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ヴェルディ《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》について

長年オペラを愛好し、いろいろな舞台を観てきましたが、ヴェルディ《ラ・トラヴィアータ》は、演出がなかなか難しいオペラなのでは、という気がしています。


ヴェルディの二人目の妻、ジュゼッピーナ・ストレッポーニの肖像画。1845年頃のもの(wikipediaより)。ストレッポーニはヴェルディ《ナブッコ》アビガイッレ役を初演で歌ったのでその楽譜を持ち、髪には椿の花が見えます。


インターネット・ラジオのOTTAVAさんでスタートした配信講座 OTTAVA Accademia。10月6日(木)の私の講座「オペラでイタリア語!」第3回目は、《ラ・トラヴィアータ》を取り上げました。


OTTAVAの斎藤茂さんと、オペラにまつわる楽しい話をしています。(今回はなぜか、新国立劇場《ジュリオ・チェーザレ》の話題が長かった。笑)



そもそもこの作品はアレクサンドル・デュマ・フィス原作の小説と戯曲は「La Dame aux Camélias」であり、ですから邦題も「椿姫」でいいと思うのですが、ヴェルディのオペラのタイトルは《ラ・トラヴィアータ La Traviata》、直訳すれば「道を踏み外した女」。踏み外したというのは道徳の道のことなので、あまり日常的なイタリア語ではありません。カタカナでラ・トラヴィアータと書くと、オペラに詳しくない方には意味が分かりにくいですし、かといって日本語訳だと「道を踏み外した女」…。私が日本でオペラを上演する団体の責任者だったらやっぱり「椿姫」という訳を採用するでしょう(汗)。

でも、このタイトルひとつとっても、ヴェルディのこだわりが分かります。ヴェネツィアのフェニーチェ歌劇場に新作オペラを書こうとしていた時に、デュマ・フィスの「椿姫」を取り上げようと決めたヴェルディが最初に考えたオペラの題名は「愛と死 Amore e Morte」でした。やっぱり作品名には何を表現したかったのかが凝縮されているので、それを知るのは大事なことです。

OTTAVA Accademiaでは《ラ・トラヴィアータ》にまつわる色々なこと、そしてこのオペラの中で使われるキーワード的なイタリア語についていろいろとお話ししています。

オンデマンドで期限なしでご視聴いただけますので、ご興味ある方は是非どうぞ!講座は一回分が2,200円(税込)、3回分のおまとめチケットは5,500円(税込)です。

事前にOTTAVA Plusに無料登録が必要です。OTTAVA Accademia の〈オペラでイタリア語!〉第3回「《ラ・トラヴィアータ》で愛の口説きを覚える」はこちらからどうぞ!


キングインターナショナルさんのご協力により、講座の中でおすすめ動画を視聴しています。今回はかなりユニークな《椿姫》でした!


今回ご紹介した動画は、ドイツのバーデン=バーデンで2015年に上演された《椿姫》です。このプロダクションの特徴はオペラ歌手のローランド・ヴィラゾンが演出を手がけていること!ヴィラゾンといえば、2005年にザルツブルク音楽祭で上演されたウィリー・デッカー演出、カルロ・リッツィ指揮の《椿姫》でアンナ・ネトレプコ主演の、大ヒットしたプロダクションでアルフレードを歌った名テナーです。

ヴィラゾンが演出した《椿姫》ですが、サーカスが舞台になっています。ヴィオレッタ役にだけ、本職のサーカスのブランコ乗りの女性がヴィオレッタの分身として舞台に登場します。第一幕は、パリの裏社交界に出入りする人々がピエロや曲芸師、そして猛獣使いなどの様々な人物として描かれます。第二幕後半のフローラの館では、なにやら怪しげな儀式(?)がおこなわれていたりもします。実際のサーカスを舞台に物語が進むわけではなく、象徴的な使われ方をしているのです。

しかしさすがヴィラゾン、《ラ・トラヴィアータ》の大事なポイントをはずさない演出が素晴らしいです。ヴェルディが最初に考えていたタイトル「愛と死」のモチーフもしっかり使われています。そして、主人公のヴィオレッタを歌うオルガ・ペレチャトコも入魂の歌と演技でとても良いのです。


詳しくはキングインターナショナルさんのサイトへどうぞ。こちらです。



好評をいただいているOTTAVA Accademia「オペラでイタリア語!」、今後の講座は以下のとおりです。ご興味がある方は是非どうぞ!

OTTAVA Accademiaー井内美香「オペラでイタリア語!」#4 2022年10月27日(木)19時〜
プッチーニ《トスカ》で恋人のヤキモチをかわす

オペラの決め台詞を覚えながらイタリア語に親しむ講座です。第四回目はプッチーニの《トスカ》を取り上げます。トスカは1800年のローマを舞台にした歴史物語。ローマの実在する教会やサンタンジェロ城なども登場するご当地オペラです。主人公の歌姫トスカは画家カヴァラドッシの恋人ですが、彼女の愛情表現はイタリア女性に典型的なパッションに満ちたもの。トスカの焼き餅と、カヴァラドッシの彼女への優しさに満ちた返事は、きっと現代の私たちにも参考になると思います!

詳しくはこちらからどうぞ!

OTTAVA Accademiaー井内美香「オペラでイタリア語!」#5 2022年11月17日(木)19時〜
ヴェルディ《ファルスタッフ》で楽しい老後を目指す!

第五回目はヴェルディの《ファルスタッフ》が教材となります。生涯現役が叫ばれる現代ですが、若いころ輝いていた人ほど、寄る年波を感じるとがっくり来ることがあるのではないでしょうか?しかし心配はいりません。シェイクスピアの『ウィンザーの陽気な女房たち』と『ヘンリー四世』を原作にした、ヴェルディのオペラ《ファルスタッフ》の主人公サー・ジョン・ファルスタッフを見れば、人生後半をどう生きるかの(反面教師的な!?)学びがたくさんあります。さあ、ファルスタッフのような楽しい老後を目指しましょう!
詳しくはこちらからどうぞ!

OTTAVA Accademiaー井内美香「オペラでイタリア語!」#6 2022年12月15日(木)19時〜
モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》で数字に強くなり、記録を伸ばす方法を学ぶ

第六回目はモーツァルト《ドン・ジョヴァンニ 》を取り上げます。スペインの貴族ドン・ジョヴァンニの生きがいは女性を誘惑すること。従者レポレッロは、彼の主人ドン・ジョヴァンニが征服した女性の名前を逐一、手帳に記録しています。レポレッロの歌う愉快なアリア「カタログの歌」では、ドン・ジョヴァンニが陥落させた女性の数はイタリアでは640人、ドイツでは231人、フランスでは100人、トルコでは91人、そしてスペインでは1003人と紹介されています!さあ、レポレッロと一緒にイタリア語の数字に強くなりましょう。
詳しくはこちらからどうぞ!





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