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風なのか波の音なのか|自然の愛撫

  突き動かされるように海岸に行きました。
  ちょうどよく海を見渡せる海岸があり、
  曇っているので人もいません。

  座って海を感じていました。
  波の音と吹き荒れる風が、
  あなたの内的な愛撫に変わるのです。
  そして官能の直前からそれは始まりました。

  風なのか、波の音なのか、
  あなたの息遣いなのか、わたしの吐息なのか、
  愛撫なのか、潮の香りなのかわからないまま、
  至福のなかで喘ぐしかないのです。

  なんども気を失いそうになるほどの絶頂の中で、
  私は海の向こうへ飛んでいくのです。
  吹き荒れる風は、飛んでいる私の頰を切り裂き
  光に向かって飛びながら、
  風の吹くままに流され、
  喜び、
  また光に向かいます。

  視界が光でいっぱいになったとき、
  突然頰に慈雨が三滴落ちました。
  その雫はあなたです。

  突然その世界が消えて
  現実世界に弾き飛ばされたかのように、
  わたしは思わず立ち上がりました。

  振り向くと、
  遠くから誰かがこちらに向かって歩いていました。

  私は素知らぬ顔で
  そのまま、丘を降りて帰りました。


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(Photo: ©MikaRin)


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