見出し画像

最新科学の正しい使い方〜男女別フィットネスのすゝめ〜

『科学的に証明された脂肪燃焼エクササイズ』って聞くとなんだか信憑性がある印象を受けますよね。でも、元になってる科学研究そのものがあなたには全然関係ない可能性があることを知ってましたか?

YouTubeやテレビで見ていても今の流行のエクササイズを紹介される時によく使われる「科学」「効果」「証明」「〇〇大学監修」といった言葉たち...。

私も自分の体重が思い通りにコントロールできなくてネット情報を漁っていた時に、こういう謳い文句を追って1番良さそうなものを探っていました。このリサーチ方法が沼で足踏みをするような行動だったとも知らずに...。

今回の記事は、研究室と現場でフィットネスと向き合った経験のある私から、普段話題にならない『科学との正しい向き合い方』についてまとめます。


◆その『最新科学』の被験者を考える

「この研究、全然私と関係ないじゃん!」
自分の摂食障害や体重コントロールに役立つようにエクササイズ科学の勉強を始めた私がよくぶち当たっていた壁です。

健康増進に関する研究がスポーツ科学をベースに進んだこともあり、現在この世の中に出回っているフィットネス関連の知識の多くは健康な成人男性を対象にした研究によって明らかになったものです。女性を対象にした研究が広まり始めたのはここ10年ほどの話。

20代の健康な黒人男子大学生を対象に分かった脂肪燃焼の結果が、20代の純血日本人の私にどれほど当てはまるのか。

また、これが40代純血日本人の二児の母とかだったら尚更ですね。どれほど自分に参考になる研究結果なんだろうって考えたことはありますか?

研究で分かったことが実生活で効かないことがたくさんある。『最新科学』と『現場』の間には大きな隙間があります。現場で働くようになってこの隙間は明確になっていくばかり。

また、人種によって食べ物への身体反応が違うという話も現場であがります。

先祖代々脂のたっぷり乗ったトナカイの肉を食べてきた民族と、米を主食として低脂質の食事をしてきた民族とで、ミトコンドリアの発達の仕方が微妙に異なるとか。
同じ野菜やお肉でも、土地によって土に含まれる栄養素が微妙に異なるので身体の反応も異なるとか。

まだ研究で明らかになってることは少ないですが、現場で教えている人たちの間であがる話です。

「被験者は誰なの?」
「その研究は私の身体にどれくらい当てはまる?」

最新科学を鵜呑みにする前に、一度立ち止まって考えてみることに害はないはずです。


◆性差を活かした方法

女性対象の研究が進むにつれて、ホルモンの値も骨格も体組成も全く異なる成人女性には男性とは異なるスポーツの練習方法やフィットネスとの向き合い方があることが少しずつ分かってきました。

間違った型をジグソーパズルに押し込んでも壊れるだけ。現に、スポーツの世界では生理中に膝の靭帯ACLを切る女性選手が多発しているために、生理周期に合わせた練習メニューが組まれたりしています。

スポーツ科学と比べてまだ遅れの見られるフィットネス科学ですが、いくつか面白い発見があるので紹介します。

◇女性を対象とした研究から分かっていること①

よく話題に上がる運動をした後は身体が燃焼モードになって代謝が高い状態が続く反応

でもこの燃焼モード、同じエクササイズをしても男性の身体と女性の身体では反応が異なります。男性だと21時間ほど続くのに対して女性は3時間ほどしか続かないという発見がされ始めているんです。

この差を利用すれば男性には「朝イチでガツンと運動して丸一日燃焼モードにする」という方針を、女性には「こまめに立ち上がる回数増やしたり運動の回数を増やす」という方針を定めることができますよね。

◇女性を対象とした研究から分かっていること②

ホルモンに着目した研究では、ライフステージによってフィットネスとの向き合い方を変える必要があることが提唱され始めています。

生理が始まる思春期
成熟期を迎える20〜30代
生理周期内の28日間
妊娠初期・中期・後期
閉経に向けて準備が始まる40〜50代
閉経後の60代〜

ホルモンの値の移り変わりは女性特有で、40歳を超えてお腹にお肉が乗るようになったとか妊娠してから身体が変わったとか、年齢またはライフステージによって自分の身体が別人のように感じる人もいるかもしれません。

生理周期中の28日間だけでも身体の変化を感じる人も多いと思います。

このホルモンサイクルに合わせて運動の種類や強度を変えることで、ストレスをかけることなく運動の効果を得やすくなると言われています。

ということは、30日腹筋チャレンジみたいに同じ運動を同じペースでやり続けるのはあまり効率的でない可能性があるということ。男女でフィットネスの見方を変えると、目標の立て方も変わってきますね。


◆今日の正解は10年後の間違い

最新科学は常に変わります。

卵の例を見てみてください。
ロッキーが流行った頃は1日10個とか食べる人がいて、それから「コレステロールが高くなるから1日1個まで。卵白を食べるように。」と言われるようになり、今は循環器系疾患のリスクの水準が変わったため「1日2〜3個で全卵を食べる方がいい」と言われてます。

でもこの40年で私たち人間の身体的構造も卵も変わってないですよね。

毎日のように新発見があり、常識が覆されていく。常に常識に疑問を抱き、覆すための目を鍛えている科学者も多いです。

変わりゆく最新科学に振り回されていたら困惑する一方。科学をヒントとして使い、自分に当てはまるかどうかを知るための方針として使うようにしましょう。

フィットネス分野において、科学は『参考書』であって『答え』ではない。

これを頭の隅に置いておくだけで、ずっと冷静に情報収集を進めることができるようになります。

フィットネス情報を追っかけ回しては迷子になってた私。こんなシンプルで一見当たり前なことが見えてなかった...!


◆まとめ

みんながやってるエクササイズで結果が出ないからって落ち込んだり自分を責めないでください。自分の身体に合ってないだけかもしれません。

メッセージを遠くに飛ばすために「成功してるビジネスマンは朝運動してる!」とか「脂肪燃焼ならHIIT!」と一般化してインパクトのあるような発信をすることはよくありますし、むしろ書き手側が意識してやっていることです。

誰もが発信することができる時代。科学研究に関わったことのない人や論文を読んだことがない人ですら、結果だけ取ってきて『科学的根拠のある方法!』と発信することができてしまいます。

科学でどこまで分かっていてどこから分かっていないことなのか、情報発信者が明確に理解・表現する責任があることは確かです。

でも残念ながらそういう発信者ばかりではないので、受け取る側も

誰を元にした研究?
誰が得する情報?
私にはどこまで当てはまる?
私の身体で実際に試してみて反応が良かったら続けようかな

と考えながら新しい知識を取り込んでいくのが、正しい科学との向き合い方であり、自分の身を守れる唯一の方法だと思います。

過去の私みたいにやる気があるがゆえに沼にはまっていく一方の人が、この記事をきっかけに情報リテラシーをつけて、一歩下がって最新科学と向き合えるようになってくれたら嬉しいなあ。赤道の向こう側からパワー送りますビビビ。


※他のメディアもこちらからご覧ください
Twitter: https://twitter.com/mkkoMIX
Instagram: https://www.instagram.com/mikikokusuda_positivity/
ウェブサイト: https://www.personaltrainer-mikiko.com
アンバサダー:https://www.biodigital.com/



すべての記事は無料ですが、もし「これ気に入ったよ!」という記事がありましたら、投げ銭してサポートいただけると嬉しいです。私がカフェで記事を書く時に、スモールじゃなくて少し贅沢にミディアムのラテを頼むことができるようになります。