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わたしの花園【短編小説】

みかんです。
noteを作って早々、投稿が3日坊主どころか1日坊主になってしまっていたので、昔書いたストーリーを投稿してみようと思います。
ストーリーに合う良い感じの写真を探すの楽しいですね、お花畑の写真でもあればよかったのですが、私のギャラリーになかったのでTeamLabに行った時の写真貼りました。

それでは、ストーリーを暖かく見守ってください。

花園(短編)


色とりどりの花が咲き誇る庭園。
いつでも明るく、暖かく、私を迎え入れてくれる。
そこで私はゆっくり水をやりながら、花と触れ合う。
いるのは私ただ一人だが、不思議と孤独は感じない。

 ある日。
普段なら誰もいないはずの庭園に、白い服を着た、不思議な雰囲気の青年が立っていた。
長い間同じ場所にいるが、人に会うのは初めてだ。戸惑っている私に、彼は無邪気な笑顔を向けた。
「こんにちは。凄く綺麗な花だね。ずっと旅をしてきたけど、こんな素敵な場所は初めてだよ」

 案内してよ、と言われて一緒に散歩し、他愛ない話をしながら、私の胸は高鳴っていた。
(神様、「出会い」を私にくれて、ありがとうございます)

 それから、彼は毎日庭を訪れるようになった。
彼がやって来たことで、私の庭園は一層明るさを増した。季節の流れが生まれたのだ。
「春」には鳥や蝶がやってきては軽やかに舞い、蜜を吸う。
「夏」には突然の夕立のあとに美しい虹が見えた。
「秋」は実りの季節。たくさん採れた果実を二人で分け合い、涼しい夜を楽しんだ。
寒くて厳しいはずの「冬」でも、隠れていたあたたかさが雪を溶かす。
季節の移ろいとともに、庭を彩る花の様子も変わっていった。
咲いては枯れ、また新たな花が咲く。
こんな変化を経験するのは初めてだ。この素晴らしい光景を彼と共有できていることが嬉しかった。
この「今というときめき」がずっと続いていてくれればいいのに。
私はそう信じていた。

 しかし。
彼は突然、姿を消した。
彼はどこにも見当たらなかった。
ただ、以前のように一人に戻っただけだ。彼がいたというのが異例な出来事で、本来はずっと一人だったのだ。
そう言い聞かせても駄目だった。彼がいなくなった事実に耐えられなくて、気づいたら私は涙を流していた。
すると、私の心を反映させるかのように、庭園が荒れていく。花は元気をなくし、空は分厚い雲に覆われた。その様子がまた悲しくて、新たな涙が流れる。
どれだけの時間そうしていただろうか。
かなり長い時間が流れたように思われる。
 そんなときだ。
突然風が吹いてきた。ふらつくほど強い風だ。私は咄嗟にぎゅっと目を閉じる。
風が止み、再び目を開けた時。
私の側に一輪の、白い花が咲いていた。
透き通るように白い花びらは、初めて会った日に彼が着ていた服にも似ている。
そして今私が立っている場所、その花が咲いている場所は、初めて彼と会ったところだった。
彼だ。彼が来てくれたのだ。泣いてばかりいる私に、僕は元気だよって、伝えに来てくれたんだ。
こんなに素敵な贈り物と一緒に。
きっと彼の正体は「風」だ。そう仮定すれば突然現れたことも、ずっと旅をしてきたということも、季節を運んできたことも、纏っていた不思議な雰囲気も説明がつく。
彼は私のもとを離れて、また別の誰かに、愛を届けに行ったんだ。
それならば、また彼が戻ってこられるように、あの庭を綺麗にしておかなくちゃ。
気分が晴れ渡っていく。
すると、荒んでいたのが嘘のように、庭園が豊かさを取り戻したのだ。
花は元気になり、抜けるような青空が広がっていく。
これからは、彼がいなくても笑顔で生きていこう。
私の持っている「輝きや希望、前へ進むための力」が、ここを美しく保ってくれるから。

 彼は風。いつかまた、ここに戻ってくることもあるだろう。
その時には、「おかえり」って言おう。
その日までに私ができることは、彼が好きだと言ってくれたこの庭を、これからも守り続けていくことだ。
さあ、今日も花に水をやろう。

あとがき

ストーリーを作るのは好きなので、初めて投稿してみました。

3月に花見をしたのですが、(私のアイコンはその写真です)その帰り道に思いついて燻っていたストーリーです。完全に自己満足です。
このように、不定期ですが色々と投稿していこうかなと思います。

それでは。