見出し画像

ミニ小説 愛のコーダ(キリンジ)

今、離陸待ちの機内でこれを書いています。
機内は人が忙しなく入ってきて賑やかだけど、飛行機の窓にはずっと強く雨が叩きつけていて、こんなに空って暗かったっけと思うほど、外はダークな色をしています。
何故か今、吉祥寺の喫茶店で、ラムココアを大人の味だねと言って2人で飲んだことを思い出しています。あの時は楽しかった。
あと、北海道旅行ではしゃいで食べた回転寿司も、2人で作ったハンバーグも、不思議なほど美味しくて、今は幻のようです。
こんなひどい雨の日は、君はいつも髪の毛を気にしていましたね。僕がいくら綺麗な髪だと褒めても、雨の日は跳ねるからイヤと、子供の様にわがままな顔をしていました。
春まで、あと何回か雨が降るようだから、君はあの暖かい毛布にくるまって、ココアでも飲んで眠っていなさい。
でも寂しくなったら、また君は電話をしてくるんだろうね。分かっています。
ただ、何回も言った様に、僕は君には歳を取りすぎていると思う。君をもっと激しく愛してくれるあの若い人と、一緒に幸せになりなさい。
僕が言ってあげられるのはそれだけです。
では、離陸するようだから、筆を止めます。
元気で、どうかずっと笑顔で居てください。