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知らなかった世界|女の哲学

  目覚めたとき
  今日は昨日までとは違う予感がした。

  あなたに抱きしめられた。

  気を失うかと思った。
  何かが浸透してくる
  あまりのスピードと深さに。

  命を凝縮した球体の水槽に
  突然放り込まれ、
  溺れる間もなく
  全てが洗い流されたかのような。

  あなたの指が私の秘所に優しく触れた。

  窒息しそうだった。
  長く待ち望んでいた以上の何か。
  触れられた小さな突起から
  全身へと神経細胞が張り巡らされ
  ほんの微細な振動が
  全身を突き刺す

  あなたの指が私の中をまさぐる。

  全身を何かが駆け抜けた。
  何度も何度も。
  想像をはるかに超えた何か。
  あなたの動きで
  全身が不随意に躍る。

  あなたが私の中に入ってくる。

  私は跳ばされた。
  快感をはるかに超えた何か。
  最初からそこにあるはずなのに
  ずっと見失っていた
  やっとひとつに戻れた吐息。

  あなたの上に跨る。

  光がはじけた。
  真っ白な歓びだけの世界。

  絶頂はもはや休まることもなく
  数えることもできない。

  呼吸は止まり
  のどが詰まり
  全身は硬直し
  震え
  弛緩し
  私が離れていく。

  完全な安心の中で
  私は何者かなど
  どうでもよかった。

  ただ
  ひとつで
  よかった。

  あなたがイク。

  その衝撃は私を覚醒する。
  あなたの全てを受け入れるために。

  完全に手放し手放された
  あなたの喜びは
  全宇宙を
  崩壊させる
  こなごなに。

  塵となって
  降り注ぐ
  あなたと
  わたし

  受け止められ
  積もった塵は凝縮し

  夢から目覚める

  いつもの自分。

  切り取ったフィルムの
  前後をピッタリ貼り付けて
  辻褄を合わせてしまった日常は

  切り取られた時間。

  わたしはどこに行っていたのだろう?

  この世ではない
  喜びだけが
  残り香の
  どこか。

  想像することさえなかった
  全く知らない
  どこか。

  あなたは
  私を
  つれていった。

  そんな
  どこかへ。

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(photo: ©MikaRin)






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