【前編】思春期の息子への対応は?(精神科医みきぽんの人生相談室#3)

みなさん こんにちは  精神科医のみきぽんです。

本日は40代の女性の方からのご相談です。
どんな内容かみていきましょう。


中学2年生の息子の態度と言動に悩んでいます。
小学生の頃は素直ないい子でかわいかったのですが、中学生になったころから人が変わったように乱暴な口のきき方をするようになり、いままでのような会話が全くできなくなりました。
激しい言葉でののしられることもあります。
そのような時は息子に対する怒りや嫌悪感が生じてしまい、そんな自分が嫌になります。
最近は昔のことを思い出して涙があふれてしまうこともあり、自分の気持ちをコントロールするのが難しく感じます。
どのように対応していけばよいかご助言お願いします。


思春期の息子さんの態度に悩むお母さんのご相談です。
思春期におきる状況には個人差がありますが、多くの場合嵐のように突然やってくるその変貌ぶりに親は驚きうろたえてしまいます。

日々の生活の維持にくわえて、あばれ馬のような子供の対応を毎日していると身も心もすりきれてしまいますね。思春期の子供とのつきあいに疲れ果てたときの処方箋について考えてみましょう。


1 息子さんとの物理的な距離をとる。

2 いらだちや嫌悪感などの自分の感情に罪悪感をもたない。

3 思春期についての理知的な理解をする。

4 自分の心身のケアをする。



【距離をとって心を守る】


攻撃的な言葉 いら立ちの表情  誰にとっても嫌なものですが、とりわけ自身の息子からですと嫌悪の気持ちも倍増ですね。
思春期の子供が親に対して反抗心を抱くことはしばしば話題にのぼりますが、親が子供に嫌悪感をもつことに関してはあまり語られていないように思われます。
しかしながら不快な刺激に対して嫌な気持ちを抱くことは人間として自然なことであります。診察しておりますと子供に嫌悪感を抱くことに対して罪悪感をもつ母親が多くおられ驚くことがあります。
母親はどのような仕打ちにも耐え忍び、息子のことを受容し愛情を持ち続けなければならないものなのでしょうか
母親は親である前にひとりの人間です。
息子であれ、罵倒されれば傷つきますし、攻撃をうければ怒りの気持ちがわいてきて当然です。
不快な存在からは距離をとるのが原則です。できるだけ息子さんから物理的、心理的に距離をとりましょう。
体調や状況が許せば、働きにでるのもよいでしょう。散歩にでかけたり、スポーツをするのもおすすめです。気心の知れたお友達との会食もいいですね。できるだけ家から離れて自宅滞在時間を短くします。ご自分の心が楽になる方法を生活にとりいれてください。

相談のなかには父親のことが触れられておりませんが、ぜひパートナーとも状況を共有して足並みをそろえていきましょう。具体的な解決策がみつからなくても話をするだけでも心が軽くなることがあります。



【思春期と境界線】


思春期は守り育ててきた幼児期、学童期から 自立していきていく大人との中間地点にあたります。親からの見守りから離れて自分でやりたい、自立したいという気持ちが強くなります。その一方で自立への不安もあるため葛藤を抱えながらちゅぶらりんのような状態でいるのが思春期の特徴です。
思春期が二重性の時期といわれるのはそのような理由からです。

相手が二重なのでこちらも二重でのぞむのがいいと思います。親がかかわりをもつ境界線を設定します。境界線をこえないことに関してはかかわりをもちません。原則として放置して見守るようにします。境界線を越えることについては毅然として対応します。
境界線をどのように設定するかは、それぞれの家庭で話し合いをしてあらかじめ決めておくのがよいでしょう。境界線を決めるときは父親、母親、息子さんが一堂に会し家族会議をして決めるのがいいと思います。
おおげさにきこえるかもしれませんがゆらゆらと揺れる思春期対応は、このくらい大仰なほうが効果があります。

例をあげて考えてみましょう。息子さんがスマホのゲームに夢中になってしまうとします。「もうやめなさい」 「わかったよ」 と言いつつやめられないというやりとりはよくあることと思います。
家族会議を開き、スマホの使い方について話し合います。〖自室での使用禁止〗 〖一日○時間までオーケー、それを超えたら没収する〗などのルールを定めます。〖夜九時以降は親に返却する〗など時間設定するのもいいですね。
話し合いで境界ラインが決定したら、文章にしておくことをおすすめします。これも大仰のようですが、揺れる心対策として後々”○○と言ったでしょう!!!”とならないために文書取り交わしは有効な方法です。境界ラインの変更の際も家族会議で決めるのがよいでしょう。この文書は賃貸契約書のようなもので、親も子供も守るものという位置づけにします。

さてここが大切なポイントですが、境界線を決めるときに〖親の都合ではなく息子さんのために決めるという親の気持ち〗をぜひ伝えてください。
「スマホの使い過ぎで、あなたの生活に支障がでることが心配だ」 「あなたの脳の成長に大切な時期だから親としてこのように対処します」 などの言葉を伝えてください。「あなたの脳や将来を守りたい」と伝えてもいいと思います。心の底から伝えてください。その思いは必ず、息子さんの心の奥に届くと思います。



【過ぎ去っていく台風】


思春期は嵐、ゆっくりと進む台風のようなものですね。やってくる強風にあおられているとこの状態が未来永劫続いていくような感覚におそわれてしまうこともあるかもしれません。
ですが強風の破壊力がどれほど甚大でも台風は必ず過ぎ去ります状況は必ず変わっていきます。


それまで心身の健康が保たれることを切に願います。

後編では思春期の子供と親におきてくる心の状態についてみていきましょう。
お読みくださいまして誠にありがとうございました。
















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