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シンガポールに来て気づいたこと。 出国前
仕事でシンガポールに行くんだ、3ヶ月くらい。
そう言うとまわりに大概すごいねえと言われたが、ひとりだけ「シンガポールかあ、暑いね、もっと涼しいところの方がいいんじゃない」と返された。
本当にそう思う。ただでさえしょっちゅう微熱を出す自分が、常夏の国に合うわけがない。それに英語もまともに話せない。
いやだいやだと考えないようにしていたら、あっという間に時が過ぎて、出国の日になった。早すぎる。でも人生って本当そんなもんだ。目を背けたくなるものほど目の前に出てきて主張してくる。
生来の怠け者、加えて病弱でビビりなわたしが、生まれ育った日本というお気楽な国を出て生活していけるのか。不安は計り知れないがとりあえず行くしかない。だって仕事なのだもの。
出国前日の夜、覚悟を決めたと思ったのだが、夜が明けてみると、やはりどうしても嫌だった。地元の駅まで送ってくれる母親の車の中でも泣き言をこぼす。「ほんとうにイヤだよお〜」「行かなきゃならないんだから仕方ないじゃないの‼︎」普通に叱られる26歳、本当にだめである。
空港行きの早朝のバスの中で母親がもたせてくれたおにぎりを食べた。朝3時に起きて握ってくれたであろうそれは、あたたかくて不恰好で大きくて、具がいっぱい入っていた。食べながら一気に泣けてきて、とまらない。世の子供たちよ、こんなに情けない大人がここにいます。
自分がこんなにも情けない生き物だとは知らなかった。
つづきます