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オペラの巨匠ヴェルディが長年住んだ屋敷の、危機を救うクラウドファンディングに寄付してみた!


ヴェルディが愛した屋敷、ヴィラ・ヴェルディ

イタリア・オペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディは、北イタリアのピアチェンツァ近郊のSant'Agataにあるもと農園主の家を1848年に購入し、その後そこに50年以上住み続けました。

このヴィラは今日ではヴィラ・ヴェルディVilla Verdi(通称ではVilla Sant'Agataとも)と呼ばれています。広大な庭園に囲まれたヴィラには今もヴェルディの包括相続人であるカッラーラ=ヴェルディ一家が住んでいます。子供がいなかったヴェルディが自分の従兄弟の娘を養子にした子孫の方々です。

以前わたしが音楽之友社のサイトONTOMOに書いた、ヴェルディがいかに愛犬家だったかという記事にも、ヴィラ・ヴェルディを紹介しています。

ヴィラ・ヴェルディはこれまでオペラ・ファンを中心にした国際的な観光客が訪れていましたが、近年建物の痛みが激しく、またイタリアでは新型コロナウイルスの流行による数ヶ月のロックダウンがあったため、深刻な経済危機に陥っているそうです。

そのためヴィラ・ヴェルディはクラウドファンディングに挑戦することになりました。イタリアを中心に告知しているようですが、上記の記事にヴェルディの愛犬ルルちゃん関係の写真をお借りした関係で、ヴィラ・ヴェルディの担当の方から「日本でもこの試みを紹介してくれませんか?」という依頼が来ました。そこでこの記事を書いています。

寄付のページはこちらです。イタリアの文化・芸術専門のクラウドファンディングのプラットホーム《Innamorati della Cultura(文化に恋して)》における、ヴィラ・ヴェルディの紹介ページです。

少し長くなりますが、このページに記載されているヴィラ・ヴェルディの紹介とクラウドファンディングの目的についてを以下に訳しました。なお、わたしはこのクラウドファンディングに関わりはなく、その実行に関して責任は持てませんので、よろしくご理解お願いします。


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ボルディーニによるヴェルディの肖像画


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ヴィラ・ヴェルディへの寄付の仕方と、サポートした方へのリターンについて

まずは寄付の仕方とリターンの説明から。クラウドファンディングのページを開くと、右側にリターンが並んでいます。私も少額ですが寄付してみました。日本のクラウドファンディングのサイトと同じようにクレジット・カードで支払えます。一番上には金額が書いていない囲みがあり、そこを選択すると1ユーロから寄付できるようになっています。この囲み部分はリターンなしの寄付用です。リターンありは、そのすぐ下に書かれている10ユーロ(今の為替レートですと1ユーロ=125円なので約1,250円)、もしくはそれ以上の金額から選択します。値段とリターンの説明が書かれた囲み部分をクリックすると支払いのページに飛ぶようになっています。

10ユーロ(Aidaコース)あなたのお名前はヴィラ・ヴェルディを囲む愛情の証言として〈金の名簿〉に記載され、ヴィラの見学者が誰でも見ることができる場所に展示されます。

25ユーロ(Otelloコース)あなたがヴィラ・ヴェルディを今後最初に訪れた時に、ヴィラ・ヴェルディの特製小物が贈られます。

67ユーロ(Trovatoreコース)ヴィラ・ヴェルディの入場料が一回分無料になり、加えて特製小物が贈られます。

98ユーロ(Rigolettoコース)ヴィラ・ヴェルディの入場料が一回分無料になり、加えてヴィラ・ヴェルディの本が贈られます。

270ユーロ(Traviataコース)ヴィラ・ヴェルディの入場料が一回分無料になり、訪問時に通常は見学者に公開されていない部屋の数々をご案内します。また、ヴェルディの相続人のサイン入りのヴィラ・ヴェルディの本が贈られます。

