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『神成りクラブ』第3話 #創作大賞2024 #漫画原作部門

1話

2話

前回までのあらすじ

神の力を持つ高校生の神男とカナデは大物女優の龍神美も神の力を持つ神成りではないかと考えシンガポールに向かい真相を確かめる。
神男は行方不明の神美を見つけるが商談相手の社長のカツラを剥ぎ取った神美がそこにいた。

■シンガポールの高級レストラン、入り口、夜

うつ伏せで倒れる社長のカツラを手にした世界的スターの神美がマネージャーのチェンシーを見つけてニコッと笑う。

神美「チェンシー!怖かったー!」

チェンシーに抱きつく神美だが、隣にいた神男に気がつく。

神美「えっ!私のチェンシーに男が…?えっ!?」

キョトンとした表情で神美が神男の目を見つめるが心が読めないことに気がつくと、驚いて後ろに後退りする。

起きあがろうとしていた社長の頭を踏んづける。

社長「痛い痛い痛い!ハイヒール!頭刺さってるて!」

神美「心が読めないなんて…」

それでも踏み続けてる神美にイラついて起き上がる社長。

社長「踏んでる時間長ぇよ!普通、すぐどくでしょ!
貴様!この事は訴えてやるからな!」

社長は駆け寄る取り巻きたちに支えられ、かつらを被せてもらうが向きが逆。

神美「あら、ごめんなさい」

社長「ムハハ…あんたが立ち上げた化粧品の会社、調べさせてもらったが金の流れがおかしいそうじゃないか」

神美は一瞬だけ眉をひそめる。

神美「今日はそのことで私を脅そうとしてたってわけですね」

社長「ムハハ!もういいわ!色々と覚えてろよ!」

取り巻きに連れられてレストランの奥に去っていく社長の後ろ姿を呆れた目で見つめる神美にチェンシーが話しかける。

チェンシー「会食は失敗のようですね」

神美「私に失敗はないよ。それより一緒にご飯でもいきましょうか。聞きたいことがあるの、あなたに」

神男をじっと見つめる神美。

■別のレストランの個室

円卓でチリクラブなどシンガポール料理を囲む三人。

神美「なーんだ!神男くん、チェンシーの彼氏とかじゃないんだ!」

と神美は笑顔で答える。

チェンシー「聞きたいことってそんな事じゃないでしょ!」

神美「えー!私にとっては大切な事だよ〜!私のチェンシー!」

照れるチェンシーの頭を撫でる神美。

神男「すでにチェンシーさんは僕らの力のことを知ってるようですね」

神美「信頼してる人には多少は話してるからね。
それと”僕らの力”ってことはあなたもあの宝を集めたのね」

神男「ええ、三種の神宝を集めた者は神に成る。
今やネットにも載ってる都市伝説ですけどね…」

神美「で、私に何の用事?殺しに来た?」

余裕そうな神美に対してチェンシーは少しビビる表情になる。

神男「いえいえ。妙な真似すればそこいるあなたの用心棒に殺されそうです。とても仲間に好かれてるんですね」

個室の陰には神美の執事兼護衛の男ヤンがスタンバイしていた。

神男「単に質問があって。なんで人間に転生したのかと。
この世界で何かやりたいことでもあるのか気になって」

神美は箸を置く。

神美「やりたいことはすでにやってるけど、簡単に言えばこの世界で誰よりも影響力と自由を手に入れることね。
それが私も他の人も幸せになる道だと思うの」

神男「それで歌手や女優を…?」

神美「私なら画面越しでも人を幸せにできる。
あとはいろんな会社を作ってその利益で町を作ってるの」

神男「町?」

神美「そう! 人には仕事や教育が必要じゃない!」

神美はニコニコしてスマホを神男に見せる。
そこにはとある貧しい村のビフォーアフターが紹介されており、子供の笑顔が増えた記事が記載されていた。

神男「へぇ… すごいな…」

神美「あ、もちろん私の力のことは他の人に言っちゃダメだからね!
神男くんなら大丈夫だと思うけど」

そう言うと神美は神男を見つめながら立ち上がる。

神男「それはなんで?」

神美「私、人を見る目はあるから。あなたは良い人だよ。
人を助けたい目をしてる」

そう言いながら神美は個室を出てどこかへと向かう。

チェンシーは食後のお茶を頼もうと店員を呼んでいる。

すると横から小さな声がする。

カナデ「おーい、神男くーん…」

神男「カナデ?お前いたのか」

カナデ「透明になって君たちの後をつけてたけど出るタイミングがわかんなくてさ…」

神男「お前、ストーカーみたいだな」

カナデ「神美様の前に出るなんて恥ずかしいというか…勇気がいるんだよ!
だから僕も紹介して!お願い!」

神男「はいはい…」

小声でカナデと話す神男に対してチェンシーが口をひらく。

チェンシー「私はね、冗談抜きで神美さんを世界一のスターにしたいの…」

それを聞いた神男と透明カナデはチェンシーの方を見つめる。

チェンシー「実は私あの人に助けてもらった恩があるんだけど、それを抜きにしても私はあの人を世界一尊敬してる…
あの人のすごい努力家だけどやること全部誰かのためなんです。
だから、神美さんはもっとこの世の中を良くしてくれるって信じてるんです!」

