あなたの大きすぎる夢
「好きかどうかわからなくなった。」
そんな無責任な言葉をぶつけられても、私はどうしたらいいのか…
「別れたい。」
その言葉に
「わかった。」
と返すのがやっとだった。
**********彼とは大学1年の夏の終わり頃に出会った。
友達の開いた合コンで出会うという、大学生にしては妥当な出会い方だった。
初めから自分の中でやりたいことが定まっている人だとは思っていた。
ずっとバスケに熱心に取り組んでいたこと
今はダンスを始めて
いつか世界一周したいという。
私にはない、大きな夢を持つというポジティブな感情だった。
私といえば夢がないわけではないけれど、あったかいごはんとやわらかな布団で毎日安心して眠れたらそれが1番だという、夢と呼んでいいのかも分からないほど小さな理想を持っているだけだった。
**********出会ってからほどなくして私達は付き合った。
大学の勉強と習いごとに励む私と、バイトや自分のやりたいことに向けて動いている彼とでは、1週間に一度会えればいいほうだった。
それでもお互い会える日を楽しみに日々を過ごし、会えた日はほんとうに嬉しかった。
こんなに自分と同じだけの愛情をくれる人がいるものなのかと…正直ものすごく驚いていた。それと同時に異性に愛されるという喜びを初めて感じていた。
**********4ヶ月ほど経った頃だっただろうか。
彼との心の距離が開いているように感じてきた。
ラインの返信が1日返ってこない
会える日がなかなかない
好きだという気持ちを言葉にしてくれない
"してくれない"を探す日々にだんだんと気持ちが沈んでいった。
彼は自分のやりたいことのために時間を使っている。それも大きな目標に向けてだ。
それに対して自分は、目の前のことをこなすことで精一杯であった。
結局、半年を過ぎたあたりで別れを告げられてしまった。
彼が欲しかったのは"愛をくれる彼女"ではなく、同じ高みを目指し支え合う"同志"だったのだろう。
私の心は
彼の
私にとっては大きすぎる夢
によって
あっけなく潰されてしまった。
私は未だに彼の大きな夢の人生に羨望を持ちながらも、自分の小さな理想に向かって動いている。
いつか自分だけのお城を手に入れたい。
1人暮らしをしたい。
この小さな夢を今は叶えたところだ。
彼の人生と私の人生がこの先交わることはそうそうないと思うが、もしも今彼に会ったら自信を持って言える。
私は自分のやりたいことを全うしているよ
と。
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