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『神成りクラブ』 第2話 #創作大賞2024 #漫画原作部門

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1話のおさらい
神の力を持った転生者”神成り”になった神男だったが同じ力を持つカナデと出会う。高校で青春を謳歌したい神男だが突如ニート女カナデから宗教を作ろうとの提案が…

■神男の部屋、午後

カナデは正面に座る神男に得意げに語りかける。

カナデ「だから僕たちは神だったわけじゃん?
宗教作ったら最強だと思うんだよ!」

呆れてため息をつく神男。

神男「何を言い出すかと思えば……絶対に嫌だ」

カナデ「なんだよ!
僕と神男なら絶対いけるって!」

神男「どうせ俺たちの他に神成りがいたから対抗しようとか考えてんだろ。相手は有名なアーティストで力もある。手っ取り早く宗教で俺たちのために動く人間を集めようってか」

カナデ「そりゃ…それもある…」

神男「あのな、神の力を使えば信仰じゃなくて洗脳だろ。
年の数だけケーキのロウソクの火を消せ!って洗脳したとするよな? すると洗脳された100歳のばあちゃんは苦行だぜ?」

燃え盛るケーキに息を吹き続けるばあちゃんを想像するカナデ。

カナデの前で立ち上がる神男。

神男「人を救うために宗教がある。宗教のために人を利用するもんじゃないね」

悔しくも納得するカナデ。

カナデ「う~ん… でもよ、せっかくなら何か二人の間で作りたいじゃん!作ろうぜー!」

バンとドアが開き母がお茶とお菓子を持っている。

母「あんたたち… 作るなら学校卒業してからになさい!まだ早い!」

お茶を置いてバンとドアを閉める母。

神男「は……? はーっ!?」

顔を赤らめ走ってドアを開けて叫ぶ神男。

神男「おい!何勘違いしてんだ!違うからなー!あと入る時はノックしろー!」

勢いよくドアを閉める神男。

カナデは少しニヤニヤしながらつぶやく。

カナデ「なるほど、そういう関係もいいかもな…」

カナデの目の前にグッと近づく神男。

神男「おい、そんなに俺たち以外の神成りが気になるなら今から行くぞ」

カナデ「行くってどこに?」

神男「お前の言うその神成りのところだ。直接会って話す」

カナデ「え?」

カナデは驚いて後ろに吹っ飛び頭を強打する。

カナデ「会うってあの龍神美様に会うのか!?」

神男「リュウシェンメイ… なるほど、何ヶ国語も話せる超有名人だな」

カナデ「そうだよ!SNSのフォロワーは5億人を超え、神美様の作る音楽、CM、映画、ブランドあらゆるものが世界的にヒット!デュフ!ファンとしては会えるのは嬉しいけど… いやでもファンだからこそ邪魔しちゃいけないというか…恐れ多いというか…」

オロオロするカナデにSNSが表示されているスマホを見せる神男。
そこにはシンガポールのある高級ホテルに滞在したという神美の投稿があった。

神男「とりあえず今日はシンガポールにいるらしい。
今から行ってみよう」

カナデ「えー!マジで行くのかよ!まだ心の準備が…」

神男「お前が宗教を作るとか言い出すからだろ。
神美って人が別に悪い奴じゃないなら対抗する必要もないからな」

スマホを操作してシンガポールのホテルの地図を表示する神男。

神男「瞬間移動は具体的な場所がわからないとできない。とりあえずこのホテルに移動してから神美の目撃情報を探す」

神男はそのまま家の窓を開けて身を乗り出すと手元に靴が出現する。

カナデ「おい、ほんと急だな!人が急に現れたら目立つだろ!」

神男「大丈夫だ。体は透明化させる。できるだろ?」

カナデ「ま…まぁ…」

神男「お前もきたければこい」

そう言いながら靴を履くと神男は窓から体を消した。

カナデ「嘘でしょ… ああ!もうわかったよ!」

カナデも窓の方へと向かい姿が消える。

■シンガポールのホテル内レストラン、夕方

透明化したカナデがレストランに現れるが誰も気づかない。

カナデ(着いたけどさ… これ神男も透明になってるからどこかわかんねーじゃん!どうすんだよー!)

周りを見渡すとセレブな人たちが食事をしている。

カナデ(とりあえずこいつらの心の声を聞いて場所を探ろう。
ん? あいつソワソワしてるな…)

カナデの目線の先にはソワソワする男が女性と同じ席に座っており、目の前にワインが注がれている。

女性「ねぇ、これどうやって飲むの?私こんなレストラン初めてだからわかんない…」

ソワ男「しょうがないねぇ…」

ソワ男(どうしよう!俺だってこんなレストランでワイン飲んだことないんだけど!はっ!)

ソワ男が他のテーブルをちらっと見るとワイングラスに鼻を当てる人が。

ソワ男(そうか、ワインは鼻で飲むんだ!見たことあるぞ!)

ソワ男は鼻からワインをぶち込むと口からゲボゲボとワインを吐き出す。

女性「きゃー!汚い!血反吐を吐くマーライオンだわ!」

女性が立ち上がって騒ぎ出す。

ソワ男「あ… ちょ… げぼっ…」

カナデ(あいつは単なるバカだな… 一人ずつ探していくしかないか…)

レストランにいる大勢の客に目をやるカナデ。

■ホテル、スイートルームがある廊下

透明化した神男がとある部屋の前に立ち止まる。

神男(ロビーの人の心を読んで神美の部屋はわかったが、カナデのやつはまだ来てないのか?)

