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大川新古細工#02/不二家のプリンアラモード

春休みの日曜日。七五三の時のスーツを母が出してきた。小学校3年だったろうか。それに着替えさせられた。母もいつもよりはオメカシしていたかもしれない。
出かけたのは、数寄屋橋の角にある不二家だった。
待ち合わせだったらしい。知らない大人が何人かいた。
その中の一人へ、母に無理やりお辞儀をさせられた。僕は少し拗ねた。
でも目の前に見たこともない豪華なプリンアラモードが出てきて、僕は一瞬でそれに夢中になった。
それが僕の不二家・プリンアラモードとの初めての出会いだ。今でも鮮烈にあの味と香りと色彩は憶えている。
どうやらその日は、母の再婚の話だったらしい。
でも僕は、プリンアラモードに夢中で、母の話も何もかも上の空だった。
この再婚話は、まとまらなかった。そしてその帰り道、母にこう聞かれたのを憶えている。
「どうだった?どんな感じだった?」僕はこう応えた。
「うん。美味しかった。また行きたい」
母は、それ以上何も言わなかった。

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無くてもいいような話ばかりなんですが・・知ってると少しはタメになるようなことを綴ってみました