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ランニング|自然の愛撫

  走る、走る。
  大地に根を下ろし身体の力を抜く。
  躰の火照りが去り、明晰さが戻ってくる。
 
  瞬きと焦点が消え
  野生動物の視覚が開き
  大地とひとつになっていく。
 
  高い雑草に囲まれた小道に入る。
 
  風に揺れる雑草の音に
  あの喘ぎ声が反響する。

  私たちのまぐ合いに自然が融合し
  昨日の情景が浮かぶ。

 
  あなたにしがみ付きながら
  震える感触
 
  肩に触れる
  樹木の葉っぱが
  風に艶めかしく光る。
 
  あなたが突き進もうとする
  体内の感触
  快感に溺れていく忘我
 
  壁のように生える雑草が
  風に吹かれて
  私をさえぎる
 
  前後左右に転がりながら
  後ろから突き上げられ咽ぶ喜び

   小さな虫の大群が
  私の顔を撫でながら
  まとわりつく
 
  あなたに完全に開ききった解放感
 
  足元の雑草が
  私の足に
  絡みつく

  何をしても絶えぬ悦楽

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  喘ぎ声を反響する雑草に囲まれ
  昨夜の全てが蘇る。
 
  私は走る。

  大自然と融合し
  性感の隅々まで溢れる生命力を
  どうしようもなく持て余しながら。
 
  やがて草むらを抜け
  広い空間に飛び出す。
  全てが霧のように消滅する。

  川の水がはじける音。
  水は何も語らない。
 
  頭上を飛び交うツバメたちは
  一日の終わりのエサ取りに専念する。
 
  夕日は雲の中
  風は吹きそうもない。
 
  私は帰る。
  全てを忘れる日常に。
 

ランニング

(Photo: ©MikaRin)





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