見出し画像

「最強伝説黒沢」を「ちゃお」に載せようとしたら、どんな漫画になるのか【後編】

※この記事は

の続きです!ぜひ前編からお読みください!

(3)少女漫画誌のルールを理解する


前章では『黒沢』の要素を理解することができたので、次は少女漫画雑誌のルールを紐解いていこうと思う。

画像1


現在『ちゃお』に連載中の作品20作から、ゲーム原作などのタイアップ作品を除いた作品のあらすじを調査した結果、ほとんどの作品に共通していた要素は以下の4つだった。

・主人公が学生の女の子(必ずしも小学生ではない)
・恋をする(初恋であることが多い)
・「可愛い」がステータスを確立する
・読者層の「モテたい」「イケメンと付き合いたい」という欲が垣間見える

もちろん全ての作品が似たり寄ったりというわけではなく、作品ごとの色は存在する。
正統派ラブコメからファンタジー、ギャグまで多種多様な作品が連載されているが、どれも全て上記の4要素が基盤になっているものばかりだった。
(ファンタジー作品なら、「悪魔がくれた力をきっかけにイケメンの男の子との距離が縮まっていく」など)

つまり少女漫画誌に掲載されている漫画は、「上記の4つのルールを、どのように表現している作品か」が作品の色を決めるということだ。

ということはこのルールさえ守れば『黒沢』ですら少女漫画誌掲載作品になりうるといえるのではないか。

よし。少し希望が見えてきた。

次は実際に『黒沢』の4要素を少女漫画誌のルールに当てはめた形に変換していく。

(4)『黒沢』を少女漫画に変換してみよう

ここからがこのnoteのメインディッシュ。
『黒沢』を少女漫画に変換する作業を行っていく。

まずは2章で紹介した『黒沢』を構成する4つの要素をおさらいしよう

①積み重ねてこなかった人生への後悔と、積み重ねている人間への嫉妬
②やることなすことの報われなさ
③ダサい人間の魅せる、ダサい意地の気高さ
④「真剣(ガチ)になること」こそが「生きること」であること

これらを3章であげた少女漫画のルールに当てはめ、私はこのように言い換えた。

①→可愛くなることへの努力を放棄してきた人生。周りが恋をし出して焦る。
②→自分もかわいくなろう、キラキラしようと努力するも失敗に終わる。
③→そんな主人公にも譲れないところがある
④→③で自分の譲れないところに気づいた主人公が、本気で大事に取り組む

まずは、2章で「日常編」と例えた①、②を『黒沢』と同じようにまとめると

「スクールカースト下位の(作中では)あまり可愛くない女の子(主人公)が、周りのキラキラした女の子に嫉妬しながら『可愛い』『モテ』を」目指して奮闘するも、報われない日々を送り生きづらさを感じる物語」

と言える。

なんだか見たことがある気がする、、、


「ワタモテ」(私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!)だ!


『ワタモテ』については、『黒沢』ほどしっかりと読んだことがあるわけではないので、Wikipediaに紹介してもらうと

高校生活に馴染めず、孤独を感じている「喪女」(モテない女性)の女子高生の日常や、彼女が他者と繋がろうとおかしくも切ない奮闘をコメディタッチに描いた作品。また、登場人物が増えるにつれ、主人公の主観劇だけではなく女子高生たちの微妙に噛み合わない日常を描く群像劇としての側面も強くなっている。(Wikipediaより)

という作品だ。『黒沢』よりもほのぼのした日常系の色が強いが、確かに共通するところは多い。

「彼女が他者と繋がろうとおかしくも切ない奮闘」
この一文などまさに『女子高生版黒沢』だ。

なんということだ。『黒沢』の日常編を少女漫画のルールに当てはめると『ワタモテ』になることを発見してしまった。


結局少年誌掲載作品になってしまった。

が、まあいいだろう。
青年誌×少女誌なので間をとって少年誌になることは予想の範囲内だ。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

では「非日常編」とした③、④についてはどうだろうか。

私の読んだことのある範囲では、『ワタモテ』には「非日常編」のようなプライドや熱さを前面に押し出したエピソードは無かったと認識している。

ということは『ワタモテ』の舞台(女子高生が学校に通う日常)で出来る主人公が熱く真剣に取り組めるエピソードを考えなくてはならない。

舞台設定としてありがちなのは体育祭や学園祭のような大きな学校行事だろう。
このような行事が舞台になったとして、主人公が③のような譲れないものを持っている必要がある

若い読者が共感できる「譲れないもの」の存在は友情・恋などが真っ先に浮かんできた。
これらをふまえて、こちらも2章のようにまとめると

「大きな学校行事で、いつもダサい主人公が友情や恋のために奮い立つ姿が同じ女学生読者の胸を打つ物語」

こんな感じだろうか。

少女漫画に詳しくない私は少女漫画の大きな学校行事のエピソードがどんなものなのかわからないので、『黒沢』になりうるエピソードの例は浮かばなかった。

また、『ワタモテ』の大きな学校行事を扱ったエピソードも読んだことがないのだが、この要素さえ持っていれば完全に「女子高生版黒沢」足りうる存在になる。
『ワタモテ』、とても読破したくなってきた。いま、今後の課題が生まれた。これだけでもこの記事を書いたかいはあったと思う。

(5)まとめ

今回わかったことは、少女漫画誌のルールに当てはめた『最強伝説黒沢』は

「スクールカースト下位の(作中では)あまり可愛くない女の子(主人公)が、周りのキラキラした女の子に嫉妬しながら『可愛い』『モテ』を」目指して奮闘するも、報われない日々を送り生きづらさを感じる物語」
「大きな学校行事で、いつもダサい主人公が友情や恋のために奮い立つ姿が同じ女学生読者の胸を打つ物語」

この2要素を持つ漫画であり、1つ目については『ワタモテ』が「女子高生版黒沢」になりうるということ。
2つ目についてはドンピシャなエピソードは浮かばなかったこと。これから学園ものの漫画を読むときは注意して読んでみようと思う。

こうして、ただ漫画を読んだだけでも、じっくり考えれば「その漫画がどういった要素でできているのか」や、「その要素は変換可能か」ということを知れることがわかった。
今回なら1つ目の要素は変換可能だが、2つ目は変換不可能だった。

今後もこういった漫画の要素に目を向けながら読んでいきたいと思うという決意とともに、この無駄を極めている研究を結びたいと思う。

最後まで読んでくれて本当にありがとうございました。

この記事が参加している募集

読書感想文

マンガ感想文

こんなところまで読んでくれてありがとう!