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意外に高い「和食」の食バリア。ムスリム、ヴィーガンにもおいしい日本を届けたい

あまから手帖 連載「食からSDGs」2022年 5月号より(写真:伊藤信)バックナンバーはhttps://www.amakaratecho.jp/ でどうぞ。

世界遺産に登録された和食は、実は、世界の 1 / 4 人々にとってバリアがある。 理由は、日本でのイスラム教の戒律「ハラール」へ の 対応の遅れだ。 ムスリムが 安心できる和食作りに挑む、兵庫県三田のメーカーがある。

みりんも醤油もNGの「ハラール」の食バリアに、和食で挑む

「ハラール」とは、イスラム教の教えで“許されている”こと。逆に豚やアルコールを食することや嘘をつくなどの悪事は「ハラーム」と呼ばれ禁じられる。 どちらも生活全般に及ぶ戒律だが、食の「ハラール」はハラームでない、人体に害がないものを指す。ちなみに遺伝子組み換え食品はハラームである。

兵庫県三田市に本社のある日乃本 食産株式会社の見野裕重さんが、宗教食という課題に直面したのは、自社の ゴマ豆腐などを国際的な食品見本市に 出品した時だった。「海外の業者から 『ハラール対応できるか』という問合 せを多くいただいたんです」。

世界基準のハラール認証の条件は、 想像以上に厳格だ。
よく知られている NGは豚とアルコール。それらが食材の 二次、三次原料、肥料や飼料までに混 入していない証明が求められる。
使用する600種類を超える素材に関わる、 業者に理解と協力を求めるが、「イスラムと聞くと過激派、と怯える人まで いた 」(笑)そうで、書類作成にかかる労力 も膨大だった。これを乗り越え、見野 さんはアレルギーやヴィーガンにも対 応するバリアフリー和食を実現した。

長い和食の歴史で初のバリアフリー。金メダル級のレガシーだ

見野さんの念頭にあったのは、世界 から多くの人が訪日するオリンピック。 「2020年は、日本がハラール対応 の必要性に気づくチャンスだったんですが...」。
意気込みは少々挫かれてし まったが、ハラール和食は、食制限の あるアスリートもフェアにおもてなしした。そして、誰でも食べられる料理は、食ロス削減にもつながる。エコでユニバー サルな食への到達。
これは長い和食史 における、メダル級のレガシーだ。


日乃本食産株式会社
兵庫・三田に本社のある食品メーカー。松茸、丹波栗や黒豆の菓子、そして、料亭にも採用されている純国産ゴマ豆腐 な ど 、幅 広 い 業 務 用 惣 菜 を 展 開 。2 0 1 6 年 か ら ハ ラ ー ル 和食に取り組む。ハラール対応、7大アレルゲン対応、ヴィ ーガン対応などを兼ねたレトルトパックの和食は、バリアフ リーな災害食としても注目されている。
購入は
『三田見野屋』


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