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転機

当時、私が勤務していた職場はとある団体を取りまとめている事務局本部。女性5人が同じフロアーで働いていました。

「口頭でのやりとりは、言った、言わないのトラブルが発生するので、今後、業務にかかわるすべてのやりとりは社内SNS(掲示板のようなシステム)で行い、すべての業務記録が残るようにしてください」

と、上司からお達しがあり、職場の女性たちは、業務中はほぼ言葉を発することなく、ひたすらパソコンに向かい業務連絡を打ち込むようになりました。

私には直接関係のない他者間の業務連絡もSNS上にあがり、私も既読するのですが、そのやりとりがエグイ。

上司が部下を追い詰めるような内容・・・これってもはやパワハラでしょ。見せしめのような内容に、読んでいるこちらも心拍数が上がり、張り詰めた空気の中、職場ではパソコンのキーボードをたたく音だけが響いているんです。


事務系の業務は、AIが取って代わる。

なんて言われていますが、実際は

「人間がAI化する」

私は自分が人間であることを忘れて、職場にいる時は「機械」のように仕事をしていました。

仕事は嫌ではありませんでした。

むしろ達成感もあり、やりがいのある仕事でした。

業務中の私語も殆どない環境だったので、仕事が捗り私にとっては居心地がよかったんです。

でも・・・

なんとなく釈然としない思いを抱えつつ、仕事に通う日々でした。


私は派遣社員として働いていたのですが、契約期間3年満期のタイミングで転機が訪れました。

「派遣の3年ルール」(※同じ派遣先企業の同じ組織(課・グループなど)で働くことができるのは3年までというルール)のタイミングで、派遣先から「直接雇用」の打診があったんです。

条件についても、こちらの希望を考慮した妥当な条件だったと思います。

でも・・・


「このままずっと、機械のように仕事をしていくのかな・・・。」


今まで誤魔化してきた自分の気持ちと、向き合う転機がきました。

結局、悩んだ挙句に私は直接雇用の話を断り、他部署へ移動して派遣社員として継続して働くことも断り、退職することに。

派遣先にも、派遣元にも恩がある。

辞める理由だって、それ相応の理由でないと失礼だと思い、私は嘘をついたんです。

「地方にある夫の実家に、家族で引っ越すことになりましたので辞めます」

全く、そんな予定はなかったんですが(^^;) ま、予定は未定。

「実家への引っ越しは無くなりました」ということにしてしまえばいい。

円満退社のために、思い付きでついた嘘。

それが・・・

「地方へ引越しする」(夫の実家のある地方ではなかったけど)

本当になるなんて。この時は想像もしていませんでした。


この3か月後に、私たち家族は移住先と出会い、地方移住を決意します。

私が仕事を辞める1か月前のことでした。

つづく