460ユーロ(Falstaffコース)ヴィラ・ヴェルディの入場料が一回分無料になり、その時に通常は見学者に公開されていない部屋の数々をご案内します。ご案内はヴェルディの相続人によるもので、それに加えて、ヴィラの庭でアペリティフ(ドリンク)をご馳走します。

990ユーロ(Nabuccoコース)ヴィラ・ヴェルディの入場料が一回分無料になり、その時に通常は見学者に公開されていない部屋の数々をご案内します。ご案内はヴェルディの相続人によるもので、それに加えて彼が、夕食にお二人までご招待します。ヴィラの庭の見学もあります。

4.800ユーロ(Trionfoコース)この寄付をおこなった方は、ヴィラ・ヴェルディ友の会の〈金の名簿〉のメンバーとなる権利が与えられます。ヴィラ・ヴェルディを6ヶ月間無料で見学でき、庭と、ヴィラの中の秘密の部屋の数々を案内付きで見学することができます。ご案内に加えて、ヴェルディの相続人との夕食を博物館の広間でお楽しみいただけます。

9.900ユーロ(Il Trovatoreコース)この寄付をおこなった方は、ヴィラ・ヴェルディの友の会の〈金の名簿〉のメンバーとなる権利が与えられます。ヴィラ・ヴェルディを6ヶ月間無料で見学でき、庭と、ヴィラの中の秘密の部屋の数々を案内付きで見学することができます。ご案内に加えて、ヴェルディの相続人との夕食を博物館の広間で、音楽の生演奏付きでお楽しみいただけます。

寄付する時に必要なイタリア語の訳

DONA→寄付する
PROSEGUI→次へ進む
Nome→名前(ファーストネーム)
Cognome→名字(ファミリーネーム)
Indirizzo email→メールアドレス
Password→パスワード
Conferma password→パスワードの確認
Dona anonimamente→匿名で寄付
Lascia un commento→コメントを残したい方はどうぞ
Numero carta→クレジットカード・ナンバー
CVC→カードの裏面上部に書いてある番号
Scadenza(MM/YYYY)→カードの期限(月/年)
CAP→郵便番号
COMPLETA CHECKOUT→チェックアウトへどうぞ

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そして以下が本文の訳です。


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上の写真は2001年に修復工事が終わったばかりの美しいヴィラ・ヴェルディの写真です。マエストロ・ヴェルディの没後100年の記念年でした。ところが、ヴィラは現在この下の写真の状態になっています。


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博物館となっている偉大なるイタリアの巨匠の屋敷

ジュゼッペ・ヴェルディを良く知るためには、彼が長年にわたって住み、イタリアやヨーロッパ各地への旅行からいつも喜んで帰ってきたこのヴィラを訪れることが不可欠です。

ヴィラ・ヴェルディはエミリア=ロマーニャ州ピアチェンツァ県のVillanova sull'Ardaの集落の一つ、Sant'Agataにあります。

ヴェルディはこのヴィラを1848年に購入し、1851年からそこに住みながら、徐々に自分の望む姿に変えていきました。

館の増築にあたり、ヴェルディは自らスケッチを描き、建築素材の選択にも細かい指示を出し、自分自身の望む通りの姿に作り上げたものが、今日私たちが目にしているヴィラなのです。

イタリアのもっとも名高い作曲家はこの場所で生き、音楽を書きました。気難しく慎み深い性格を持った彼が、その天才の翼を解き放つためには、この土地で人々から離れた生活を送ることが必要だったのです。

もともとは田舎の農場主の家をヴェルディが購入し、数年で当時の美的センスが完全に実現された住居となり、今日においても注意深い訪問者はそれを理解し賞賛してくれます。

ヴィラ・ヴェルディは今日、マエストロの相続人であるカッラーラ=ヴェルディ一家によって偉大なる作曲家の時代の姿を保っており、ヴェルディの人間性とその天才の不朽の精神を理解する最高のヒントを与えてくれます。