■ホテル、スイートルーム内

神美の女性マネージャーのチェンシー(24)はソファーで頭を抱えて座っている。

チェンシー「あの人はこんな時にどこ行ったんだよー!
あと10分で取引先と会食なのにさ!なんで部屋にいないんだよ、もう!」

ドアのノックが3回鳴る。

チェンシーは立ち上がりドアを勢いよく開ける。

チェンシー「どこ行ってたんすか!…てあれ?」

部屋の外を見ると誰もいない。

神男「ここが神美さんの部屋だな」

部屋の中から声が聞こえ、チェンシーが振り向くと神男が立っているのに気づき驚いて廊下に転げ出る。

チェンシー「ぶあー!だ…だ…誰ですか!あなた!なんで?どっから?」

神男は深々と頭を下げる。

神男「急に来て申し訳ありません。少しだけ神美さんとお話させていただけないでしょうか」

チェンシー「いや、いきなり来て失礼… ん?」

神男は少し頭を上げチェンシーの方を見る。
チェンシーはゆっくり立ち上がる。

チェンシー(なんかこの人、神美さんと似てる気がする…)

神男「神美さんと似てますか?」

チェンシーは驚いて再び転げる。

チェンシー「ど…ど…どうして私の心の声が?…もしかしてあなたも…」

チェンシーは自分の口を抑える。
神男は彼女の目を見つめる。

神男「神美さんも似た力が使えますよね。その件で話したいことがあるんです」

チェンシー「えっと…そうだ!あなたも不思議パワーあるんだったら、神美を探してくれませんか!電話繋がらないんです!」

チェンシーは神男にすがるように頼み込む。

神男「探す?いいですけど…」

■ホテル内レストラン

透明化したカナデはレストラン内を歩き回っている。

カナデ(神美様がこのホテルにいることを知ってる人はいても居場所まで知ってる人はいないんだよな。
もっと偉そうなやつとかいれば… ん?)

レストランの入り口からスーツを着た偉そうで社長と呼ばれているカツラ男と取り巻きが入店して奥の個室に案内されていく。

社長「神美くんはまだ来てないのか?」

取り巻き「まだのようです」

社長「あの美貌も食べたいところだがな!ムハハ!」

個室へと入っていく社長を見るカナデ。

カナデ(あのカツラオヤジ、神美って言ってたよな?)

個室の方へと向かっていくカナデ。

■ホテル、スイートルーム内

神男は片手を顔の前に掲げている。

神男「神美さんの居場所はわからないので今からこの部屋の未来を見てみます」

チェンシーは少し離れた角で顔を半分だけ出して神男を見ている。

チェンシー「お…お願いします…」

神男が目を瞑り集中すると情景が浮かび上がる。

神男「30分後くらいにこの部屋に帰ってきますね… 」

チェンシー「それじゃ間に合わな…… まさかあの人また!」

チェンシーは急いで身支度をする。

チェンシー「あなた名前は?」

神男「神男です。日本から来ました」

チェンシー「神美のマネージャーのチェンシーです!神男、あなたもちょっときて!」

神男「そんなに重要な会食なんですか?」

チェンシー「そうじゃなくて、多分あの人また会食をぶっ潰す気なんです!」

■ホテル内レストラン

カナデは不機嫌そうにカツラ社長を見ている。

カナデ(あいつの心、黒いな… 神美様をハメようとしてる?)

急にレストランが静まり人々がチラチラと入口の方を気にし出した。

カナデ(雰囲気が変わった?)

カナデが入口を見ると荘厳な雰囲気を纏った龍神美(26)がこちらに向かって歩いてきておりその背中には光のオーラが見えるかのようだ。

カナデはそれを見て声を押し殺すために口を抑えるが目には涙が浮かんでいる。

カナデ(神美様だ!マジ尊すぎる!)

神美はカツカツとハイヒールの音をレストランに響かせながらカナデの前を通り過ぎ社長のいる場所に到着する。

カナデ(うわ!めちゃいい匂い…)

神美「初めまして、社長。神美です」

社長と握手をする神美。

社長「ムハハ!やはり綺麗だなー!
ビジネスの話の前に食事を…」

神美「その件に関してですがお断りしようかと思います」

ニコッと笑う神美。

社長「は… それは食事を…」

神美「食事も仕事もです。
残念ですがあなたとは良い未来が見えなかったもので」

社長は徐々に顔を赤くして怒り出す。

社長「…な…なんだと!俺の面子を潰す気か!」

取り巻きは社長をなだめながら小声で話す。

取り巻き「社長、神美氏は人を見る目が神がかってます。
一目見て決めたらその決断は変わらないかと…」

社長「うるさい!黙れ!」

神美「ここは私がお支払いしておきますからお食事を楽しんでください。
では」

神美はそのまま踵を返し退店しようとするも社長が追いかける。

社長「こら!待て!」

神美は社長が自分の髪を引っ張る未来を見る。

社長が立ち上がり神美を捕まえようとするが神美はバク宙して社長の頭上を飛び越える。
宙で社長のカツラを剥ぎ取り社長の後ろに着地。
社長はハゲを晒して前のめりに倒れる。
倒れた先には驚き顔のチェンシーと神男が立っている。

チェンシー「遅かった!」

神美「…あ!チェンシー!商談終わったよー!」

ニコッとピースサインをする神美。


3話につづく



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