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防火・防災管理者という「お仕事」

防火・防災管理者の資格をとりました。2日間の講習は密度高く、法令も含まれ、講習最後に効果測定(テスト)もあります。これで法令で設置が義務付けられているマンションやビルの防火・防災管理者の任につくことが出来るようになりました。これも国家資格のひとつです。

いま住んでいるマンションは新築分譲で若い人ばかり。管理組合は居住者が自分たちでマンション経営」するという基本的なことを知らない人ばかりです。賃貸の延長で「誰かがやってくれるのだろう」と思っているのかもしれません。

ゆえに防火・防災意識も低く、自衛消防隊も組織出来ていません。まあ、初めて自分の家を買う、それをマンションで、ということですから「マンションの運営は委託会社ではなく居住者自身がやる」という原則を知らないのも無理はありません。ですから、こう考えると分かり易いでしょう。

「一戸建てを買ったら、あなた、どうしますか?」

「お隣さんがあなたの家の管理をやってくれるのですか?」

「周りの人があなたの命と財産を守ってくれるのですか?」

違いますね。

「では、だれがそれを守るのですか?」

そう、自分で全部やりますよね。簡単なことなのです。一戸建てもマンションも、この事象については全く同じです。「管理会社があるじゃないの」、そう言いたくなりますよね。それについては後述します。

命と財産、これはあなたも私も同じ、自分自身で守るのです。国はこの仕組みをこう記しています。

自助(自分) ≧ 共助(ご近所さん) > 公助(行政)

行政は最後に助けてくれる、そういう位置づけです。日々、菅総理や関係閣僚がニュースの中や国会で言っていますから、聞いたことがあるでしょう。


委託管理会社に「業務はお願いできる」が「命と財産」は守ってくれない

マンションは集合住宅ですから、一戸建てより日々の細々とした管理業務はまとめてやることで効率化が図られます。その費用は委託管理費としてマンション管理組合の予算に計上され、管理費名目で各居住者から徴収し、仕事の対価として委託管理会社に支払います。

一戸建てに住むと面倒な近所づきあい、ゴミ出し当番、町内会の係や役員、家の補修から、家の周囲の保全まで、全部自分でやることになります。マンションはそれを管理会社にお金を払って委託することで、利便性と経済性を確保しています。

そうした利便性でマンションには委託管理会社が「業者」として入っています。それが清掃から建物と設備の保全など、日々の細々としたことを一手に引き受けてくれます。そこには対価が発生し、居住者は管理組合を通して委託管理会社に費用をお支払いします。

その費用は概ね一戸当たり、月に13,000円程です。

委託管理会社は「委託」ですから、自分たちが主体的に行動したりはしません。あくまでも管理組合からの依頼で、頼まれた業務だけを行い、対価としてお金を受け取り頼まれた業務を引き受けます。主体は常にマンションの管理組合であり、居住者一人一人です。かかる費用や様々な議案は理事会で決議され、総会で承認されます。


防火・防災管理者は「命と財産」を守る担当者であり、責任者は管理組合理事長

防火・防災管理者を置くことを法律が定めています。このままでは私の住む場所は違法マンションとなり、改善勧告の後に消防庁のHPで公開され違法物件の晒し物になります。

逆に、きちんと管理し、それを行政が認めると優良マンションとして認定され、資産価値を上げることが出来ます。マンションの正面玄関にその証を貼ることが許されますが、その継続は3年ごとのチェックを受けねばなりません。それらの管理も防火・防災管理者が行います。

その防火・防災管理者はマンション管理組合の理事長が全責任を負います。そして理事長が防火・防災管理者を選任します。その実務業務を防火・防災管理者に行わせると法で決められています。つまり「命と財産」を守るマンション内の最高責任者は理事長なのです。従って、不具合が生じると刑事責任を問われます(判例あり)。選任された防火・防災管理者は理事長と同様に被告席に座らされます。