天井のヒビ

博物館

ヴィラには今でもこの包括相続人の一家が、ジュゼッペ・ヴェルディの遺志を完璧に尊重し、全てを昔のままの姿に保ちながら住んでいます。

屋敷の一部分は博物館となっています。ジュゼッペ・ヴェルディとジュゼッピーナ・ストレッポーニの私室だった部屋の数々を訪れることができるのです。象嵌細工の家具、《イル・トロヴァトーレ》や《ラ・トラヴィアータ(椿姫)》を含む数多くのオペラの作曲に使われたウィーンのフリッツ製のフォルテピアノ、1871年以降使われたエラール製のピアノ、ヴィンチェンツォ・ジェーミト作のテラコッタの胸像、ミラノでマンゾーニに捧げられた《レクイエム》を指揮するためだけに使われた白手袋、ボルディーニが描いた有名なヴェルディの肖像画に描かれているシルクハットとストール、ヴェルディが亡くなったときの寝衣とデスマスク、そしてそのほかの数多くの品々。

館の一部を占める今も正式に認められている小さな教会、氷室、当時の樽が保存されているワイン貯蔵室、何台もの馬車の車庫、小さな湖まである6ヘクタールもの素晴らしいイギリス庭園などを見学するのはとても感動的なことです。


壁のヒビcrepe2-576x1024


なぜクラウドファンディングなのか?

この宝石のようなヴィラを管理しているのはマエストロ・ヴェルディの相続人の一家ですが、これまで個人的な資金のみで、いにしえの輝きを保つことに成功してきました。しかし、国からの補助金が完全に欠如していることに加え、最近起こった新型コロナウイルス(Covid-19)のためにヴィラ・ヴェルディは完全に閉鎖し見学者を受け入れることができなくなってしまいました(訳注:現在は見学は再開しています)。それが永続する閉鎖になってしまわないといいのですが…

ヴィラ・ヴェルディは修復のための緊急の助けも必要としており、突然見学者が来なくなってしまったことにより、世界で最も有名で愛されている、現在でももっとも上演が多いイタリアの作曲家についての全てを理解できる、唯一の場所が完全に閉鎖を余儀なくされる危険に直面しています。

修復工事

ヴィラの修復工事は、内部修復においても外壁修復においてもそれぞれいくつかの措置を必要としています。

修復に必要な全費用はかなり高額にのぼり、そのためわたしたちは工事を少しずつ進めていくことを決意しました。我々の美しい建物を公開するために、至急作業が必要なところを先に手当てし、そうする間に必要な費用を集めることを願いつつ。

博物館の開館 - ロックダウンの後にすべての人がそうであるように、博物館を開けておくために、わたしたちは資金が必要です。固定費と、我々のために働いている5人の従業員への給与のためです。

赤の間 - このサロンでマエストロは数少ない選ばれた客人たちを迎えました。例をあげれば、台本作家のフランチェスコ・マリア・ピアーヴェやアッリーゴ・ボーイト、著名な画家であるパリッツィ兄弟やボルディーニ、リコルディ出版社の人々、もしくは貴族のアンドレアと妻のクラレッタ・マッフェイ。

ここでは音楽に加えて、多くの話題が議論されました。当時はイタリア国家統一の時代で、道では人々が「V.E.R.D.I 万歳(イタリア国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ万歳)」と叫んでいたのです。

天井からの漏水は、その上にあるテラスが原因で、湿気がこの重要な部屋にダメージを与えています。修復には10.000ユーロ(約125万円)かかると見積もられています。

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馬車の天井 - 何台かある馬車の天井が落ちそうになっており、本格的な修繕が必要です。修繕には55.000ユーロ(約690万円)かかると見積もられています。

