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「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」は、文武両道ウーマンファイトがてんこ盛り

ワカンダ・フォーエバー
公開時、ニューヨークに住んでる友達が「この映画の話をしていない人がいない」と言ってたほどの超ヒット作『ブラックパンサー』の続編である。

アフリカのしょぼい農業国とは仮の姿、西欧社会より50年進んだ技術と万能の鉱物ヴィヴニウムを持つ最強国家・ワカンダが舞台。

コスチュームやセットデザインにさまざまなアフリカンアートが散りばめてあり、脚本にもアフリカンプライドがみなぎっておる。泣かせるところじゃないところで何度も涙目になり「五十路のタイツ映画(変身ヒーローもの)ヴァージン」を捨てる価値は十二分にあった。

ところがである。
ブラックパンサー役の王様を演じていたチャドウィック・ボーズマンが急逝するという、まさかの事態。
続編では代役を立てることなく、「抜けた穴をどうするよ‥‥」という現実の喪失感をそのまんま映画に導入。物語は「王様が急逝してしまって、悲しみに沈むワカンダ」から始まる。

遺された女王と妹、女戦士という女所帯で切り盛りを試みるも、半魚人帝国が襲来! 女王が殺され、復讐に燃える妹がブラックパンサーを襲名!と、かなり無理めの展開ではあった。

代役を立てない、と決めた時点で、この映画は「男なしでヒーローアクションが成立するか?」という挑戦でもあったとおもう。物足りないという人も多いとは思うが、「意外にイケるやん」が、私の率直な感想。

女性キャラたちの、力一辺倒じゃない戦い方だ。
女王は、国際会議の場で圧倒的な美しさと威厳でアメリカとフランス(名指し!)の侵略に抗議し、兄を失った失意から研究室にこもってた王女は、実は遺伝子解析でブラックパンサーを再現していた。ヴィヴニウム探査機を発明した天才的な科学者は、黒人の女子大生。無敵の女戦士オコエの槍さばきも冴に冴えている。(「私が槍を使うのは、優雅だから」というシビれる美意識)

腕力を知性でカバーする、文武両道のウーマンアクションはサラダもたっぷりの肉料理みたいで、胃にもたれない。
某女性コラムニストさんが、女性とイタした体験を「天ぷらをツユでなく塩でいただくようなあっさりした軽さ」と書いていたが、それ思い出した。
(ナニ言うてんねん)
これも蛇足だが、前作でオコエがレズビアンだという設定があったようなのだが、その要素がカットされたとのこと。今作ではちょっとした「匂わせ」シーンもあって、セクシーさも増量であった。

アフリカを舞台にしたウーマンファイトを描いた、もう一本の映画「ウーマンキング」がアメリカで公開されたが、こちらは18世紀、ベニンのダホメ王国に実在した女戦士の物語。
予告編見ただけで、超シビれるー。日本公開は「未定」のまんま。
ワタシは見たいです。タノんます。

この伝説の「ウーマンキング」、なんと、ベニンに現存しているそうです。
女性「キング」(政治的な力はない)は、元アクティビストで、今は女子教育に力を注いでおられるそうだ。

1897年のダホメ王国の女戦士たち Photo: Chris Hellier / Corbis / Getty Images

あえて言う。アフリカ以下の日本のジェンダーギャップ。エンタメ平等指数も世界最下位か?


ところでねえ、『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』をみたのは、ドルビー3Dのでっかい劇場だったが、観客は私と数人だった。
ブラックヒロインのカッコ良さが日本の観客に受け入れられるのには、まだもうちょっと時間がかかるのか、いや、日本にはそれはずっと来ないのか、ちょっとしみじみもした。

毎年、日本が最下位を這いずり回る、ジェンダーギャップの世界ランキングでは、アフリカのルワンダ、ナミビアがベストテン入りしている。
これは内戦の影響で男性が少なくなり、女性の政治家や従業員割合が多くなった事情はあるのだが、「政治的エンパワーメント」のスコアが高いということは、情報やエンタメにも当然、もちろん反映されているだろう。

日本のエンタメにおけるジェンダーギャップ、人種ギャップも、世界最下位レベルかもな‥‥。




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