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臨書(っぽいこと)をデジタルでやってみる

「テクノロジーが芸術のためにできることは何か」をテーマに、デジタルで書道を楽しむにはどのような方法があるのか、実験してみることにした。

まずは、ペンタブレットを使った臨書(の練習)に挑戦してみることにした。

臨書とは、昔の名人の書をまねて書くこと。何年もかけて自分のものにする高度な練習だ。デジタルでできるのは臨書のまねごとに過ぎないけれど、文字の美しさを感じ、そのエッセンスを学ぶことは十分できる。ずっと簡単にできる。それは書くことの楽しさを知ってもらうためにすごく大事なことだと思っている。

臨書をデジタルでやってみる

ペンタブレットとArtRageというペイントソフトで臨書(っぽいこと)に挑戦してみた。実際にやってみたら、デジタルだから得られる安心感とか、拡張できる楽しさとか、書くこととどう向き合うかという視点での発見がいっぱいあった。発見についていろいろ書きたいけれど、長すぎるのでまたの機会に。この実験と研究はこれからも続けます。

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作業環境
OS:Windows10
使用ペンタブレット:Wacom Intuos Small
使用ソフト:ArtRage Lite
その他ツール:Photoshop CC

1.ペン、紙を設定する
ペンはArtRageにて配布されている「Sumi-e Presets」を使用。紙は好みのもの。

2.手本画像を表示する
トレース機能を使い、手本にする作品画像を読み込む。今回は、東京国立博物館の画像ライブラリーから藤原行成『白氏詩巻』を使用。国宝で練習ができるなんて夢のよう!

3.字を書いていく
ここでは初級の練習として手本をトレースして書いてみる。慣れてきたら、手本を横に表示させ、写さずに書くなど応用を。

4.サインして完成
作品が完成したらサインを入れて完成!別レイヤーで大きく書き、後からサイズ調整をすると配置や大きさを整えやすい。

デジタルで楽しみ方を拡張する

臨書の楽しみは、字の形を学ぶことだけではなく、作品の背景や作者の気持ちを想像して表現してみることにもある。ここでは、原文に想像を膨らませ、日が昇る手前の明るくなる空をイメージして背景に絵を取り入れた。絵は、プログラマーの丸岡勇夫さんによるもの。

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仮名もやってみた


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同じ要領で仮名もやってみた。
「奥山に紅葉ふみ分け鳴く鹿の 声きくときぞ秋は悲しき」(猿丸大夫)
お手本は、竹田悦堂『かな書道の学び方―百人一首帖』。

デジタルで仮名はかなり難しい。
板タブで書いたからかもしれないが、仮名の美しさである連綿が書きにくい。
練習中の仮名なので、余計に難しい。そんな私でさえ難しいということは、汎用性はかなり低そうだ。
仮名には別のテクノロジーの可能性を探すことにしよう。

液タブでやるとしても、32インチくらい大きいので書きたい。(初めて32インチの可能性を個人的には見出した。)
仮名の場合は一筆が長いのと、手を固定して書くので、小さい板では腕の動きが入りきらない。
さらに全体が見渡しにくい。仮名は「散らし」によってデザインされているが、それは俯瞰でないと書きにくい。
拡大すると全体が捉えにくいし、縮小すると書けないし、パーツごとに書くと連綿が途切れ、大きさを合わせようとすれば不自然になる。
あとこれはまだうまく言語化できていないが、線質の強弱をつけるときの力のかけ方がデジタルとアナログだと真逆で、仮名の方が顕著にこのコントロールが必要になる。それが頭を混乱させて、うたの美しさへ思いを馳せることを邪魔してくる。

よかったのは、写真と合わせたことで、音と温度が伝わってくるという感想をもらえたことかな。
かたちをなぞるペン字と思ってやるならいいかもしれない。

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