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「ものもらい」

徐(しず)かに
父は娘に
「ものもらいだ」
と眼窩を覗かせ

それから

幼い坊やと
おばあちゃんの
軒屋に帰っていく

ものもらい
 というと

おばあちゃんは
おにぎり ひとつ握り
窓の外に出かける

はい

幼い坊やは
家の中から
おにぎりを受け取る

ものもらい
 
「こうして治したものだ」
「お父さん、やろうか」
娘は父の記憶にのりかかる

「ばか。物理的に難しいだろ」
父はちゃきちゃき
現代の函にのりうつり
娘は僅かな膚の記録に
身をこごめる

読書投稿作品「入選」(掲載作品)中村不二夫選
「詩と思想」2014年9月号

※こちらの作品は姫織アリヤの筆名で書いていたものです。

※ぷち個人詩評
戦後のとか、家族をテーマにした作品をこの頃は書いていた気がします。歴史あるもの、古いもの、家族。
木星蟹座でネイタルの4ハウス。まさに、蟹座のキーワードで作品を生み出してます。

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