見出し画像

あまり知られていない「30日チャレンジ」の裏事情

「30日集中してやって結果を出そう!」
「スタートダッシュを切ろう!」
という目的できっかけ作りをするのが30日チャレンジ。

フィットネス指導者やジムが好んで使い、特に新年と夏前に広告などで頻出します。

似たようなもので、2ヶ月コミットという言い回しがあったり、海外でも8-week challengeみたいなものが普及しています。

一見、きっかけ作りにはピッタリのこの方法。実は、マーケティングの教科書通りの「客引き術」なだけで、受ける側に関しては矛盾だらけの方法です。フィットネスやダイエットに関してに限定しますが、私はオススメしていません。

今回の記事では、30日チャレンジに興味を持ったことがある人や、やろうか検討している人に向けて、やる時に事前に知っていて欲しいことについてまとめます。


◆その後、どうなる?

何か新しいことを始める時、モチベーションが1番高いのは『新しいことを始める直前』もしくは『始めた1日目』です。

最初の「よっしゃ!やるぞ!」よりもモチベーションが高くなることはほとんど無くて、一度飛び出したら後は下がるだけ。その下がり具合を調節できないと、ジェットコースターのように急降下してしまいます。

理想は、パラグライダーのようなイメージでゆっくり下がっていって、たまに上昇気流に乗りながら高度を保つイメージ。でも実際には、飛び出す勢いだけ良くて、あとは羽根もパラシュートもなく墜落していく人が続出します。私はこれをスカイダイビング方式と呼んでいます。

つまり、新しいことを始めた時に大事なのは、最初にどれだけ高いところから飛ぶかよりも、どれだけ長く飛び続けられるかなんです。

30日チャレンジの多くはスカイダイビング方式で、飛び出す勇気だけ煽ってお祭り騒ぎするのに、飛び出した後は知らんぷりしています。飛び出したのを見届けたら、次のお客さんへ。

でも、私たちが1番必要としている部分って「どうやったら長く飛び続けられるか?」ですよね。その30日だけのため、新年の数週間だけのため、夏だけのために生きてる訳じゃないですもんね。

「早く結果を出したい!」という短期的な欲に突っ込んできて、1番助けてほしいところで見放してしまう。これが30日チャレンジの構造の問題点です。


◆科学的根拠の裏事情

「マーケティングの教科書通り」と言ったって、根も葉も無いこと言ってるわけではありません。30日で結果が出るのは、科学的に証明されている事実です。でもね、その根拠自体に穴があることはあまり知られていないんです。

フィットネスの研究の多くは、横断研究(クロスセクショナルリサーチ)と言って、1日〜16週間の短期間で行われることが多いです。だから、30日で結果を証明する研究がたくさんあるんです。

これには、研究期間のお財布事情が関連しています。研究開始から結果が出るまでの時間がかかればかかるほど、その過程での労力が増え、資金が増え、成果が得られるようになるまで時間がかかるから。短期間で結果が出る研究の方が、研究者の成果も上げやすいし、研究所としても成果を証明しやすい。

こうして積み重なった研究を根拠に「数週間やると結果が出る!」というフレーズが使われるようになるわけ。なので、科学的エビデンスのある方法ではあるんです。デタラメ言ってるわけじゃない。結果は出る。短期的に。

でも私たちの人生って、何十年も続くものだから、その数週間だけ変わったところで、その後元に戻ってしまえば意味がないじゃないですか。

短期的な変化に着目した結果ももちろん大切だけど、何十年も続けた後の結果や、続けられる方法に着目することも同じくらい大切。

でも、なかなかそこまで持久力のある研究者や研究機関はなく、『即効性』が大好きな世間の需要に応える方が優先順位も高いので、なかなか増えません。


◆客引き文句

きっかけ作りにはピッタリと言いましたが、実は、30日チャレンジは受ける側だけでなく、ジムやサービスにとってもをサービスを売るための良いきっかけなんです。

例えば

最初の30日は割引価格でお試しが出来て、その後、1年契約を結ぶきっかけを作る

今契約したら、最初の30日は割引特典がある

最初の30日で厳しい運動・食事プランを提供して結果を出すけど、やめた後にリバウンドしたら、戻ってきた人には割引付きでサービスを再提供する

などなど

30日チャレンジでの成果報告はたくさん上がりますが、「あれをきっかけに1年後の今でも続いてます!」みたいな報告を見ることは稀ですね。


◆いいサービスの見分け方

もちろん、30日チャレンジの全てがダメなサービスというわけではありません。本当に消費者のことを考えて、消費者のためにサービスを提供してくれている人たちもいます。

私が言いたいのは、その中には、いい顔して人のコンプレックスにつけ込んで、会社の利益を優先させるようなサービスも混ざっていること。そういうサービスも莫大な成功を収めたりしているのが、残念ながらフィットネス業界の現状です。

消費者の長期的な利益を優先して正しいことを言っていると、今の市場では大きく成長することが難しいです。「よく寝て、よく食べて、よく動きましょう。」そんな”当たり前”のメッセージに振り向く人の方が少数派だからです。

どうしても「16時間ファスティングして即効で痩せる!」みたいなメッセージの方が遠くに飛んでしまう。この世の中のおかしなところです。

かといって、消費者にとって良いサービスを見分けるのは至難の技。流行っている、流行っていないに限らず、「自分にとって利益があるサービスなのか」に目を向けてサービスを選んでいかなければいけません。

なので、1つだけ1番大事なところをチェックしましょう。これでほとんどをフィルターできます。

30日チャレンジをやる前に探すべき情報は、ずばり

その30日が終わった後にも、長期的に続けるためのサポートがあるか?

です。

次に30日チャレンジを目にした時に、この記事のことを思い出して「あれ、ちょっと待ってよ」と一旦止まって、広告に書かれていない情報を探る視野が育っていますように。


※他のメディアもこちらからご覧ください
Twitter: https://twitter.com/mkkoMIX
Instagram: https://www.instagram.com/mikikokusuda_positivity/
Website: https://www.personaltrainer-mikiko.com
アンバサダー: https://www.biodigital.com/

すべての記事は無料ですが、もし「これ気に入ったよ!」という記事がありましたら、投げ銭してサポートいただけると嬉しいです。私がカフェで記事を書く時に、スモールじゃなくて少し贅沢にミディアムのラテを頼むことができるようになります。