沙羅双樹

『囀る鳥は羽ばたかない』感想文など。

沙羅双樹

『囀る鳥は羽ばたかない』感想文など。

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56話(一部55話)感想

※あくまで感想のため、原作者の意図・意向は汲んでおりません。 ※例により推しの欲目です。 ──化かし合い、探り合い 奪った煙草を咥え、火を灯す。 『甘くて苦いあなたの味』 詩人めいた感想は、今の百目鬼に映る矢代像だろうか。懐古とも皮肉ともつかないが、辛うじて仄かな恋心を匂わす。 “甘くて少し──” あの頃の初な憧れとも違う。焦がれて止まない、やるせない執心だ。時折赤らむ頬も綻ぶ唇も、はにかみではなく寂寥、或いは脇目も振らず闇に堕ち、挙げ句『立派な紋々入れたから極道

    • 54話感想

      ※自分の記録用。戯れ言が含まれるので、肌に合わない方は閲覧ご遠慮願います。 ***** 同時進行する3つの場面。今回はそれぞれの心情より、釈然としない謎だけが残った。 ──クラブママと黒服 盗難被害の連鎖が止まらない。神谷の私刑を苦々しく見つめるクラブママ。どこか後ろ暗い表情は凄惨な光景を直視出来ないからか、はたまた騒動に一枚噛んでいるからか。黒服は恐らく、事情も知らされない手先だろう。ママが堪らず神谷を制したのも、庇ったというより呵責に苛まれたようにも見える。まだま

      • 53話扉絵

        初見は墓場のようなおどろおどろしさと、このまま刺し違えてもおかしくない戦慄を感じた。 それはさておき、矢代は屈して跪いているかと思いきや、百目鬼の手に導かれて立ち上がろうとしてるんじゃなかろうか? 闇から光へ引き上げる。その前触れだと良いが……井波のところから戻った百目鬼が、返り血など浴びていませんように……

        • 53話感想

          ──意地vs屈折 幾らか膠着は解けてきたかに見える。 『今はただの客人です』 秘めた熱情と裏腹に、乾いた虚言を吐く。連は今のところ、 “古巣の元上司と元部下” 以上の認識はなさそうだが、綱川の締めつけが次第に強まっているのは薄々感じる。 『よく言うな』 百目鬼は初めて自嘲を滲ませた。たった一言でも、鬱積を知れたのは大きい。併せて今回は、矢代が眠る間の顛末も明らかにされている。 伏した寝姿は、一見すると嫋やかだ。枕を当てがい、腰から下はきちんと布団が掛かる。この随所

        56話(一部55話)感想

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        • 囀る感想文
          26本
        • 囀る呟き
          16本
        • その他所感
          3本

        記事

          感想は論文ではない

          さも高尚で綿密な考察を展開しているかに見えるが、元をただせば他人様の感想ネタに便乗しているだけのこと。それに対し異論・反論ならともかく、『否定』までするという居丈高 感想とはどちらかがどちらかを論破するものではない。そのつもりはながなくとも、文面からそれが漂えばこちらも徹底的に避ける 例え物語をどれほど細かに『分析』したところで明確な答えが得られる訳ではない。そう感じた根拠があっても、斜に構えた相手に教える義務はない。物語と同じく感想にも『余白』はあっていい筈であり、それ

          感想は論文ではない

          52話感想

          果たしてどう言い表すべきか。目眩く……とは程遠い、本能に任せたあの行為を。 『据え膳食えりゃそれでいい』 『穴に入れて出すだけ』 ──23話より 皮肉にも矢代の台詞そのものだ。情交でも情事でもなく、衝動だけに流された不本意な姦通。思いの丈を吐き出すでもなく、度々重ねる唇すら核心を塞ぐかのようだ。甘やかさは欠片もなく、もちろん幸福の余韻も曳かない。殺伐とした性交にむしろ後味の悪さだけが募り、苛立たしさなり不快感が先に立つ。 どこかに見落としはないか。誤解はないか。そう思い

          51話感想

          ──抑圧 片や鬱積を、片や戦慄を押し込め、着いた先は百目鬼の塒だった。 『昔と同じで何もねぇな』 折に触れ懐古を口にする。たった三月の記憶は、今も鮮烈に刻まれているのだ。過去に囚われ縋りたがるのは、百目鬼よりむしろ矢代の方かも知れない。 『寝に帰るだけですから』 対する百目鬼は、不気味なほど冷ややかだ。台詞こそ昔のままだが、その視線は切るように鋭い。あの秘めやかな交わりも、過去の自分も、今となっては口惜しい汚点でしかないのか。 生活臭のない部屋からは、諦めに似た気

