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20周年コンサート

ニューヨークで最初のCD Lake Erieをリリースしてから、20年が経ちました。
初めての経験に舞い上がっていた頃、ニューヨークでは同時多発テロがあり、レコーディングの計画も一時中断になりました。
ショッキングな事件を目の当たりにして、「世界は変わったんだ!」と思いましたが、見ないようにしていただけで、世界には以前からたくさんの歪みがあったことに気づかされました。
憧れていたアメリカはテロの報復としてアフガニスタンで戦争。
私は世界のことを何もわかっていなかったんだ、と思いました。
そのころご縁をいただき、内戦中のスリランカで活動を始めました。
シンハラとタミルの民族紛争となんとなくニュースでは知っていましたが、日本で普通に生活をしていると知らないことだらけだったんだと思いました。

音楽で世界が平和になったらどんなに良いだろうと小さい頃から思っていましたが、現地の言葉で歌ったり、実際に支援活動をしてみたりと、それが誰かの命を救うことに直結していないとしても、何かをしていないと、誰かの役に立ったと感じられないと、自分には価値がないようにも思えました。

しかし、「人に何かを与えなければ」というのは、私のエゴであったと思います。
私は私として生きているだけで、この世界を作り出している一員であること、それを自覚しました。
だからこそ、「人に与える」前に、「自分に与える」ことに専念し、なんの大義名分がなくても、誰の許しを求めなくても、自分らしく生きていいと思うようになりました。

人の前で素になるということは、プロとして一番やってはいけないことであり、失礼なことであると教わってきました。
確かにお金をいただく以上は、その通りなのだと思うのですが、熟練した先輩方は、たくさんの準備やトレーニングを重ねたうえで、素の状態の生き様やエネルギーが必ずステージに表れ、それが観客に感動を与えているのだろうと思うんです。
時代と共にステージに生きた正直なその証が、アートなんだろうと思います。
まだその域には全然達していませんが、どんな時の私でも応援してくださった皆さまのおかげで、最近余分な肩の力が抜けてきて、これが自分らしさなんだろうなと、思うようになりました。

今この時間もすべてがアートだと思うと、この20年間のすべての瞬間や関わってくださった方々が愛おしく、どの曲も自分一人で作ったものではないと感じています。

これまでの多くは、足りないことや出来ないことを埋めたり改善したりする時間に回してきていたので、ここからがスタートなのかもしれません。
出来ないことは個性であり、足りないことなんて何もないということ。
出来なくてもやりたいことであれば挑戦して、やりたくないことであれば無理にやらないこと。
今この状態が完全な私であり、良いも悪いもないのだと思います。
万物は皆そうなのだと、聴こえるメロディがそう教えてくれました。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。
30周年も皆様と元気にお会い出来ますように。。。





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