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Margo-物語と糸- #12 |銀河鉄道の夜を染めて起きたこと

12月になりましたね。12月が苦手です。
今年もあと1ヶ月を切ったと思うと、気持ちが焦ってブルーになります。
「自分が抱えてる課題の“あれ”も“これ”も、今年中に全部は達成できないだろう……」
と絶望の輪郭が濃くなってくる。
そして、あれやこれやの全部を力一杯遠くにぶん投げて、いったん布団に潜り込んでしまいたい気持ちになります。 
(いえ、嘘です。最後まで諦めず頑張ります。)

 そんななか、Margoは勤勉な相方がいてくれるおかげで、順調に進んでいます。11月の販売も無事に終わりました。
物語をテーマにした手染め糸のブランドを立ち上げたことは、わたしにとって今年の大きな事件ではあるのですが
 実はそのせいで自分に起きた出来事のほうが、さらに大事件だったかもしれません。

何かというと、それは宮澤賢治に関することです。

ひとつ目の物語を『銀河鉄道の夜』にしたために、わたしは思ってもみなかったギフトをたくさん手にすることになりました。


まだ知らなかった賢治を手渡される
 まず、当たり前ですが、宮澤賢治が改めて大好きになりました。
サブテキストになるような本もいろいろ読んで、どんどん賢治に興味がわきます。

 それから次が面白いのですが、同じように『賢治が大好き』という方が、わたしの前に次々と現れるのです。
 初めて会う人はもちろん、以前から友人だった人や、かれこれ10年は一緒に仕事してる人が「実はわたし賢治が好きで……」とそっと告白してくれるのです。すごい。
 そしてわたしはそんな人たちから、自分が知らなかった賢治の世界を次々教えてもらうことになりました。

 かつてダンサーとして世界を飛び回っていた友人のケイさんからは
『春と修羅』に収められた「原体剣舞連」(はらたいけんばいれん)という詩を教えてもらいました。
(新潮文庫の宮澤賢治詩集で読むことができます)

https://amzn.to/3lDvqtK

この詩は合唱曲になったり、舞台になったりしていて、ケイさんも昔この詩を題材にした舞台に立ったそうです。

 「原体剣舞連」は、原体村(現在は江差市内)の民俗芸能である剣舞をする少年たちの集まりのこと。神と宇宙と森羅万象のいのち、そのもとで剣舞する少年たちとが描かれています。
 とても神秘的で宇宙の広がりもあって自然と人のいのちがきらめいていて、言葉もリズムもうつくしくて。読んでて陶然となります。多くの芸術家を惹きつけてきたのも頷けます。

 ケイさんが踊っていたのはモダンダンスでしたが、ダンスのことを「なにものかを身体に下ろす行為」とおっしゃっていて、それは民俗芸能を舞う原体村の舞手(おどりこ)たちと同じ行為です。
 岩手の農村の少年も、ヨーロッパの舞台で踊る芸術家も、踊るという行為の本質は変わらないのでしょうか。
 そして賢治の詩を読んでいると、自分もまた、少年たちと一緒になにものかが降りてくる原体村のげん月の下に立っている心地になるのです。
 この詩がすっかり身体に入ったら、人間が踊る意味について、演じることについて、ケイさんとまたゆっくり語り合いたいと思っています。


 それにしても賢治の詩は、本当に素晴らしいです。
「永訣の朝」「雨ニモマケズ」といった詩は読んだことがあり感動しましたが、幻想的なものもすごく好きです。
「春と修羅」もいいなあ。最初の「序」もいいなあ。

お気に入りの詩は、なんども読み返しています。
時には声に出して読むことも。
詩を朗読するなんて、ほんと何年ぶりのことでしょうか。
そもそも詩集を買うのも思春期以来です。
これってやっぱり、わたしにとっては大事件。
先日「無人島に1冊持っていくなら何にする」という話になったとき
(いまのわたしは『宮沢賢治詩集』だな……)と思いました。







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