「母」

【春代さんからの珠玉の言葉集】その2

子が 自分一人で起きて 学校へ行きだす時
自分で稼いで 生活してゆく時
共に暮らす人を得て 家を出てゆく時
子が親の手を愛を 必要としなくなってゆく時
かすかな痛みが 胸をはしる
「さびしいような うれしいような」
・・・・と母は言う

でも 本当は
とっても さびしいのだ つらいのだ 悲しいのだ
胸が引きちぎられ 血があふれ したたっているのだ

だからこそ母は ほほえんで見送る
手まで振って
去ってゆく子に 美しく輝いていた日々に

親は子を 放たなければならないのだ
かつて子を 産み出したように

母の歴史は
離れてゆく子の後姿を見つめていた 時の連なり
それを 数珠のように 胸にかけて
母は 母になってゆくのかもしれない

(萩原春代 1999年6月)

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