらいでした。体重は落ちましたけど、日々の生活が充実して幸せなものだったかと言うと...。あやしいですね。

何年もやっている人はたまに見かけますが、圧倒的に少数派ですよね。

100年前の人たち、炭水化物食べてたけど肥満じゃなかった

低炭水化物ダイエットが身体に与える影響について、科学的根拠は次々と出ています。体重が減るとか、死亡リスクが減るとか増えるとか。

でも一旦そういう最新科学は置いといて、あなたに考えて欲しいことがあります。

なんで今さら炭水化物が悪者になったの?

食文化についてみてみます。
どの文化をとってみても、伝統的な食事の主食は炭水化物です。私たち人間は昔から炭水化物をたくさん摂ってきた。これまで何百年も何千年も、ずーっと歴史を遡って見てみても、炭水化物を食べて生きてきた。

肥満が問題になり始めたのはここ数十年のことです。なのになんでここにきていきなり炭水化物が悪者扱いされているか、考えてみたことはあるでしょうか。

また、人間の身体のつくりについて考えてみても、理にかなわない点があります。

人の唾液には炭水化物を消化する酵素が入っています。物が口に入ったその瞬間から、血中に糖質を取り込めるようにです。それってそれだけ糖質が身体に必要だからではないでしょうか。

また、脳のエネルギー源は糖質です。筋肉の主なエネルギー源も糖質です。これだけ人間の身体は糖質に頼るように何万年もかけて進化してきたのに、なんでメディアは最近になって「低炭水化物が一番効果的な方法だ!」みたいな扱いをする必要があるのでしょうか。

私は、このトピックが分かりやすさ、伝わりやすさに偏った発信をされているように思っています。

科学的根拠がどうのこうのと言う前に、この疑問点が納得できない限り人に低炭水化物ダイエットをオススメすることはできません。効果が証明されていても、必要性があるかどうか、納得できない。

炭水化物は悪くない

炭水化物は悪者扱いされやすいですが、これまで話してきたように、私たちの身体には必須です。

炭水化物が身体に悪影響を与えているのは「質の悪い」ものを「必要以上に」食べるから。それから、100年前の生活と比べて運動する機会が減ったとか、脂質の多い食事をすることが増えたとか、ストレスの多い生活になったとか、低炭水化物ダイエットに手を出す前に他に改善すべき生活習慣がたくさんあります。

炭水化物さえ減らせば痩せる!という安直なメッセージばかりが広がってしまい、もっと先にやるべき大事なことを飛ばして低炭水化物ダイエットに走る人は多いです。

多すぎも少なすぎも同じくらい悪影響。バランスを大事に長期間続けられる生活を選択していきたいですね。

この記事が根本的な部分である仕組みや必要性について考えるきっかけになりますように。


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