金色の船|女の哲学
あなたのとの出会いは
荒れ狂う嵐の中に
突然放り込まれたかのように
私は小舟の中で
たったひとつのオールを頼りに
必死にこぎ続ける
横から殴り掛かる波
体温を奪う風
大波は小さな船を
容赦なく海底に叩きつけ
海水に咽びながら
全力でオールを動かしても
波に翻弄され
遅々として進まず
真っ暗な空に
方向を失う
時折、空を切り裂く稲妻は
一瞬だけ行き先を照らす
灯台の光はとっくに消え
北極星も姿を隠し
勘さえも使い果たして
なすすべもない
それなのに
私の船は沈まない
渦巻く波に叩きつけられても
私の船は壊れない
暗闇で方向を失っても
穂先は行き先を示す
私は荷物を海に捨て
着ていた服さえ切り裂いた
生まれたままの姿で
ひとりオールを漕ぎ続ける
そしていつしか夢の中
目を覚ますと
空にはグラデーションの深い青
金星がひとつ
碧い空に輝く
私は愛に見守られていた
あなたは漆黒の夜に
私を照らし続けていた
雲の上から光を放ち
やむことはなかった
私の船はあなたの光で
嵐の中でも
黄金の船
打ちつける大波は
銀色のヴェール
そこは大海などではなく
あなたの御手の上
私は最初から救われて
あなたに満たされていた
ただひとり
私だけが
知らなかった
(Photo: Hawaii, Kona ©MikaRin)
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