建物の外壁 - 外壁の一部に塗装が必要です。修理費用の見積もりは20.000ユーロ(約250万円)です。

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WEBサイト 

強制的な閉鎖が行われていた期間に我々はこの博物館の部屋の数々を、パソコンを持っていて、実際にこの場を訪れる時間がない人が誰でも訪れることができるようにしたい、と考えました。

豊かなコンテンツを持った新しいウェブサイト、それはヴァーチャル・リアリティによって、希望する愛好家が誰でも、ジュゼッペ・ヴェルディのインスピレーションを引き出した各部屋を訪れることができるようなサイトです。


わたしたちがどのように仕事を進めたいか - わたしたちは資金集めの成果に応じて、ステップごとに進んでいきたいと考えています。至急の措置が必要な案件から、そのほかの案件へと一つずつ達成し、わたしたちを支えたいと思ってくれる皆さんを失望させないように進んでいきたいです。作業が進み、目的が達成されるのに従って、わたしたちのソーシャル・メディアに成果を公表していきます。でもまず先に、皆さんのサポートにたいして、わたしたちの心からのGRAZIE(ありがとう)を言わせてください。

(元のページではここに英語の説明が入ります)


よくある質問(FAQ)

Q:わたしたちは誰か? A:わたしたちはジュゼッペ・ヴェルディの相続人で、ヴィラ・ヴェルディに住み、マエストロの意志を実行し続けています。

Q:集まった資金はどう使われますか? A:集まった資金は博物館を開館し続けるために使われます。 新型コロナのための閉鎖期間により固定費がかさんでおり、それに加えて、建物に必要な修復に使われます。

Q:修復が終わった時にその部分を見学できますか?  A:皆様の寄付によって修復されたすべての部分をご覧いただけます。このキャンペーンの成り行きを見守っていただき、わたしたちのアップデートを参照してください。リターンの内容を引き取りにヴィラに来ていただいた時にも修復作業が行われた場所をご案内します。

Q:いつリターンを引き取れるのですか? A:クラウドファンディングのキャンペーンは3ヶ月おこなわれます。終了後にはすべての寄付した方の名簿が作成されます。リターンを受け取りに来る日付に関してはメールでご予約ください。

Q:どのようにコンタクトすればいいのですか?  A:わたしたちの電話は(イタリアの国番号39)0523830000です。もしくは info@villaverdi.org にメールを送ってください。

Q:(種類の違う)2口以上の寄付は可能ですか? A:寄付は何口でも可能です。もし有志の方が集まりひとつのクレジットカード番号で寄付をしてくださる時には、正しくリターンを差し上げるためにも、念のためメールで代表者のお名前と連絡先をお知らせください。

Q:無記名で寄付はできますか? A:もちろんできます。氏名を掲載したくない場合はnicknameをお使いください。わたしたちだけが寛大なサポーターのお名前を知ることになります!


ヴィラ・ヴェルディVilla VerdiのHPおよびSNS

http://www.villaverdi.org/
https://www.facebook.com/villagiuseppeverdi/
https://twitter.com/VILLAVERDImuseo 
https://www.instagram.com/villagiuseppeverdi/


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以上、ご紹介でした❗️オペラの歴史に残る名作の数々を残した作曲家ジュゼッペ・ヴェルディが50年以上暮らしたヴィラのクラウドファンディング。この記事を書いている時点で、残り75日と表示されているので期限は10月15日のようです。ご興味ある方はどうぞヴィラ・ヴェルディをサポートしてみてください!


おまけ

以下はわたしが2016年3月に取材で行った時のヴィラ・ヴェルディの写真です。写真が下手ですみません。お天気もイマイチでした…。

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ヴェルディの伴侶ジュゼッピーナの寝室と彼女の胸像

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ヴェルディのベッドの脇にあった書棚より。シラー全集、シェイクスピア全集、ダンテ『神曲』、ベートーヴェンに関する本(もしくは楽譜?)他。(本棚はこれ以外にもありました)





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