それを聞いた神男は少し風のようなものを感じた。
ハッとするチェンシー。

チェンシー「あ、ごめんなさい!神美さんさっき珍しく自分のこと楽しそうに話してたからつい私も…。あの、ちょっと神美さん見てきます!」

そう言うと恥ずかしそうに個室から出るチェンシー。
そのタイミングで透明化を解除するカナデ。

神男「良い人そうだな」

カナデ「うん、神美様はもちろんのこと、あのマネージャーさんの心の中はすっごく純粋だったね!」

得意げで嬉しそうに話すカナデ。

神男「ついでにさっきの忍者みたいな用心棒もな」

すると慌てた様子でチェンシーが戻ってくる。

チェンシー「あの!すみません!神美さん、またどこか行ったようで!
あの人、猫みたいに急に消えるんですよね!」

カナデ「えー!」

チェンシー「えっと、新しい人? …あの、これ私の名刺です!お会計は済ませてるっぽいので今日のところはこれで!」

そう言い名刺を渡すとチェンシーはどこかへと走り去って行った。

カナデ「そんなー!神男!僕まだ話してないよ!なんだよー!」

半泣きのカナデ。

神男「お前、結局何しにきたんだ? 今日はもう帰るぞ」

カナデ「神男はいいよなー!神美さんに”神男くん”て名前呼ばれてさ!一緒にご飯も食べてさ!あーあ!」

神男「拗ねるな。間近で見れただけでも良かったじゃん」

カナデ「なんだよ!じゃあせめて海外に来たしカジノ行くぞ!」

神男「未成年は入れないぞ」

カナデ「…うわーん!」

泣きながら外へ走っていくカナデは煌めく夜景へ消えていく。
その夜景の最も高い場所で風に吹かれて街を見下ろし笑みを浮かべる神美。

神美「神男くんね… またどこかで会いましょうか…」

■下上神高校、資料室、昼

<翌日>

狭い資料室の中にカナデが立っており、入り口に神男が立っている。

神男「なんだ、こんなとこに呼び出して。
昨日、分かっただろ。宗教とか作るのは諦めるんだな」

カナデ「うん、諦めた!だから部活にした!」

神男「は?」

カナデ「題して神成りクラブ!」

ホワイトボードに書かれた”神成りクラブ”の文字をバンと叩くカナデ。

神男「いや、諦めてねーな」

カナデ「流石に部活は厳しかったから同好会なんだけど、先生を買収してこの部屋使っていいことになった!
部員をあと3人と顧問の先生を探さないといけないらしいから…」

神男「ちょっと待て!
なんで俺がやることになってんだ!」

カナデ「神男、部活探してるんじゃないの?」

神男「この部活はなんか違う!怪しいだろ!」

カナデ「僕、思うんだけどさ。君にとっての青春ってハードル高いと思うんだ」

神男「…? どう言うことだよ。」

カナデ「だってスポーツだろうが勉強だろうがトップになれる。恋愛だって相手の心が読めるしお金にも困らない。みんな悩みながら成長するから青春になるけど、全てを手に入れた君に青春は手に入らないんだよ」

神男の心に何かが刺さり一瞬、勉強と恋愛に向き合ったサルピーの過去、貧困といじめに立ち向かったイヌワンの中学時代の姿を思い出した。

神男「まぁ… 確かにそうなのかもしれないな…」

カナデ「だったら、みんなの悩みを聞いてあげればいいんだよ!
心が読める君なら彼らの悩みを通していくつもの青春を味わえるんじゃない?」

その言葉を聞いて神男はチェンシーの言葉を思い出していた。

   ×   ×   ×

(回想)

チェンシー「神美さんはもっとこの世の中を良くしてくれるって信じてるんです!」

   ×   ×   ×

神男「そっか、あの人も彼女を通して…」

カナデ「え?何?」

神男「ただの下品でバカなニートだと思ってたけど、たまには良いこと言うじゃんカナデ」

カナデ「せめて今は女子高生って言ってくれる?あと下品でバカは余計」

神男「分かったよ。その”神成りクラブ”って名前は嫌だけど悩み相談とか人助けならやるよ、カナデ部長」

カナデは鼻に指を突っ込みながら答える。

カナデ「は?何言ってんの?部長は君だよ神男くん。ほら、部員の届出にも君の名前を書いて提出しちゃった」

カナデの手にはハンコが押された記入済みの新規部活動届の紙があり、そこには部長として神男の名前がある。

神男「は!なんで俺なんだよ!」

カナデ「だって部長って報告とか色々と面倒くさそうだし、僕はワイワイ楽しくやれたらそれでいいや」

神男「ちょっと見直したと思ったらやっぱり腐れニートだったな…」

神男はカナデに向かっていき用紙を奪おうとする。

カナデ「あー!やめろ!」

神男「うるさい、破ってやる!ゴッドチョップ!」

二人が争っている間に資料室の机の上に1冊の本がバタンと落ちてくる。

二人は争いをやめ机の上に落ちた本に目をやる。

カナデ「え?なんで本が?」

神男は窓が開いていることに気がつき、窓の外に身を乗り出して辺りを探すが2階なので誰もいない。

空には1羽のカラスが飛んでいるだけであった。

カナデ「うわ、なんかちょっと濡れてるな。
おい神男、これ見てみろよ…」

神男「どうした?」

神男はカナデの方を見る。
本の表紙には英語で「予言の書」と書かれている。

神男「予言の書…?」


ひとまずここで『神成りクラブ』は終わりです。
ここまで読んでくださりありがとうございました。

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