京都の劇団、「劇団三毛猫座」って?“聞く舞台“を振り返る、第3回。
劇団三毛猫座の過去公演をご紹介する連載、第3回。
担当は、俳優の宮本結妃です。
今回ご紹介しますのは、2021年3月に公演いたしました朗読公演『くじらの昇る海底』。言葉と音楽を融合させた三毛猫座らしさ溢れる、“聞く舞台“です。
あらすじ
『鯨骨生物群集』という海底で起こる現象から着想を得た本作品は、3つの物語からなるオムニバス形式で展開されます。
各物語は死者と周囲の人間の思惑を題材としており、その間をくじらの言葉と歌によってつないでいます。
また各話のタイトルや人名は数字がモチーフとなっています。人名に用いられている数字は章を得るごとに小さくなっており、これは大きなもの(=鯨)が散逸していく様を表しています。
どんな数字が隠されているのか。是非探してみてくださいね。
1、100へと至る7
シイナ(舞台右)は自身の研究レポートを読み、ムツキ(舞台左)は日記を読む、という形式で物語は進みます。
そして舞台奥からは死者であるイツキの声が響く。過去と現在の時間が一週間の中で交差し、シイナとムツキはそれぞれの思いを語ります。
イツキの再現データである〈モモ〉とその声が重なり、二人の一週間は終わりを迎えます。
2、遠ざかるきみと100秒
死者であるミヨの声(編集された録音音声)と二人の女性の対話。
トウコ(舞台左)の案内でミヨとの対話を試みるナナミ(舞台右)ですが、その思惑とは裏腹に死者の声は彼女の真実を暴こうとします。
もう嘘をつけない死者と嘘をつける生者、冷めた目で両者を見つめるトウコの言葉で物語は幕を閉じます。
3、100になれないきみたちのねむり
お互いに死者であり、複雑な感情を抱え合う双子は、夢の中でだけ話すことができます。レイ(舞台右)とヒトミ(舞台左)のすれ違い思い合う言葉が、夜の夢の中でだけ対話として繋がり、全編で初めて登場人物が向き合います。
全編を通して登場するくじらは海の底で沈み、分解されてゆきます。
くじらの声の響く舞台で3つの死生が関わり合い、くじらの身体が世界に散逸します。
音楽
『くじらの昇る海底』には、タイトルロールの“くじら”が登場します。
鯨は歌と言葉で死者と生者、そして客席をつなぐ役割。
非人間の雰囲気を出すため、衣装に合わせてまつ毛を白くしています。
また、本作では打楽器の音が海底から響きます。
数多くの楽器が言葉の間に鳴っています。効果音のような、bgmのような、そのどちらでもないような美しい音が物語を彩ります。
舞台
新型コロナウィルス感染症対策と演出の観点から、舞台と客席の間にヴェールを吊っています。
照明によってヴェールが様々に反射します。
また、舞台の内部にも2枚のヴェールが吊られています。
あおい照明に照らされると、舞台奥になるほど見えづらくなり本当に海底を覗くかのようです。
小道具・物販
役者それぞれが持つ小道具の台本は各人の手作りです。
美術の佐藤さんに教えていただきながら自分で持つ台本を和綴じしました。
綴じるのに使った糸は人物によって色が異なります。
台本は二段で書かれています。人間のパートと鯨のパートが同時に進行します。タイミングを合わせるのがとても難しい。
好評だった物販では公演台本と栞を販売いたしました。どちらも紙にこだわり、良い手触りです。
栞は三毛猫座ロゴや『くじら』ロゴなど、たくさんの種類を制作いたしました。
配信
本作品は観劇三昧にて配信中です。
ご興味のある方は、是非ご覧ください。
https://v2.kan-geki.com/tvods/detail/186
最後に
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
また、今回ご紹介した『くじらの昇る海底』ですが、今後再演の予定です。過去の公演にお越しくださった方も、まだご覧になったことのない方も、新たにお届けする『くじら』の世界にお越しいただければ幸いです。
今後の予定については三毛猫座SNSや公式HPでお知らせいたします。
次回担当は柴田奈緒さん。どうぞお楽しみにお待ちください。
宮本
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