見出し画像

#rewiringfashion を翻訳しました。

Dries Van Notenが主導で、今後のファッション業界のあり方をオープンレターとして発表し、多くの著名なファッションデザイナーや小売大手などが賛同したことが多くメディアで取り上げられています。その数日後に、BOFがファシリテートし、デザイナー、小売業の役員らで構成されたグループが同じ文脈で発表したプロポーザルが#rewiringfashionです。
ドリスの公開書簡の内容にもう少し踏み込んだ、具体的な現状の問題も指摘したものです。

なぜ翻訳したか

この#rewiringfashionに参画しているストアオーナーの1人と年に一度、彼が来日する際にアテンドさせていただいているご縁で、彼のお店のインスタグラムでこのプロポーザルを知りました。

アパレル業界の諸兄諸姉方、諸先輩方とは違い、8年前に日本に帰国してひょんなことでご縁を頂きファッション業界の仕事もさせて頂くようになり、仕事の場はほぼ海外という、ピヨッピヨの私ですが、洋服の力を私は心からすごいと思っているし、洋服に力をもらっているし、だからこそ、着る人に力を与える洋服を作るデザイナーや洋服作りに携わる人たちへの大きなリスペクトを持っています。服だけでなく、身につけるものは全て。

そういう人たちを、コミュニケーションの面でお手伝いしたいという思いだけでファッション業界の片隅で仕事をさせて頂きながら、本質的なサステナビリティや審美性を考える中で、私ができることがこのプロポーザルの全文を翻訳することでした。

NY在住でこの業界の大先輩でもある友人に聞いたら、アメリカの小売大手が賛同しないとなかなか難しいが、ディスカウントの文化に慣れているアメリカ企業が全てに賛同することが難しいという意見でした。なるほど。
正解はわからないし、このプロポーザルもたたき台で、これから会話を重ねる上で研磨していくと書いてある通り、会話をすることが大切だと私も思います。その際に言葉が壁になることがあるなら、できる限りその壁を低くできないかという試みです。

いかに原文そのままに自分のフィルターを通さないで、かつ本質が伝わるように訳すかに注意を払い言葉を選んで訳しましたが、誤字脱字、誤訳はご指摘ください。
原文は↓。

---------以下翻訳分----------

#rewiringfashion

これは、世界がこの危機的状況に直面する中で、世界中のデザイナー、ブランドCEOや小売業の役員や経営陣が、今後ファッション業界がどうなっていくか、どうなっていくべきかを、改めて再考する為、幾度と重ねられている会話から生まれた提案です。


ファシリテーション:The Business of Fashion

Introduction
私たちは、世界中のデザイナー、ファッション関連企業の役員や小売業に従事するものが集まったグループです。ファッションに関わることになった背景はそれぞれ違うものの、私たちが今この業界に身を置いているのは、このファッションビジネスのコアに残る美しさと創作力、そして職人技術を信じているという理由からです。にも関わらず、現行の体系は、真のクリエイティビティを助長しないどころか、誰のためのシステムなのかわからなくなっています。デザイナー、小売店、ご購入いただくお客様のためのものではないどころか、この地球にとっても芳しいものではありません。今こそ一度立ち止まり、ファッションのストーリー性やマジックを再発見する時なのではないでしょうか。

数ある課題の中でも以下に3点を挙げました。

(1)現行のファッションカレンダーがお買い求めいただくお客様に寄り添ったものではなく、この業界で働くプロ達にとっても持続が難しいものであり、結果的にそれが売り上げに影を落としている
(2)現行のファッションショーの形式がもはや時代に即していない
(3)度重なる値下げ商戦により、購買者は延々と続く値下げを見越した買い物をするようになり、 収益性は落ち込み、ブランド価値は下がり、ブランドに関わる人たち全員に影響を及ぼしている。

新型コロナウィルス危機により変革への緊急性が高まる一方で、このことがあったからこそ、関係者の間で全く新しい原則のもと、現行システムを配線し直す(rewire)必要があるという対話が始まっています。先だってデザイナー、ドリス・ヴァン・ノッテン(Dris Van Notten)主導で、香港小売大手レーン・クロフォードのアンドリュー・キース社長やアルチュザラ(Altuzarra)CEOのシーラ・スー・カーミらが参加したフォーラムで彼らがそうだったように、同じ問題を抱える業界関係者とともに問題解決の糸口として共通言語を持てるよう私たちは何にもとらわれないよう大胆にものを考えるように務めました。

