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不撓不屈「死ぬな」生きていれば何とかなる 新潮新書

著者は先天性脊髄分裂症という障害をもって生まれました。両足首が内向きになり、足の裏が地面にピッタリとつかない内反足になっており、排泄のコントロールはできません。尿は腎臓にカテーテルを入れて体外に出していると同時に生まれてからずっとオシメをしています。今までに癌を5回経験しています。生まれてくる時に医師は二週間内で死ぬだろうから名前をつける必要はないと言ったそうです。
しかし1953年生まれの著者は今も元気に生きています。

「こんな私がおのずと身につけてしまった考えがあります。肉体がなければ心もない、ということです。肉体が消滅しても魂は残る、とおっしゃる方がいるかもしれません。けれど肉体が生きていることで、その人の心もそこにあると感じられることは確かです。肉体がないと悩むにも悩めないのです。そのことを本当に当たり前だと認識している人は非常に少ないように思います」
という指摘にはハッとさせられました。
さらに
「人はついつい、心の問題以外に重要なものはないと思ってしまうわけですが、肉体が消滅することのほうが実は重大だと気づくと、自分を左右している心の問題が、いかに思い込みに満ちているのかも見えてきます」
には目から鱗が落ちる想いでした。

アドラーは「器官劣等性」という言葉を使い、身体的なハンディキャップを持つ人はそこから生じるマイナスを何かで補償しようとすると考えています。私が著者から感じるのは不撓不屈の精神です。

著者は排泄の問題を小さい時から常に抱えています。高校入学を機に、親友に思い切ってカミングアウトしたところ、すんなりと受け入れてくれました。
大学進学に際し、母子家庭の著者の家庭に金銭的な余裕はありません。それでもクラス担任の先生が自宅に来て、玄関で土下座して「息子さんを進学させてください」と頼んだのです。

大学卒業後、会計事務所勤務を経て会社設立、その後シティバンク勤務。これまで100社以上の破綻処理にかかわってきました。

「巨額の借金で首が回らない。もう死ぬしかない」という人には着ているシャツをたくし上げて「こんな体でも生きているんだから、あんただって生きてみろよ!」と言うそうです。

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