この防火・防災管理者は外部に委託することもできます。その場合、安くても年間30万円以上かかります。これは目に見えないコストです。


被災地ボランティアの経験を、今住む場所で活かす

2011年の東日本大震災で多くの命が奪われ、住むところを失った被災者が私の住む地域にも住んでいます。車のナンバーでそれと分かります。

震災以降、岩手、宮城、福島に通い続けて、被災地ボランティア活動してきた経験から、防火・防災や、発災に備えること、そういった目に見えない日々の備えが命を守ることをこの目で見て、経験して、学んできました。発災後に生き残るために必要不可欠なことを学んできました。

これは、現場を踏んできた人にしか経験できないことです。そして、現場を経験してきたからこそ活かせる知識です。被災地ボランティア活動で得た知識を、自分の住む地域で活かすことが、被災地からの思いを伝えること、そして被災地を忘れないことだと私は思います。

若い人ばかりの住居者の中で、このような経験をしてきた人は稀でしょう。

私のような還暦以上の人生経験豊富な居住者が少ない今のマンション。防火・防災管理者のやり手は、半年経ってもいっこうに現れません。無理もありません。日々の生活のうえに、これだけ煩雑な仕事を上乗せされては生活が成り立たない、そう考えても仕方のないことです。

ならば時間的余裕のある私が、年長者として「ハイ!」と手を上げてやることにしました。被災地での生き残りの知恵も活かせます。

今後は消防署や消防団、地方行政との連携も始まります。責任を伴い、命と財産を守り、防災計画立案からその実施、地域行政との連絡などを一手に引き受けるこの「仕事」は実に多岐にわたることが、講習を受けて分かりました。荷の重い仕事です。


防火・防災管理者は専任かつ永続が望ましい

マンション管理組合で自前で防火・防災管理者を置こうとすると、防火・防災管理者は1年単位では務まらず、現マンションにその「専任者」が住み続ける限り、有資格者としてほぼ固定で任につく必要があります。

毎年ころころと防火・防災管理者が変わったのでは、終始一貫した防火・防災、安全体制を築くことは難しいでしょう。消防署も防火・防災管理者は専任にして継続してほしいと言っています。それはマンションの居住者にとっても都合のよい事です。


安全・安心にはコストがかかる

安全・安心、これをマンション管理組合の「経営」として考えると、それなりの対価を支払うべきお役目なのだなと分かります。

実際、東京23区でこれを外部委託した場合を見積もると、3社から回答ではそれぞれ一戸/月当たりで、112円、132円、191円でした。(2021年4月現在)

その「仕事」の内容を居住者は知りません。「仕事」は多岐にわたることが講習を受けて分かりました。現時点で気付いた「防災管理担当やることリスト」をざっと書き出してみました。

・消防計画などの作成・提出
・定期防火巡回点検(毎月)
・入居者の不具合、不適合事項を理事会に報告
・建物の不具合、不適合事項を理事会に報告
・消防訓練(年1回)
・上記イベントのアジェンダ・議事録・報告書の作成、および保管管理
・消防設備点検報告書のチェック・消防署への提出
・消防署査察立ち合い
・消防署からの指導対応
・防火・防災+大規模テロ対策への啓もう活動
・防火・防災優良認定証の取得⇒優良防火対象物認定証の取得
・出火時の対応
 ⇒防災センターの起動、運営、指示監督、安否確認、初期消火・・・
 ⇒自衛消防隊の出動と指揮
 ⇒消火後の警察・消防の現地検証と事情聴取の立ち合い
・災害発災時の対応
 ⇒帰宅困難者の安否確認と帰宅支援
 ⇒委託管理会社社員の安全確保と帰宅支援
・保育所との連携
・種々の消防署への年次更新の届け出
・防災センターの維持管理
・・・・・
・・・・
・・・

会って、話して、決めて、残す、ひとつひとつ、手間がかかる仕事です。

あなたなら、幾らでこの仕事を引き受けますか?


