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自然栽培という提案

前置きが長くなってしまいましたが、今の農業は土を劣化させ、乾燥地域の砂漠化を加速させています。また、それは杞憂ではなく、過去の歴史(ローマ帝国の滅亡、サハラ北部の砂漠化、中東地方の砂漠化、中国の砂漠化、マヤ文明の滅亡など)がすでに証明しています。

ただし、砂漠化した地域の中にも、植物が育つことが可能な土を残し、細々と農業を営んでいる人もいます。
そのような農業に共通することは、「徹底的に土を護っている」ことです。例えば、地中海の東側での伝統的な農業では、オリーブ等の高木の下で低木のブドウを育て、さらにブドウの下で小麦等の穀物を育て、さらに穀物の下で牧草を育てています。また、そこが斜面の場合は石垣を造り、段々畑になっています。こうすると、植物の密度が上がるので、土が露出せず、土の乾燥を防ぐとことが出来ます。また、植えられている植物に多様性があるので、それぞれの植物がそれぞれの根の深さのところで微生物を呼び寄せ、共生を行っており、土の中の有機物の量が多くなります。また、牧草を食んだ家畜のフンは、そのまま土に残されるので良質な有機物肥料が与えられます、あとは、収穫物の残渣を土に戻してあげれば、ミネラルの循環が行え、農業が持続可能になります。実際に砂漠の中にポツンと自給的農家が存在しているそうです。そこの土を調べると、ローマ帝国以前からの伝統的な方法で1500年以上持続しているとか。

自然栽培は、これに近い考え方です。
良く知られている有機栽培とも違います。
自然栽培の場合は「植物と生態系の本来の力を借りて」作物を栽培する方法になります。その他には明確な定義があるわけではないため、それぞれの流儀がありますが、必要以上に耕さず、農薬も肥料も使わないという共通点があります。
これを単一栽培で実行しようとするとなかなか上手くいかないため、複数の種類の野菜を混ぜて(実際には畝ごとに野菜を変えたり)栽培したり、農薬を使わないので雑草が生えたりします。
そして結果的に、作物の多様性が上がるため土の中の微生物の働きが活発になり土壌中の有機物が増加します。また雑草などが生えているため土が露出せず、表土の流出をほぼ完ぺきに防ぐことが出来ます。そのため、持続可能な農業と言えます。また、植物に多様性があるということは寄ってくる虫にも多様性があるということです。これにより「害虫の異常発生」による被害を軽減することが出来ます。今年(2023年)は、実は各地でカメムシの害や乾燥(暑さ)が農業に打撃を与えました。しかしながら、自然栽培を行っていたところでは、カメムシの害は他の農場に比べて少なく、また土が乾燥しにくいため収穫量への影響も軽減できているようです。

ただし、、、効率の面から考えると恐ろしく非効率で手作業が多く、体が丈夫でないと、とてもでないけれど出来ません。

日本で、化学肥料や化学農薬が一般的に使われるようになったのは、せいぜい50年程度。今の時点では影響は見えにくくても、表土の流出はすでに進んでおり、10aあたり2~3トンの表土が毎年流出しています。このまま100年・200年と続けていけば、ついには表土が流され、その下の栽培に適さない土が姿を現してしまいます。自然栽培は、そこに一石を投じる栽培方法だと私は感じています。
(無農薬・無施肥ではなくても、地中海周辺の伝統的な農業のように空間を階層的に利用したり、土を露出させないようにしたり、化学肥料中心から有機肥料中心に移行したり、そのような農業が、今後は必要になってくると考えています。)

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