1. ファッションカレンダーのリセット

現状の市場にそぐわない現行のファッションカレンダーを改定し、ショーのタイミングや買付け期間、納品時期を再考する。

現行の問題点:
現行は、ファッションショー開催から店舗への納品までの期間が非常に長く、顧客がショーで喚起されたコレクションへの購買意欲を納品時期まで保持することが難しい。

● ショーから納品までの期間に、ショーブランドのデザインを模倣し、同じデザインをより安価に、使い捨てのファストファッションの店舗で速やかに展開するブランドがみられる。

● 納期が現実世界の季節と一致していない。

● 度を越した値下げ商戦のため、正規価格での販売期間が短すぎる。

● バイヤーやプレス関係者への移動による、時間、経費、エネルギーの負荷が多大である。

解決案として:
● メンズとウィメンズのファッションウィークを1月/2月、そして6月に合同開催し、正規価格の販売期間を伸ばし、移動を最小限に抑え、ファッションウィークのジェンダーの垣根を取り払う。

● ファッションショー、コレクションの納期を実際の季節に合わせる。発表コレクションに適した季節の少し前にコレクションが店舗に並ぶよう、その少し手前でショーを開催する。

● 次シーズンのバイイングを、現シーズンのプレゼンテーションと同時期に行うことで移動を削減する。

画像1

2. ファッションショーを考え直す

現行の形式は時代に沿っておらず、レーベルは、自分たちのターゲット層にコレクションを届ける発表形式を再考すべきであると私たちは考えます。

現行の問題点:
● ファッションショーの形式は過去50年間変わっていないにも関わらず、かつてはプレスやバイヤーなど、業界関係者のみのクローズであったものが、現在ではセレブやインフルエンサーを招き入れ、そうした人々が撮影したイメージをオンラインにアップし、誰でもすぐに見れる状態になっている。
● 現行のファッションショーは、このインスタントでデジタルな世界に最適化されていない。デジタルな世界では、ファッションの画像は瞬く間に配信され、私たちがショーで、顧客のコレクションに対する購買欲を喚起しても、購買へ結びつくことが制限される。

解決案として:
● これからはファッションショーを、納品前のコレクションの認知や顧客の購買意欲の向上、顧客との関わりを持つ為のイベントと位置付ける。
● ショーの形式や、毎シーズンショーを欠かさず開催するなどの開催頻度において、慣習やファッションカウンシルなどに強要される類のルールは存在すべきでないという共通認識を持つこと。
● こうしたことから解放されるデザイナーは、いかに顧客や顧客がフォローするメディアを掴むかに集中し、ファッションプレゼンテーションを再度創造していくこと。

3. ファッション業界のディスカウント中毒を断ち切る

ファッション小売店は、ディスカウント中毒を断ち切り、シーズン終わりの値下げ期間を短縮し、シーズン中の長期にわたるセールを廃止すべきであると私たちは考えます。

現行の問題点:
● 現在売れ残っているSS2020商品が市場には山積みになっており、リテーラーは在庫消化のためにマークダウンをせざるをえない状況かもしれない。
● ただ、リテーラーは来店と購買促進のため、早期に頻繁なディスカウントを続け、購買者は大幅な値下げを見越した買い物をするようになり、 収益性やブランド価値は下がり、ブランドに関わる人たち全てに影響を及ぼしている。

解決案として:
● 長期的なブランド資産や収益性を鑑み、リテーラーはSS2020の過度なディスカウントは慎む。
● 今後の値下げに関しては毎年1月と7月以降に繰り下げ、AW2020の立ち上がりからスタートし、以降のシーズンはこのタイミングで立ち上げていく。
● ブラックフライデー、アメリカのサイバーマンデー、中国の光棍節を含む全てのシーズン中のセールを廃止する。

以上の声明文は、現在のこの危機的状況を生き抜くため、またその後も存続できる確固たるビジネスを築き上げていくため、また、この業界の美やクリエイティビティ、職人技を維持するために我々が今とるべきアクションを考えた際に出たアイディアをまとめたもので、ごく初期的な段階のものです。今後他業種のリーダーたちと話し合いを持ち、他の業界が直面している問題にも目を向ける中で、さらに発展させ、研ぎ澄ましていければと思っています。あなたも私たちとともに歩んでくださることを願って。

-------------翻訳ここまで----------------

デザイナー、小売の経営者や役員の方々の賛同表明はリンクからできます。

賛同を表明しているブランドや企業の一部。

画像2


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?