人の善意に頼るやり方はサステナビリティに欠けます

命の仕事ですから。逆に言えば、それだけの覚悟が必要です。しくじると防火・防災管理者はその選定者であるマンション理事長と二人で法廷の被告人席に座らされます。

そのうえ、上記に記した多岐にわたる仕事を毎月毎月、毎年毎年やることになります。覚悟のいる仕事です。

対価を払うことに異論を唱える人もいるでしょう

ならば「ご自身が立候補して下さい」ということになります。私は喜んでこの任を譲ります。やるからには膨大な作業を覚悟しなければなりません。これは紛れもなく「仕事」です。本業をお持ちの方は片手間では厳しいでしょう。

これを人の善意に頼るのはサステナビリティ(持続可能性)がありません。しかし、お金を払うとなると、ちょっとなあ、と思う人も出てくるでしょう。理事会はこれに上手に対処する必要があります。なぜなら、防火・防災は毎日行う業務であり、マンションが存在する限り欠かすことが出来ない仕事だからです。

「安全はすべてに優先する」

この一文を目にしたことがあるでしょう。「命は全てに優先する」これに異論を唱える人はいないでしょう。居るとすれば、その人の隣には住みたくありません。

ここでひとつのソリューションを私は提案します。対価を受け取る。このことへの対応として、受け取り方として、私が引き受けるのなら次のようにしようと思っています。


対価はマンション管理組合へ「ペイ・フォワード」で返す

私が引き受けるのなら、次の方法を取りたいと思います。

「受け取ったお金はマンション管理組合に還元する」

それが私の考える方法です。

防火・防災に係る日々の経費、備品の購入は対価の中で賄い、残りを防火・防災以外のマンション内外のイベント実施や物品購入の「スポンサー」となって寄付するという考え方です。

これはいま盛んにおこなわれている、クラウドファンディングの考え方と似ています。明確な目的のために出資するクラウドファンディングという仕組みは、見返りを求めない、あるいは見返りの一部を受け取るという方法がとられますが、私の提案なら、「安全・安心」の見返りは全ての組合員にもたらされます。

もとより「管理組合」という考え方は互助システムであり、目的のために薄く費用負担する考え方ですから、このクラウドファンディング的な考え方と矛盾しません。

防火・防災は急に備品や費用が発生します。通常そのようなマンションの経費は理事会で決議し、総会で承認されます。そんな時間のかかる理事会の決済を、いつ起こるか分からない火事や災害は、決議や承認などを待ってはくれません

お金は自分の懐に入れずに、属する社会に還元する。それが私のポリシーです。

これなら、対価を払った住居者も受益者になり、お金を「寄贈」した防火・防災管理者をリスペクトできる。対価を受け取った防火・防災管理者もリスペクトを感じられる。Win&Winの関係です。


初代の防火・防災管理者は持続可能なシステムを残す

いつか私もこのマンションを出ていきます。後任者が「私がやります」と進んで引き受けてもらえる魅力あるサステナビリティ(持続可能)なシステムとして次代へ残すことも、初代の防火・防災管理者を引き受ける人の仕事です。

防火・防災管理者は、マンションという財産と住んでいる住民の命と財産を守る仕事です。怯まず臆せず引き受けてもらえる魅力を、私の代で作っておくことがサスティナビリティに繋がると考えます。


* * *

私は多くを望みません。もう生きるのに必要なお金は十分あります。私の残り時間は、私の家系では長くてあと30年ほど。私を作り、私を育て、私を守ってくれた日本、そして今住む社会に感謝し、お返しする年齢です。

私はメンターのという仕事を主夫との兼業でやっています。その仕事を無償でやっています。社会に恩をお返ししたいから、感謝は次へ送るという「ペイ・フォワード「恩送り」の思想でやっています。


ではでは
三河屋幾朗@メンター https://menta.work/plan/954


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