次男は8歳からゴルフを始めた。
親が勧めたわけではないが、祖父がゴルフを嗜むのを見て「やってみたい」と言ったのが発端だった。

親が言うのもなんだが、次男は運動神経が良い。
特に球技は、野球・サッカー・バレーボール・卓球、何をやらせても、すぐにコツをつかみ、上達するのも早い。持って生まれた動体視力の良さと、肩の強さが、球技向きなのだと思っている。

しかしゴルフは、生来の運動神経や、ちょっとしたコツだけで上達するスポーツではない。身体の特性や分析力、個人競技ゆえの精神力の強さが大きく影響する。

ゴルフ歴5年、プロコーチを付け、ほぼ毎日練習に行き、タイや日本のジュニアトーナメントにも幾度となく出場してきたが、なかなか結果が残せない日々が続く。

年齢の割に小柄な次男は、特にタイでは、同じ組の選手たちと比べ、頭ひとつ以上小さい。体格の差が飛距離の差を生み、打数が増える。

飛距離のマイナスをカバーするのに、アプローチやパターを伸ばす工夫をしてきたが、それは皆も考えること。当然、他の選手もアプローチ・パター共に上手い。

そんな試合を続けてきた次男に、私はいつも
「スコアは気にする必要ない。身体が大きくなれば、もっと飛ぶようになる。経験を積んで学んで、自分が成長していると思えれば、それで十分」と言ってきた。

背景には
「親の期待によってプレッシャーを感じてほしくない」
「楽しんでいるゴルフを、負けることで嫌いにならないように」
「人と自分を比較するより、自分自身の成長を重視してほしい」
「勝敗を気にしすぎて、自分らしいプレーができない状況を避けたい」
という思いがあった。

こと、次男は日本の学校で、他との比較による劣等感を経験してきた。
そういう理由もあって、私は彼を、競争や他との比較という視点から遠ざけてきた。その甲斐あってか、次男は超ポジティブになった。

スコアがボロボロでも
「今日は良くなかったけど、でも良い経験ができた。このコース、次はもっと良いスコアで回れる!」「負けたけど、友達ができたし楽しかった!」と笑顔でホールアウトしてくる。

次男から、本気でプロになりたいというほどの熱は感じない。しかし、楽しく遊びでやれば良い、というレベルの注力度でもない。これは親の都合だが、私は彼の送迎やフォローに相当の時間を費やしている。道具しかり、コーチ代やラウンドフィーも、小さな金額ではない。「投資」だなんて考えはないが、贅沢を言えば、親としては何かの手ごたえが欲しいというのが、正直な気持ちだった。

今回のトーナメントは、次男1人が圧倒的にビリだった。スコアも歴然の差で、親としても流石に悔しい思いが募るが、本人は、いつも通り。私は「どうして悔しくないのか」と苛立ちに近い気持ちが沸いた。

今年14歳になる次男、これを機に自分が本気で取り組むことへの「執着」を学んでほしいと思った。親として私が思うことを、素直に全て次男に話した。その執着には、更なる成長の源泉があると思っているから。

次男は「勝てるなら勝ちたい。負けるのは悔しい。でも、僕はみんなより小さいし、飛ばないし、仕方ないかなとも思ってる」

そこだ。「仕方ない」という発言は、自身で負けの逃げ道を作っていることに他ならない。極論だが、身体が小さいことが絶対的に不利なのであれば、プロゴルファーは全員体格の良い人たちばかりなのか?いや、そうではない。

次男のこの思考は、私にも原因があると思う。期待(=プレッシャー)を背負わせないように接してきたことが、次男の結果への執着心を育むことの足枷となっていたと思う。「応援している」気持ちは伝えても「期待している」気持ちは(もちろん溢れるほどあるが)悟られないようにしていた。

「競争で他に勝つ」
「親の期待に応える」
この2つの要素は、塩梅が非常に難しい。子供の性格にもよるし、月齢によっても、その意識をどれだけ持たせるか、匙加減の妙が求められる---そう思っていた。

しかし、これらの要素が必要なのは、子どもが「成長する」ためであって、本人のため以外に理由はない。外野から意識させるものではなく、本人が目標に向かって努力する過程で、自ずと視野に入ってきて、「努力」の背中を押すものではないだろうか?

このように考えると、親に必要な役割は「競争の意識付け」や「期待のコントロール」ではなく、本人の「目標への執着」を高めることだ。

もっと大局を見て、本人がどうしたいのか、どうなりたいのか、を明確化するための対話をしよう。

その気持ちを忘れないように、定期的に対話を続けて、ゴルフだけでなく、彼が成し得たいこと全てを、全力で応援しよう。


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