          51話感想

          実をいうと、囀る8巻にはそれほど感情移入出来ない。百目鬼の心情が全く見えないのと、矢代の薄幸ばかりが強調されている気がするのがその理由

          実をいうと、囀る8巻にはそれほど感情移入出来ない。百目鬼の心情が全く見えないのと、矢代の薄幸ばかりが強調されている気がするのがその理由

          49・50話感想

          【追記あり】 推しの欲目です。ほぼ百目鬼視点・百目鬼擁護のため、閲覧は自己責任でお願いします。なお、苦情は受け付けません。 ――――― つくづく不器用な男だ。百目鬼が戻るまで塩らしく待っていたかと思えば、部屋に着くと一転して身構える。 かねてより唱えていたのだが、百目鬼と差し向かいの時、矢代はほぼタバコを口にしない。それだけ研ぎ澄ませているか、はたまた極度の緊張からか。ともあれ、刺々しい物言いにも心なしか怯えが見られる。ほんのひととき、和んだ場面を除いては── 百目鬼

          49・50話感想

          無題?

          ○話のその後、描かれなかった部分の穴埋め……と称した創作の類いを、私は決して読まない。次回を楽しみに待つ身には妨げにしかならない上、著作者への礼を欠くと思うからだ。 もちろん想像は自由だ。が、本筋に触れるもの、今後描かれるであろうものを、敢えて二次創作として発表するのは無粋でしかない。

          無題

          キャラの誕生日なんぞ、それぞれの思いで個々に祝えば良いのでは?ここ最近、イニシアチブを取りたがる同担者が雨後の筍のように現れて、争奪戦を繰り広げているかのような印象。 随分殺伐としたバースデーになってしまいましたな。百目鬼の苦笑が浮かぶようだ。そして相変わらず、当人の幸せより矢代の幸せを託すのか

          平田の業

          男・おとこ・オトコ社会の中で、唯一の妻帯者であり、人の親である綱川はある意味稀有な存在だ。(※三角の細君は本編に登場しないため除外) 亡き平田ですら愛人止まりだった。尤も彼にとっては、女性も自身の甲斐性を誇示するため、箔をつけるためのお飾りに過ぎず、これほど “家族” が似合わぬ男もいない。よって、かの女性も愛人というより情婦に近い扱いだったのではないか。 が、その “お飾り” さえ酒巻なる末端組員に寝とられた。これも今際の際に残した悲痛な叫びに繋がるのだろうか。(『俺は

          平田の業

          48話感想

          ──俺は忘れないので 僅かな綻びが覗く。肩に背負うのは侘しさか、それとも遣る方ない孤独か。 “覚えてんのは、されたことと言われたことばっかだ” 矢代の独白も、或いは真理かも知れない。“鼠壁を忘る 壁鼠を忘れず” 、惨い仕打ちは得てして受けた側に深い傷を遺すものだ。それが恨みや敵意に転じないのは、彼らが一途な純心を失っていない証だろう。 再び訪れた綱川邸で、連は尚も矢代の関与に難色を示す。何故それほどまで危機感を持つのか、矢代の存在がどう不都合なのか、私にはまだ漠然とし

          48話感想

          無題

          鬱憤を書きつけただけの放言です。一部過激な主張、表現を含みますので、閲覧は自己責任でお願いします。 ※苦情は一切受け付けません。気分を害する恐れのある方は、ここでお引き取り願います。 ──矢代を幸せにしてあげて つくづくメディアというのは度し難い。いわゆる “オイシイ” 部分だけを食い荒らし、陳腐な提唱で読者を煽る。マーケティングを謳いつつ視野は狭窄、したり顔で垂れ流すのは浮わついた偏向記事ばかりだ。 随分と居丈高ではないか。身勝手な理想を押しつけ、果たせなければ断罪

          絶望と苦渋

          『優しそうな普通のセックス』を知ってしまったからこその “レイプ” 純心を知ってしまったからこそ、穢れた自分を思い知る。果てはそれが厭世に…… 片や『優しそうな普通のセックス』では繋ぎ止められないと悟った。ゆえに、敢えてそうではない手段を取らざるを得なかった。 ただの掛け違い、されど掛け違い。

          絶望と苦渋

          47話感想

          ──丸腰の機微 真っ先に感じたのは、矢代の強烈なコンプレックスだ。これまで内包してきた、或いは煙に巻いてきたトラウマが一気に噴き出した感がある。それでもなお自らを穢し自傷を重ねるのは、最後の悪足掻きか、それとも捨て鉢の成れの果てか。 機能不全は、数話前から薄々予測されていた。現実になってみると、これまで見逃していた幾つかの伏線に気づく。 『さすがに体はない』 『──三角さん、まだ勃ちます?』 “やはりやれなかったか……” (以上36話より) 身体を使いたくても使

          47話感想