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ルーツ

イタリアに滞在しているとき、こちらを見ながらヒソヒソと話している3人組のレディ達に気づいた。

そのうちの1人が私の側に来て、「みんなであなたが何人(ナニジン)か話していたんだけど、結局わからなくて」と言う・・・

「私は日本人ですよ!」と答えると目を見開いて、「えー!絶対に日本人ではないねってみんなで言っていたのに!でも、どこの国かは誰もわからなかったの。」とのこと・・・

それは顔つきなのか、体型なのか、服装なのか、典型的な日本人のイメージからは少々外れているのかもしれないが、外国でこう言われることはよくある。

私は音楽活動のほかに、カレー活動を行っている。

「ミカチェンコ・カレースキー」というロシア人のような名前で、主にスリランカカレーを作っている。

これは私が北海道出身であるため、音楽プロデューサーの小野澤篤さんが「ロシア人の血が入っているように見える」とのことから、私を「ミカチェンコ」と親しみを込めて呼んでくださるようになり、今はどこへ行っても誰に会っても「ミカチェンコ」もしくは「チェンコさん」と呼ばれることのほうが多くなった。

たしかに「ロシア人が入っていそう」と言われることも度々あるのだけれど、うちのご先祖様は福井県から渡ってきた日本人であり、札幌の狸小路でお菓子屋さんを営んでいたそうだ。

なのでアイヌ民族の血が入っているわけでもないのだけれど、以前からアイヌの文化に心惹かれて、東京に移住してからのほうが興味が増している。

アイヌの人々は、この世のあらゆるものに魂が宿っていると考えていた。

私が人や動物、モノなどすべてのものからメロディが聴こえるのは、魂が宿っているからだと信じている。

そこにとてつもなくシンパシーを感じるし、アイヌの工芸だったり模様だったり、ムックリという楽器の音も大好き。

オハウは北海道料理の三平汁に近いし、シトは大好きだったいももちと同じようだ。

アイヌネギ(行者にんにく)や鮭のルイベ、ハスカップなどアイヌの人々が食べていたとされる食材は、道産子のソウルフードである。

それから、ゴールデンカムイも面白かった!

そんなわけで、北海道の白老町にアイヌ文化の伝統を普及する「ウポポイ (民族共生象徴空間)」がコロナ禍にオープンしたときから、「行ってみたいなぁ」と思っていた。

一度行きたいと思うと、会う人会う人が不思議と「北海道に行ったらウポポイに行ってみたいんですよねえ」と言う(初対面の人でさえそう言うことが増えた)

なんかわからないけれど、私の周りではウポポイブームが起きているような気がしていた。

そんなとき、有難いことに、「白老町のウポポイで演奏してもらえませんか?」とNPO法人Heart&Earthの磯野さんからお誘いいただいたのだ。

最終的にはウポポイのステージではなく、ウポポイの目の前に広がるポロト湖の湖畔だったのだが、このポロト湖はとてつもなく癒されるパワースポットだった。

大雨の被害が続いていた北海道もこの日はカラっと晴れて、白老町の子ども達が私が作ったEarth Harmonyを合唱してくれた。

最後に、ポロト湖から聴こえるメロディを即興演奏した。

両親、祖父母、ご先祖様、、、目に見えるところまでのルーツは日本人だけれど、さかのぼっていくと色んな国の人や民族の人が生きて死んで、今の私がいるんだとポロト湖から教えられた気がした。

「いつかウポポイに行ってみたい」という願いは、がむしゃらに頑張ったから叶ったわけではなく、ただ自分を生きているだけで叶った。

そこには無理もなければ我慢もなかった。

夢を叶えるために嫌なことにも耐えようとか、辛くても好きなことを我慢して努力し続ければいつか道は開けると長年思い込んで、自分の気持ちに蓋をしてきたのだけれど、私だけではなく誰もそんなこと望んではいない。

ポロト湖に映る青い空、向こう側に見えるウポポイ、アイヌのチセ(家)を眺めながら、私のルーツであるご先祖様がみんなして「イイネ👍」してくれている気がした。

夢がすんなり叶うときは、きっとみんなが「イイネ👍」してくれているときなんだ。






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